「やりたいことをやろうと前向きに行動すれば、現状は変わる」――時短勤務の女性が生み出した新たな活躍の場

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<<画像付きでこの記事を読む 家庭と仕事を両立していくために、時短勤務を選択する女性は少なくないだろう。だが、「マミートラック」という言葉もあるように、時短で働くと、第一線の仕事ではなくサポート業務を任されるケースも少なくない。そんな中、ワーキングマザーの活躍の場を広げようとする動きが生まれている。その一つが、カルビー新宇都宮工場『てづくりチーム』の事例だ。 ワーキングマザー5人が所属する『てづくりチーム』は、数種類のスナック菓子を詰め合わせたアソートづくりなど、機械ではできない商品製作を担う組織だ。そんな『てづくりチーム』をまとめるのが、野沢一江さん。小学校5年生と2年生の子どもを育てながら、育児短時間勤務で働いている。 「会社に貢献出来る事であればやりたいことをやっていい」 工場長の一言をきっかけに『てづくりチーム』が発足 カルビー株式会社 野沢一江さん 高校卒業後、カルビーの新宇都宮工場に入社。ポテトチップスの味付けなどを手掛けた後、2004年と2006年に出産。復職後は育児短時間勤務を利用し、育児と仕事を両立。2011年5月に同工場のダイバーシティ委員に抜擢され、12年6月に『てづくりチーム』を立ち上げた。現在もダイバーシティ委員を兼務しながら『てづくりチーム』の主任としてメンバーをまとめる 同社は、2010年にダイバーシティ推進活動をスタート。2011年5月には全国の工場にダイバーシティ委員会が設置され、新宇都宮工場は野沢さんが代表となった。 「上司からやってみないかと声を掛けてもらったんです。私が代表になってすぐ、工場長や総務部の課長など男性4人と、ワーキングマザー3人が集まって、工場内でダイバーシティ推進のための課題を話し合いました」 そこで出てきたのが、時短勤務をしている子育て中の女性社員の働き方についての問題だった。新宇都宮工場の勤務シフトは、6時15分~14時55分までの早番と、13時15分~21時55分までの遅番の2通りだけ。このシフトで働けない社員は、生産ラインに入ることができない。そのため、時短を選択すると、忙しい現場の手伝いや工場の掃除など、サポート業務を探さなければいけない状況だったという。 「私自身、時短勤務になってから自分のメインの仕事が無くなってしまい、がんばりたいという気持ちだけが空回りしている状態でした。せっかく身に付けたスキルを活かせる場所が無いため、モチベーションが下がってしまう人もたくさんいたんです。そんなときに工場長から、『会社から何かが与えられるのを待つよりも、時短勤務者同士で自分たちがやりたいことを考えてみたらいいんじゃないかな』と言われました。正直驚きました。そんなことしていいんだって(笑)。これが、『てづくりチーム』発足のきっかけになりました」 「新しい商品を自分たちで手掛けたい」 失敗を重ねて生み出したアソート商品が大ヒット! 工場長の言葉に後押しされた野沢さんは、すぐに育児を理由に時短で働いている社員を集め、意見交換会を行った。他にも、幼い子どもがいる男性社員や、本社から関東エリアを統括している事業本部長など、総勢30人の社員が参加したという。 「時短勤務のワーキングマザー9名で、できること・やりたいことについて意見交換を始めると、『これまで他社に委託していた社員食堂を自分たちでやろう』、『新しい商品作りに携わりたい』など、さまざまな意見が出てきました。すると、『機械でできない細かい作業が必要な商品作りの依頼は、うちの工場では断っている』という現状を事業本部長が教えてくれて。だったら、そういう商品こそ私たちが作ればいいと考えたのです」 「朝から夕方までの出社時間に、手作りでしかできないスナック菓子のアソート商品を作りたい」。野沢さんたちの意志は、次第に固まっていった。最終的には「最大限支援するからやってみなよ」という事業部長の後押しが決め手となり、具体的な準備に取り掛かった。 野沢さんは本社の営業や企画部の人たちのサポートを得ながら、『てづくりチーム』が作るアソート商品の内容、1日の生産量、費用や資材調達など詳細なプランを練り、同社の東日本経営会議でプレゼン。承認を得た後の2012年6月、5人のワーキングマザーによる「てづくりチーム」の活動が、本格的にスタートした。 「初めは慣れないことばかりで大変でした。しっかり準備をしたつもりでも、資材の発注ミスがあったり、社内のさまざまな規定を分かっていなかったり……。2~3カ月経ってようやく生産が軌道に乗りました」 『てづくりチーム』が担うアソート商品の生産量は、家庭の事情で急にメンバーが抜けても大丈夫なように、余裕を持って計算してある。情報共有は欠かさず行い、「次はこんなことがしたい」など、メンバー間で意見を交わすこともしばしば。ワーキングマザーがイキイキと活躍できる事例として、同社の他工場にも良い影響を与えているそう。 「最近、メンバーの表情が変わってきた気がします。自分たちがやりたいと思っていたことができるので、仕事がすごく楽しい。そして、『てづくりチーム』が作ったアソート商品も市場でちゃんとヒットしていて、目に見える成果が出ているんです。だから、会社に貢献できていることも実感できるし、やりがいを感じます」 自分には何ができるか・会社にどう役立つか 時短勤務でもやりがいのある仕事を続ける方法とは 『てづくりチーム』を立ち上げて2年が経ち、「今後は、育児だけでなく介護などでも、既存のシフトで働けない社員が出てくるはず。時間的な制約があっても、前向きに仕事と向き合い、楽しく働けるチームにしてきたい」と野沢さんは話す。 「正直な話、『てづくりチーム』ができる前はメイン業務が持てず、言われた仕事だけをこなす日々で、こんな簡単な仕事で給料をもらっていいの? と自問することがよくありました。でも、自分たちで働き方を変えよう、やりたいことをやろうと前向きに行動すれば、現状はこんなにも変化するんだと身をもって知ることができたんです」 いずれ育児や介護を理由に時短勤務を選択したとき、やりがいのある仕事から外されてしまうのでは? と不安を感じている女性たちに、「時間的な制限を理由に、やりがいのある仕事を諦めないでほしい」と野沢さん。 「きっと世の中には、以前の私たちと同じように、がんばりたい気持ちはあっても、受け身になって会社から何か指示されるのを待っているだけの女性がたくさんいると思う。でも、せっかく働くならそれではもったいない。時間的制約がある中で自分には何ができるか、それが会社のビジネスにどう役立つのか考えること。想いがあるなら、熱意を持って上司や周囲の同僚にアピールすることが大切です。こんな偉そうなことを言っている私も、そのことに気付いたのは最近(笑)。『やりがいのある仕事は、自分たちで生み出せる』と、『てづくりチーム』の活動を通して私自身、学んだんです」 子育てや介護を理由に時短勤務で働かなければいけない人は、女性に限らず、これからますます増えていくだろう。もしも自分がそうした立場になり、「やりがいのある仕事は無理なの?」と迷いを感じたら、『てづくりチーム』の事例を思い出してみてはいかがだろうか。きっと、仕事と家庭を前向きに両立していくためのヒントが見つかるはずだ。 取材・文/岩井愛佳 撮影/赤松洋太 <<画像付きでこの記事を読む

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