名前を聞いたこともないスタートアップを働く場所として選ぶ理由

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環境が整備されるとともに人々の働き方が変わり、選択肢が増え、自ら起業するような人も増えています。デジタルなものを作るコストが圧倒的に下がった今、勉学に励む傍らでサービスを立ち上げるような学生も珍しくありません。彼らにとっては、自分で何かを立ち上げることが、就職と同じくらい自然な選択肢なのかもしれません。同時に、働く場所として、スタートアップという選択肢が生まれています。 オフィススペースをデザインするTurnstoneという企業が、「働く先としてベストなスタートアップ」と題された調査を実施しました。この調査におけるスタートアップの定義は、設立から10年以内で従業員数が100人未満であること。一般に集められたアンケートをもとに、審査員が最終的に15のスタートアップに絞り込んでいます。今後見込まれる成長率や、働く環境、さまざまな要因で選ばれた15社は、VentureBeatの記事で確認できます。驚くのは、トップ15に選ばれた企業の多くが、TwitterやFacebookなど業界のセレブ企業ではなく、初めて名前を耳にする企業だという点です。 では、なぜ人々はこれらの企業を働きたい場所に挙げたのでしょうか。 米国のコンサルタントであるエイドリアン・スライウォッキー著書の、「The Art of Profitability」(邦題:ザ・プロフィット)という書籍があります。企業の最たる目的である利益を生むための23の方法を、ストーリー仕立てに紹介する内容です。8章に登場する「起業家利益モデル」の一説を抜粋します。 「ビジネスの世界では、これこそ(起業家精神)が最強の武器だ。この精神があればこそ、合理性と常識をどこかに置き忘れることなく、全社一丸となって利益の追求に邁進することができる。脇道にそれて愚にもつかない事柄に関わる余裕があるのは大企業だけと、相場が決まっている。『こうやるしか生きる道はない』という、実にシンプルな精神のありようだが、これこそが大きな利益を生む源だ。ビジネスの世界で最も難しいのは、成功した後も起業家精神を持ち続けることだ」 スタートアップは、上記の起業家精神に日々触れて過ごすことができる環境だといえます。産声を上げたばかり、もしくはこれからまさに誕生しようとするサービスを手掛ける少数精鋭のチーム。人々が抱える課題を特定し、その解決策として適切なソリューションを生み出そうとするイノベーターと、日々机を並べて仕事ができます。 私自身、新卒で入社したベンチャー企業は、経営陣4人を含む10人規模の小さい会社でした。4年半、スタートアップで働いた経験を振り返ってみて思うこと。まず、仕事初日から、責任ある仕事が与えられます。新卒入社でも、より経験の多いメンバーと同じように機会が与えられ、当然そこには責任も伴います。失敗も成功も自分のもので、それがきちんと確認、共有される環境でした。 さまざまな仕事を兼務できることも、スタートアップで仕事をする利点ではないかと思います。新卒だった私にとって、マーケティング、システム開発案件のプロジェクトマネージャー、ウェブ制作など幅広い業務を行うことで、その後自分が進むべき道を見極めることができました。実際、Eコマース運営会社で働いた後、コンバージョンという重要な指標に大きく影響するユーザビリティに興味を持ち、それ専門のコンサルティング会社に転職しました。いろいろチャレンジできたらこそ見えた、次に進みたい道でした。 小さなIT系ベンチャーで働いて一番やりがいに感じたのは、チームの一体感です。スタートアップは、なんとか自分の足で立とうとする子鹿のようなもの。予想外のハプニングはつきものです。特に立ち上げ初期は、システムのバグなどが発生し、その対応に追われることもありました。新しいことをやろうとするのですから、新しい問題や課題に直面するのは当然。でもこうしたハプニングこそが、チームの強い一体感につながっていたと思います。日々が、強豪と接戦するスポーツ試合のようなものなのですから。 先日、スタートアップでアルバイトする女子大生と話す機会がありました。アプリのヘビーユーザーであった彼女は、それを作る過程に参加したいと強く思い、アルバイトに応募したそうです。これからは、企業名から入る就職活動ではなく、企業の製品、アプリ、サービスなどにまず触れて、そこから職場を選ぶことが増えていくのでしょう。「この会社聞いたことないわ」と思ってその道を閉ざしていたら、今の私はなかったと思います。皆さんの選ぶ道が、この先の可能性をより広げるものでありますように。

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