【キャリア対談前編】女性読者層を集め異例の大ヒットとなった『まんがでわかる7つの習慣』を作った敏腕編集者の“頭の中”

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<<画像付きでこの記事を読む 株式会社キャリエーラ 代表取締役 藤井 佐和子(ふじいさわこ) 大学卒業後、大手光学機器メーカーの事務職を経て、インテリジェンスにて女性の転職をサポート。現在は株式会社キャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上。オフィシャルブログ「藤井佐和子のキャリアカウンセリングブログ」も好評。 株式会社宝島社 編集部局 第1編集部 書籍・ムック編集部 宮下雅子さん 大学卒業後、1999年に宝島社に入社。『宝島』編集部に配属となり、雑誌の編集を手がける一方、書籍やムックの制作も担当。2010年11月、書籍・ムック編集部へ異動。90年代にベストセラーになったビジネス書『7つの習慣』をマンガ化した『まんがでわかる7つの習慣』が65万部を超える大ヒットとなっている。『まんがでわかる7つの習慣② パラダイムと原則/第1の習慣/第2の習慣』も7月11日に発売 「世間が求める本が変わる」と 予想したきっかけは東日本大震災 藤井さん(以下、藤井):宮下さんが編集された『まんがでわかる7つの習慣』、読ませて頂きました。古典ビジネス書である『7つの習慣』の内容が分かりやすくまとまっていて、とても面白いと思いました。私は企業向けの研修や大学生向けの講義などをしているので、ぜひ課題図書にしたいと思っています。 宮下さん(以下、宮下):ありがとうございます! そう言って頂けると嬉しいです。 藤井:この本はベストセラーになっているそうですが、どれくらい売れたんですか? 宮下:今の時点(2014年6月末)で65万部を超えたところです。 藤井:すごいですね! ヒットの要因は何だと思いますか? 宮下:世の中の波が来そうな方向をうまく読めたからでしょうか。東日本大震災の前までは、いわゆるエリートやスーパーエグゼクティブと呼ばれる人が書いた自己啓発本が売れていました。そういう人が普段やっている習慣や仕事術を紹介して、それを読めば、あたかもその人になれるかのような本がよく読まれていたんです。でも、あの地震を体験して、「信じられるのは、自分が培ってきた知識と経験と判断力だけなのだ」と皆が気付いたんでしょうね。他人をまねただけの“なんちゃって”の知識ではなく、本当に自分の基礎や土台となるものがないと、充実した人生は送れないということが分かったのだと思います。 藤井:自分自身と向き合って、自分が本当に必要とするものは何かを問いかける人が増えたのかもしれませんね。 宮下:その頃から、これからは本物の学びになる「古典」が求められるんじゃないか、と思い始めたんです。かつてよく読まれていたけれど、今は埋もれている古典は何だろうと考え、思い当たったものの一つが、スティーブン・コヴィー氏の『7つの習慣』でした。私は高校生の時にこの本を読んでいたので、それを思い出しまして。 藤井:高校生ですか。随分と早いですね。 宮下:私、高校時代に暗い本ばかり読んでたんですよ(笑)。キルケゴールの『死に至る病』が大好きで、他にも哲学や倫理の本をよく読んでいました。当時から書店でアルバイトをしていたので、大人たちが買っていく本で、面白そうと思ったものは片っ端から買って読んでいたんです。『7つの習慣』の中にある、物事を他人のせいにするのではなく、自分の内面を見つめ直し、自分の行動を変えることで結果を出そうとする「インサイド・アウト」の考え方や、「主体的でありなさい」というメッセージは、高校生ながらとても勉強になりましたね。 誰も手を付けられない面倒な障壁に あえて踏み込むかどうか 藤井:マンガにするというアイデアはどこから? 宮下:実はこの『まんがでわかる』シリーズには今の形に至る系譜がありまして。『まんがとあらすじでわかる~』が最初の形態だったのですが、自分が予想したほどには売れ行きが伸びなかった。その原因を考えた時、「組み合わせが大事なのでは」と気付いたんです。マンガは直感的に読むもので、感情に訴えるコンテンツです。だったら真逆のもの、例えば図解のように論理的に理解するコンテンツを組み合わせれば、感情的なものを好む人と論理的なものを好む人の両方にとって分かりやすいパッケージになるのではないかと。 