未来を変える「あの会社」 【vol.1】建設機械に革命をもたらした「KOMTRAX」誕生の足跡

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利益2%を度外視してでも標準装備にするという決断 GPSを搭載したコマツの建設機械がいま世界で約30万台稼働しています。これは「KOMTRAX」と呼ばれる機械稼働管理システムで、どの機械がどの場所にあって、エンジンが動いているか止まっているか、燃料がどれだけ残っているか、昨日何時間仕事をしたか、すべてがコマツのオフィスで分かる仕組みになっています。 「KOMTRAX」が生まれるきっかけは1998年ごろ、盗んだ油圧ショベルでATMを壊して現金を強奪する事件が日本で多発していて、その盗難対策として「GPSをつけたらどうか」というところからスタートしました。ちょうど私が経営企画室長のときのことでした。当時はすでにカーナビが普及し始めていたので、「あのGPSを搭載したらどういうことが分かるんだ?」と技術者に聞いたら、所在場所が確認でき、通信機能を付けることで位置だけでなく他のセンサー情報も取れるようになるというのです。たとえば飲料の自動販売機では、どの商品がどれだけ不足しているのかは補給に行く前からリモートで分かるようになっていると。それを聞いて、じゃあ同じことを建設機械でやったらすごいことができるじゃないかと私は直感しました。そこでGPSの位置情報のほかに、エンジンコントローラーやポンプコントローラーから情報を集めることで、その機械がいまどこにいて、稼働中か休止中か、燃料の残量はどのくらいかといった情報を取得し、通信機能を使ってコマツのセンターにデータを送る仕組みを開発しました。これが「KOMTRAX」というシステムです。 「KOMTRAX」を実用化した当初はオプションで搭載していました。すると、「コマツの機械を盗んだらすぐ追跡される」と評判になりました。数年後にはお客さまの現場から500メートル以上車が移動したらお知らせメールが飛ぶ、サーバから命令を送るとキーを入れてもエンジンがかからなくなるといった仕組みができました。こうなると泥棒は油圧ショベルを盗んでトレーラーに乗せてATMの前に行ってもトレーラーから下ろせなくなる。そのうち「コマツの機械は盗んでもだめだ」となって、盗難が劇的に減少しました。その結果、盗難保険も安くなってお客さまからは二重に喜ばれるようになりました。 そして2001年、私が社長に就任したときに、「KOMTRAX」を標準装備にすることを決めました。実はこの装備には当時1,000万円の機械でコストが20万円かかっていました。そのころ会社は800億円という、創立以来最大の厳しい赤字状況に直面していたものですから、2%もの利益が吹っ飛ぶような装備をつけるのは大変な決断でした。けれども、私は「お客さまのためにつけるんじゃない、自分たちのためにつけるんだ」と考えて断行しました。なぜかというと機械の所在場所が分かるだけでも画期的なメリットがあるからです。

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