成功企業が実践する戦略を実現するためのシンプル・ルール

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あなたの会社やチームには戦略を実現するための「ルール」は存在するでしょうか? ロンドン・ビジネス・スクールのドナルド・サル教授とスタンフォード大学のキャサリン・アイセンハード教授は、戦略を実行できる企業とそうでない企業の明確な違いについて研究したところ、「ルール」の存在が大きな差を生んでいると結論づけました。しかも、それは複雑で難解なものではなく、誰にでも分かるシンプルなルールが存在している企業ほど、戦略の実行率は高いと述べています。 今回は、組織やチームの戦略を実行するためのシンプル・ルールについて、ドナルト、キャサリン両教授の発表した論文に基づき紹介します。 まず、シンプル・ルールがなぜ戦略の実行に効果的なのか。最近の心理学における研究によると、選択肢が多すぎると人は誤った選択をすることを恐れるようになるという実証データがあります。複雑な状況下で行動の選択肢が多い場合、現場の社員は戸惑い、意思決定が遅れたり、行動できなくなったりすることもあります。 反対にシンプル・ルールを設定することで、現場の社員は戸惑うことなく行動することが可能になります。しかも、あえて細かくルールを規定しないことで、社員は従うべきルールにのっとりながら、創造力のある行動を選択することが増えるといいます。また、こうしたルールに余白を持たせることで、変化する状況に迅速に対応することも可能になるということです。 では、シンプル・ルールは、具体的にどのように策定したら良いのでしょうか。それには5つのステップがあるといいます。 ステップ1 具体的かつ戦略的なボトルネックを洗い出す 最初のステップは、戦略実行におけるボトルネック(妨げになっている部分)を見つけ出すことです。ここでの注意点はボトルネックを大まかに定義せずに、具体的に、かつ最も重要な点にのみ焦点を当てることです。具体性を欠くと、それを実行するためのルールをたくさんつくらなければいけなくなります。また、ボトルネックを複数挙げると、制約が多くなり、社員が動きづらくなるのです。アメリカのデザイン会社IDEOのボトルネックは、アイデアを生み出すための最初のブレーンストーミングであると結論付け、「判断は先送りする」「突拍子もないアイデアを歓迎する」「量を追求する」などのシンプル・ルールが生まれました。 ステップ2 意見よりデータを優先する 次にルールの決め方です。思いつきでルールをつくると、たいていは最近の経験を過大評価し、また、個人的な偏見の影響を受けてしまいがちです。しかし優れたルールは、過去の経験を慎重に分析した結果に基づいています。定量的に分析できるデータがあれば統計分析を行うこと。それがない場合でも、過去の成功例と失敗例を見つけて、その理由を探ると、予想もしなかった知見が得られることが多いようです。 ステップ3 実際に使う人がルールをつくる 経営者の直感に従うと、指示命令系統に沿って上から下に向かうルールを起草してしまいがちです。しかし、ルールを使う立場にある社員こそ、ルールづくりの最適任者です。社員ならば、ルールが曖昧すぎないか、厳しすぎないか、煩雑すぎないかという点をリアルタイムで検証できます。上層部の役割はそのシンプル・ルールがなぜ会社にとって重要なのかを、熱心に説明することです。ルールを実行する社員たちが乗り気でなければ、シンプル・ルールは失敗する運命にあるのです。 ステップ4 ルールを具体的にする 複雑な統計モデルや分析を用いて生み出されたルールであっても、結果的に理解しにくいものになってはいけません。また、「創造的」や「戦略的」といった抽象的な表現や「シナジー」などの経営用語を使ったルールも理解されないことが多いので要注意です。大リーグのスカウトマンであるビリー・ビーンは、獲得すべき選手を見極めるにあたり、回帰分析を駆使することによって素晴らしい知見を得ました。しかし高度な統計とは対照的に、「高校生はだめ」「球団が正せない問題を抱えた選手はお断り」など、古参のスカウトでも理解できるような表現でルールを定めました。このルールを基に、その後アメリカ中から将来有望な選手を引っ張ってきたのです。 ステップ5 ルールを進化させる シンプル・ルールは会社や市場とともに変化すべきです。そのために、定期的にルールの策定前と現在を比較しながら、必要に応じてシンプル・ルールを改善することが重要です。ただし、新しいルールを付け加えることには慎重になった方が良いでしょう。もし改善するのであれば、必要性がなくなった古いルールを削ることも視野に入れるべきです。優れたルールであっても、永遠に続くルールはありません。 目まぐるしく移り変わる市場の動きに合わせて、現場での意思決定もスピードが要求される時代です。難しい取捨選択を迫られる環境で戦う皆さんの会社やチームにおいて、このシンプル・ルールは大きな味方になってくれるでしょう。

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