未来を変える「あの会社」 【vol.5】人生の最後に、誰もが受けたくなる介護サービスを。ベネッセ、ノウハウゼロからの挑戦

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事業の立ち上げに、取締役会は全員反対した ただ1人を除いて 「たった1人の強い意志が、世の中を変える。時代を動かす」 その言葉がまさに当てはまるのが、1995年、ベネッセ(当時の福武書店)のシニア・介護事業の始まりでした。当時、監査役の1人は、「10本の針に一度に糸を通すようなものだ。それくらい困難で不可能に近い事業展開だ」と言ったそうです。それもそのはず、当時の福武書店のビジネスは、進研ゼミの名で展開していた通信教育など、教育事業が中心。シニア・介護ビジネスには、何の経験もなければノウハウもありません。当時の取締役会は現会長の福武總一郎以外、全員が反対でした。 それでもベネッセのシニア・介護事業は、スタートを切りました。そのエンジンとなったのは、提案者であり、唯一の賛成者である福武の強い意志でした。きっかけは、福武自身のおばあさまの介護に関わる体験。1988年ごろ、身体を悪くしたおばあさまの介護支援を受けるために、福武は市役所にヘルパーさんを頼みに行きました。しかし、1人目2人目と、おばあさまとそりが合わない。ヘルパーさんが家に来る日は朝から落ち着かない様子を見せるおばあさまの態度を見ることもあったそうです。 ようやく3人目で落ち着いたそうですが、うまくいかなかった理由を「老齢者に対する敬意のなさ」ではないかと福武は考えました。例えば、小さなことですが、3人目の方が初めておばあさまを「福武さん」と呼んだそうです。それまでの2人は「おばあちゃん」。何もその呼称が悪いわけではありませんが、どちらが老齢者を個人として尊重をしているかを考えれば、前者なのではないでしょうか? そんな体験を通して、福武はある思いを抱きます。「この社会をつくり、支えてきたシニアの方々が、人生の最後に受けるサービスを選べず、我慢を強いられるのはおかしい。私たちの手で、この国の介護をもっと良くしていこう」。当時の福武の胸には、1990年から企業CI活動として掲げたベネッセの「よく生きる」という理念が、そのころから強く心にあったと思います。子どもたちの教育だけでなく、年を取るほどに幸せになれる社会づくりに貢献するべきだ。シニア・介護事業への挑戦は、私たちにとって異端ではなく、むしろ必然だ。そんな使命感が、すべてのスタートでした。

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