人はなぜ失敗を恐れるのか。失敗の正体と、その正しい生かし方

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失敗は人を成長させる、といいます。しかし、できるだけ失敗したくないと思うのもまた事実です。本能的にも失敗を回避する心理は働きますが、後天的な経験を通じて、さらに失敗を恐れるようになるといいます。 ロシアの心理学者ツァイガルニクの研究によると、人間はうまくいったことよりうまくいかなかったことを強く記憶する傾向があるようです。何かを達成しなくてはいけないという課題場面において、人は緊張状態にあります。達成するとこの緊張から解放されるために、課題自体を忘れがちになるといいます。テスト前の一夜漬けの勉強内容を、試験が終わるとキレイさっぱり忘れてしまうのは、同様の理由です。逆に、課題解決がうまくいかないと、緊張状態が長く続くため、記憶にも定着します。その失敗した苦い記憶が、トラウマとなったり、挑戦すること自体を恐れてしまう要因になります。 もうひとつ、私たちが失敗を恐れる理由を示す実験があります。 スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックは、クローディア・ミューラー氏とともに、ニューヨーク市内の12の学校である実験を行いました。研究では、5年生400人あまりに、言語を用いない比較的やさしいパズルを課題として与えました。テスト終了後、研究者たちは生徒たちに点数を伝え、簡潔な言葉で褒めました。半分の生徒には「あなたは頭がいいんだね」と彼らの知性を褒め、残りの半分には「一生懸命やったね」と彼らの努力を褒めました。 そして次に、先ほどの生徒たちにまた別のテストを2種類与え、生徒たち自身にどちらか好きな方を選ばせました。ひとつは最初のものより難しいパズルですが、やればとても勉強になると説明されたものです。もうひとつは、最初のものと同様の簡単なテストです。 すると、努力を褒められた子どもたちは、90%近くが難しい方のパズルを選択し、一方知性を褒められた子どもたちは、ほとんどが簡単な方のテストを選んだのです。大変興味深い選択です。ドゥエック氏によると、知性を褒められた子どもは、自分を賢く「見せる」ことに気持ちを向けるようになり、間違いを犯すリスクをとれなくなるのだと説明しています。 つまり、いい結果を出したことを評価され続けた人にとっては、いい結果が出せなくなるかもしれない選択(新たな課題に取り組むこと)は避けたいという心理が働くのです。 しかしこうした理由があっても、現場を引っ張るリーダーである皆さんは、正解のないビジネスにおいて失敗を恐れず果敢に挑戦しなければなりません。孔子の言葉「過って改めざる、これを過ちという」にあるように、失敗を失敗のまま終わらせてしまうことが本当の失敗です。「失敗」にきちんと向き合い、その失敗を生かしていくことが大事です。 心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏は、失敗を生かすためのコツとして、「失敗からむやみに教訓を引き出そうとしないこと」を挙げます。「失敗を次につなげる」「失敗を生かす」という表現は使っているころには時間が経ち過ぎているので、失敗を生かす方法はすでに忘却されているものだと指摘します。 そこで、彼の提唱する失敗を生かす最善の方法は、失敗しているまっただ中で やるべきだったのにやらなかったこと やるべきでなかったのにやってしまったこと の2点を箇条書きにして、できるだけ即座に行動を起こすことです。 侍ハードラーと呼ばれた為末大氏は自身のTwitterを通じて、新たな挑戦に勇気を与えるメッセージを送っています。 チャレンジはある一定の失敗の確率を含む。失敗の確率が低いものはチャレンジではなくただの実行。チャレンジし続けるということは失敗するリスクを取り続けるということ。 チャレンジは自分に限界を超えさせて、成長を促す。そのチャレンジが不足するということは長く見ると成長が滞り、結局結果が出なくなっていく。 やるからには結果を出さないと、という価値観が強過ぎる人は、いずれやらなくなる。やらないから経験がなく、すべて頭で考えた世界で生きる。プライドが肥大化し、そして現実とどんどん剥離する。 思いっきり挑戦して、失敗すれば笑う人もばかにする人もいると思う。そういうときは自分も一緒に思いっきり笑えばいい。そして気が済んだらまた挑戦する。結果は運だけれど、挑戦は選択。勇気を持って選択し続ければ本当に勇気がある人間になれる。 何を失敗と呼ぶのか。失敗の定義は、あなた自身の考え方次第で、その姿を変えていくのです。

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