世界のエリートたちが選択する2年間の過酷な教室

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米国労働統計局(Bureau of Labor Statistics)から発表されている「産業別雇用者推移」によると、アメリカにおける非営利組織(NPO)の雇用者数は、全雇用の2.2%(約290万人)を占めており、過去20年間に42%増加している成長産業のひとつとなっています。 そして、数あるNPOの中でも、最も成功している団体と言われているのが、Teach For America(以下TFA)です。 TFAとは、1990年にプリンストン大学を卒業したばかりのウェンディ・コップが設立した団体で、全米トップクラスの大学卒業生を2年間、貧困地域や教育難校に派遣するというプログラムです。 現在このプログラムは世界中に広がり、コロンビア、マレーシア、ネパール、中国、日本など27カ国(2013年5月現在)で展開しています。 またアメリカにおいては、2010年の就職人気ランキング(人文系)でグーグル、アップル、ディズニーという名だたる有名企業を押さえて、第1位(2012年も3位)となったことが、最も成功したNPOといわれる理由です。 NPOですので決して高い給与が支払われるわけではないのですが、高額な年収が約束されるマッキンゼーやゴールドマン・サックスなどの内定を蹴ってまで、TFAを選択する学生も多いそうです。 現在では5,500人の採用枠に対して、数十万人の応募があり、あのハーバード大学でも10人に1人しか採用されないほどの狭き門となっています。 そこまでしてTFAに入りたい理由はどこにあるのでしょうか。 TFAサイト内に掲載されているブログや動画などを見ていると、志望動機の多くが「世の中を変えたい」「社会にインパクトのある仕事がしたい」といった使命感にも似た熱い想いです。社会を根本的によくしていくには、教育から変革することが大切だという問題意識を持っている学生たちが、TFAの活動を支持しているのです。 ただ、同時にTFAでの2年間のプログラムはやさしいものではありません。むしろこれまでエリートコースを歩んできた学生たちがはじめて経験する挫折の日々が待っています。 TFAへの応募を志している学生に向けて書かれた、ある先輩教師のブログにも、かつて派遣された小学校での奮闘の日々が赤裸々に語られています。 I was desperate to get out of school at 4:30 p.m. one cold, dark Friday in February during my first year teaching. My principal had asked me to check in with her before I left for the day, so I collapsed into a chair outside her office to wait while she finished another meeting. The clock ticked by. Other staffers with more pressing matters came and went. Finally the door opened and my co-teacher and I entered. It was 6:30 p.m.; I’d been at school since 7:30 a.m.; and I wanted nothing more than to make it home and forget the disastrous lessons, the screaming middle schoolers, and the late nights that had consumed the week. “The children in your class are not getting what they need,” my principal began, and proceeded to tear apart every element of my teaching from how I incentivized silent reading time to the worksheets I spent hours writing from scratch every night. Moreover, she said, “I’ve talked with your students and they don’t respect you.” The takedown lasted 30 minutes, and when I got into my car, all I could do was scream and sob, because she was right. I was trying really hard to teach my students well, but I was doing a really bad job of it. 教師となって1年目の2月、金曜日の午後4時30分、私は学校から逃げ出したい思いでした。校長に、今週の報告を行うようにと言われていたので、彼女の会議が終えるのを待っていました。 私は、授業中叫びだす生徒や、まったく関心を示さない生徒たちのことを思うと、ただただ家に帰りたくて、毎日深夜まで悩んで過ごした1週間を忘れたかったのです。 校長の部屋に入ると「あなたのクラスの生徒は必要なことを習得していないわね」と彼女は話し始め、毎晩何時間もかけて一から書いたワークシートまで細かく指摘し、「私はあなたの生徒と話をしました。彼らはあなたを尊敬していないそうよ」と言いました。 彼女のフィードバックは30分受けたあと、車に乗り込んだ私は、叫び、むせび泣くしかありませんでした。なぜなら彼女は正しかったから。私は生徒にうまく教えようと一生懸命でしたが、まったくできてなかったのです。 What Teach for America Taught Me (And Why You Should Apply)>>記事元 実際に、低所得者層の住んでいる小学校や中学校では、生徒の両親や、既存の教師たちも教育への情熱が低いことが多いようです。指導内容によって対立することも多々あり、思うようにいかない日々の連続です。 ただし、派遣された彼らの多くは、困難にめげることなく立ち向かいます。両親や既存の教師も情熱的に説得し、巻き込み、様々な工夫をして生徒のやる気に火をつけ、目標達成に向かわせます。深夜、土日も関係なく、熱心に指導し続けることで、識字率や進学率がたった2年で飛躍的に向上する事例はたくさんあるそうです。 ここで経験する想像を超えるさまざまな困難は、彼らのリーダーシップスキルを高めます。 グーグルやゼネラルエレクトリックなどは、同社に内定を持っている学生がTFAにも内定している場合、2年間はTFAでの活動に専念させるといった入社までの特別猶予期間を与えています。 海外のエリートたちは、世の中を変えようという大きな使命と同時に、あえて苦労の多い環境に飛び込む勇気を持ち、自らのリーダーシップが磨いています。 困難を避けるのではなく、成長できるチャンスと捉えることが、リーダーとしての第一歩です。

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