与える人こそ成功する時代。ギブ・アンド・テイクの新たな真実

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人との関係を表す言葉で、「ギブ・アンド・テイク(give and take)」という言葉が使われます。これは、何かを与えたら代わりに何かをもらう、何かをもらったら代わりに何かを与えるという、対等な互助関係をいいます。 本来「ギブ・アンド・テイク」は、どちらか一方だけが損することはないので、良好な人間関係を長続きさせるためのこつだといわれています。 こうしたギブ・アンド・テイクの関係は、ビジネスにおいても役立つのでしょうか。このテーマについて研究したのが、ペンシルバニア大学ウォートン校の組織心理学者アダム・グラント氏です。 その膨大な研究成果をベースに昨年4月にまとめられた彼の著書「Give and Take: A Revolutionary Approach to Success(邦題「GIVE & TAKE 『与える人』こそ成功する時代」)は、世界中の多くの人に読まれ、今年1月には日本語訳も出版されました。 今回は彼の著書から、ギブ・アンド・テイクの新たな真実について、まとめてみたいと思います。 まず、グラント氏は仕事における人の行動を、3つのタイプに分けて考えます。 真っ先に自分の利益を優先させる人をテイカー、人に惜しみなく与える人をギバー、この中間で損得のバランスを考える人をマッチャーと分けています。 そして彼は、企業での階層構造の中で、この3つのタイプの人々がどのようなポジションを得るのかについて調査を行いました。 すると、ギバーの特性を持っている人の多くは、他人のために自分の時間や功績を犠牲にしてしまうため、会社におけるポジションが低く、平均給与額も低いという結果が出ました。マッチャーは平均的なポジションと給与。相手より先に利益を得ようと動くテイカーは、平均より少し上程度という結果になったのです。 しかし一方で面白い結果も現れました。この調査で最もポジションと給与が高かったのは、実はギバーの傾向をもった人たちだったのです。平均で見るとポジションは低いが、突き抜ける人材もまたギバーだったということ。 ソーシャルメディアで個人の考えや行動が可視化される時代においては、ギバーがますます成功する時代になると彼は提唱し、単なる精神論ではなく、行動科学と具体例やデータで裏付けしています。 ビジネスSNSとして大成功を収めたLinkedlnの創業者リード・ホフマンも、成功したギバーのひとり。彼はインタビューで、このように発言しています。 “ちょっと信じられないかもしれないが、利他的に振る舞えば振る舞うほど、人間関係からさらに恩恵が得られるんだ。人を助けはじめると、評判がどんどん高まり、自分の可能性の世界が広がるからだ” よい評判はよい人脈をつくり、悪い評判は人を遠ざけます。 評価経済社会においては、得るだけのテイカーは悪いうわさを広められ、懲らしめられると指摘されています。 成功には「勤勉、才能、幸運」が必要といわれますが、ギバーだからこそ得られる「評判」や「人間関係」が、第4の要因として重要なのです。 では、ビジネスで成功するギバーになるためにはどうすればよいのでしょうか。 グラント氏は、「ギバーになるための10の方法」を紹介していますが、今回はそのうちの3つをご紹介したいと思います。 1、自分の「ギバー指数」を調べる 自分はギバーか、テイカーか、何かの基準がないとなかなか認識できないものです。自分が他人にしてあげたことが、その人にどのような影響を与えているか分からないことがあるからです。そこでグラント氏は、「ギバー指数」を判明させる無料のアンケートサービス(英語のみ)を提供しています。 興味のある方は、www.giveandtake.com にアクセスし、まずは自分の「ギバー指数(GQ)」を調べるところからスタートしてみてください。さらに、まわりの人にも評価してもらうこともお勧めします。 2、毎日の仕事の中に、ギブ(人に与える任務)を取り入れてみる カジュアル衣料チェーンGAPの副社長であるジェイは、社員一人一人に極秘任務を伝えました。その内容は、自分がやって楽しいことで、他人も興味をもちそうなギブを実行せよ、というものでした。 そして、その極秘任務には次の3つのルールを課しました。 最低1人の人に注目してもらえる仕事をすること ローコスト、もしくはコストをかけずに行うこと 自ら率先してやること この極秘任務は効果を発揮し、社員同士が互いに関心を持ち合い、関与し合える関係をつくることに役立ったといいます。一方的に相手にギブせよ、といってもなかなか実行できないものです。「自分も好きで、興味がある」ことが根底にあることで、この極秘任務は成功したのでしょう。日々の仕事にギブを取り入れてみる上での大切な工夫です。 3、「5分間の親切」をしよう 忙しくて他人に与えている時間などない、という方も多くいると思います。シリコンバレーのネットワーカー、アダム・リフキン氏はそんな人たちのために「5分間の親切」を推奨しています。 「5分間の親切」とは、お金と時間がなくても、人助けをする方法で、彼が主に行う親切は、率直な意見を言うことと、必要な人を紹介することです。例えば、新しくリリースされた友人のサービスに対して、率直な意見を言うことを心掛けたり、フェイスブックのネットワークに目を通し、ある共通点のあるペアを見つけ、Eメールでお互いを紹介するなどです。かかる時間はたった5分でも、非常に価値のある5分になるといいます。 いかがでしょうか。マザーテレサも、かつてこう言ったそうです。 『与えることを学ばねばなりません。でも、与えることを義務と考えるのではなく、与えたいという願いとすることが大切です』 これからは、他者志向の思いやりとコミュニケーションが、あなたの仕事に大きな成功をもたらすことでしょう。

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