藤井:極端な違いの組み合わせの方が広くファンを取り込める、と。 宮下:それで2011年に、今の本の前身である別冊宝島1805『まんがと図解でわかる7つの習慣』を出したところ、売り上げが30万部を超えました。その時は10代でも理解しやすいように女子高校生を主人公にしたのですが、今度は大人の女性にも読んでもらいたいと思い、20代女性を主人公にした『まんがでわかる7つの習慣』を出したんです。 藤井:昔から本好きだったとおっしゃっていましたが、マンガもよく読んでいたんですか? 宮下:はい、マンガも大好きでした。マンガ雑誌の発売日になると、少しでも早く読みたくて、朝5時に近所のコンビニに行って買ったりしてましたね。 藤井:なるほど(笑)。「ビジネス書とマンガ」という組み合わせは、宮下さんが哲学からマンガまで幅広く読んできた積み重ねがあったからこそ実現したんですね。 宮下:たぶん私は気が多いんですよ。編集者の中には、ビジネス書専門の人もいるし、マンガ専門の人もいますが、「ビジネス書もマンガも好きで、両方を組み合わせよう」と考える人はほとんどいないんじゃないでしょうか。マンガ化する時のコマ割りの指示やコスト計算など面倒で難しいことが多いから。でも私はどちらも好きで読み込んできたから、それがやりたいと思った。面倒くさいことをやってでも、あえてそこに踏み込もうとしたかどうかですね。 女性たちに読んでもらうために 「ランチ1回分」の価格にこだわった 藤井:「女性に読んでもらいたい」ということでしたが、実際はいかがですか? 宮下:購入者の6割が女性というデータが出ています。 藤井:女性はあまりビジネス書を買わないイメージがありますが、それだけ多くの人に読まれているのはすごいですね。 宮下:女性に手に取ってもらうために、価格設定にもこだわりました。営業の部署からは1300円で出そうと言われたのですが、私は絶対に1000円にしたかった。だから営業に乗り込んで、「女性が投資していいと思うのは、ランチ1回分の値段までです!」と直談判して。コストが安くて良質な紙も自分で探してきて、「10万部売れば1000円で売っても最低限の編集費は回収できます。私がそれだけ売ってみせますので、どうしても1000円で行かせてください」と説得しました。 藤井:すごい! そこまで言って、売れなかったらどうしようという不安はなかったんですか。 宮下:その時は「ごめんなさい」って謝ればいいやと(笑)。でも、以前に別のビジネス書をマンガ化した時、これより少ないページ数で1000円より高い価格で出したのに10万部売れた経験もあったので、それより分厚くて価格が安ければ勝機があるとは思っていましたから。 藤井:なるほど、ちゃんと裏付けになる実績と計算があったんですね。 宮下:これだけ働く女性が増えているのに、彼女たちにビジネス書が売れないということは、女性が手に取りやすい工夫や仕掛けが出版社側に求められているということだし、まだまだやりようがあると思います。大人の女性が読めるビジネス書を作れれば、書籍全体の売れ行きが伸びて、書店さんを元気にすることにもつながりますから、私も常に潜在的な「見えない読者」を発掘するよう意識しています。   ≫≫後編 休むのをやめたらラクになった? 宮下流ワーク×ライフの極意(7/17公開予定) 取材・文/塚田有香 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER) メソン・セルバンテス 日本で最もスペインに近いセルバンテス文化センター東京の最上階にあるお店。大学のカフェテリアのような雰囲気で、イベリコ豚料理やパエリヤ、旬の素材を生かしたスペイン伝統料理と直輸入ワインが楽しめる都心の穴場レストランです。 【住所】 東京都千代田区六番町2-9 セルバンテスビル7F 【TEL】 03-5210-2990 【営業時間】 [月~金]11:30~15:00、17:00~22:30 [土]10:30~22:30 [日・祝]11:30~21:30 ランチ営業、日曜営業 【URL】 http://www.spainclub.jp/meson_cervantes/ <<画像付きでこの記事を読む

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