街とともに83年。老舗果実店の「50年後も食べたい」フルーツパフェ ―「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」

宝石のような旬のフルーツがたっぷり使われた贅沢なパフェは、頑張ったときのごほうびにぴったり。最近では、北海道の札幌からやってきた「シメパフェ」文化も話題ですね。

「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」

「シメパフェ」未経験のわたしですが、飲み会のあとや友人との食事のあと、「締めに甘いパフェを食べたい!」となる気持ち、よく分かります。

今回は、渋谷で夜23時(日祝は22時半)まで「シメパフェ」が楽しめる名店「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」をご紹介。

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」のネオンサイン

看板メニューであるフルーツパフェへのこだわりや、老舗ならではの「渋谷」という街との深い関係について、じっくりお話を伺いました。

スクランブル交差点をわたってすぐ。老舗果実店「渋谷西村總本店」

「渋谷西村フルーツ 道玄坂店」の夜の外観

再開発が進み、訪れるたびに違った風景を見せる渋谷の街並み。ハチ公口を出て、スクランブル交差点をセンター街(バスケットボールストリート)方面にわたると、すぐ左手にあらわれるのが「渋谷西村總本店」のビルです。1階がフルーツ店、2階がフルーツパーラーになっています。

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」のパフェサンプルのディスプレイ

ショーケースの中には、色とりどりのフルーツパフェのサンプルが!

「渋谷西村フルーツ店」の1Fのジェラート

1階のフルーツ店にはフルーツスタンドが併設されていて、フレッシュジュースやオリジナルのソフトクリーム、ジェラートも楽しめます。

2階の「渋谷西村フルーツパーラー」は、パフェを食べるワクワク感に満ちた非日常空間

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」の入り口

ショーケースの奥の階段を登って、いよいよ2階のフルーツパーラーへ。白と金を基調にしたエントランスに、「これから豪華なパフェを味わうんだ!」という気分が高まります。

「渋谷西村總本店」の専務

出迎えてくれたのは、専務の西村元孝さん。

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」の店内

内装も、エントランスと同じく白と金が基調。高級感のある明るい空間です。

西村専務:「以前はカジュアルな雰囲気の内装だったのですが、3年前の改装で今の状態になりました。昔も今も、パフェは、ワクワクしながら食べる特別なデザート。内装でも、非日常感を演出したいと考えたんです」

旬のフルーツのみずみずしさに感動! 秋のおすすめメニュー「特選 シャインマスカットパフェ」。

明治43年に高級果実店として創業。渋谷に拠点を移し、現在の位置に果実店をオープンしたのは昭和10年のこと。翌11年、2階にフルーツパーラーが開設されました。1階はフルーツ店、2階はフルーツパーラーというスタイルは、この頃から変わっていないのだとか。

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」のロゴサイン

果実店がルーツなこともあり、「その季節ごとの、本当においしい果物を提供したい」というこだわりはかなりのもの。パフェをはじめとしたデザートメニューは、フルーツの旬に合わせて年に7回も変更しているというから驚きです。

西村専務:「秋のおすすめはやっぱりぶどうのパフェ。『特選 シャインマスカットパフェ(税込2,900円)』は、晩夏シーズンに引き続いて、初秋・晩秋シーズン(9月〜11月末)も提供する予定の人気メニューです」

「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」

金色に縁取られたお皿に乗ってやってきた「特選 シャインパスカットパフェ」は、ため息が出るほどの美しさ。「マスカットの女王」とも呼ばれるシャンマスカットが、たっぷりと、バランスよく盛りつけられています。

「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」
トッピングのチョコレートにはお店のオリジナルロゴが

お皿の縁と同じく金色のスプーンを手に取って、大粒のシャンマスカットをすくい、口に運びます。薄い皮がプチっと弾けると同時に、口の中いっぱいに広がるさわやかな香り。みずみずしい甘さが、じんわりと身体に沁みわたるよう。

夢中で食べ進めていくと、シャインマスカットの下は、生クリーム、シャーベット、ジュレ、ムースが層になっていました。

「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」

西村専務:「シャーベット、ジュレ、ムースは、すべて厨房でつくっている自家製。シャインマスカットの果肉と果汁をたっぷり使用しています。生クリームもですが、果物そのものの味わいを引き立てるために、甘さは控えめに調整しているんです」

「渋谷西村總本店」の専務
果実店ならではのこだわりを教えてくれた西村専務

最初はパフェのボリュームに驚き、ふと「食べきれるかな……?」と思いましたが、まったくの杞憂でした。シャーベット、ジュレ、ムースのそれぞれ違った食感が楽しく、どんどんスプーンが進みます。

パフェの底にも、シャインマスカットが丸々ひと粒入れてあるのがうれしい。パフェは基本的にすべて、底にメインの果物がいれてあるのだそう。これは、「最後のひと口まで果物のおいしさを味わってほしい」という、「渋谷西村フルーツパーラー」ならではの工夫です。

秋から冬、そして春に向けて、旬のフルーツが主役のフルーツパフェが登場

あっという間にペロリと完食。おいしさの余韻にひたりながら、これからの季節に登場する予定のおすすめパフェについて教えていただきました!

「渋谷西村フルーツ店」の冷蔵ケースに陳列されたフルーツ
1階のフルーツ店にも、旬の高級フルーツがずらり

西村専務:「11月からの晩秋シーズンの主役は洋梨のパフェ。12月になるとイチゴのパフェが登場します。フルーツの旬は天候にも左右されるのではっきりした時期は分かりませんが、来春には『紅まどんな』をはじめとした国産柑橘類のパフェがラインナップに加わる予定です。シーズンごとの新メニューを楽しみに来店される常連のお客さまも多いんですよ」

夜は大盛況! 昔から渋谷にも根付いていた「シメパフェ」文化

常連さんの中には、なんとフルーツパーラーを開設した昭和11年から通っているという方もいらっしゃるのだとか。

西村専務:「お客さまの年齢層は、若い方から高齢の方まで幅広いです。フルーツパーラーというと女性のお客さま中心というイメージがあると思いますが、うちは意外と男性も多いです。スーツ姿の40代から50代くらいの男性たちが、パフェを囲みながら商談をしている様子も見かけます」

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」の店内のボックス席
店内奥のボックス席。落ち着いて話ができそう

それはなんともほほえましい光景! その男性たちも、子ども時代からの「渋谷西村フルーツパーラー」のファンなのかもしれませんね。

特に混雑する時間帯と、入店しやすい時間帯についても伺いました。

西村専務:「当店の混雑のピークタイムは、15時前後のティータイムと、閉店間際の21時過ぎ。閉店が23時(日祝は22時半)と、フルーツパーラーの中ではかなり遅くまで営業しているので、昔から、いわゆる『シメパフェ』のために来店されるお客さまは多いです」

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」のスタッフ
笑顔がさわやかなスタッフのおふたり

平日の午前中は比較的空いているとのこと。のんびりパフェを楽しみたい方にはおすすめしたい時間帯です。

若者の果物ばなれを食い止めたい。老舗のプライドと果物への愛情

今回の取材でいただいた「特選 シャインマスカットパフェ」は税込2,900円。高級なフルーツを惜しみなく使った豪華なパフェは「渋谷西村フルーツパーラー」の看板メニューですが、隠れた人気を誇るリーズナブルなパフェもあります。

西村専務:「熟練のスタッフが食べ頃を見極めたバナナをまるまる一本使った『バナナチョコパフェ』は税込1,000円。修学旅行などで渋谷にやってきた中高生も食べられるように、今後もこの価格をキープしたいと考えています」

「渋谷西村フルーツパーラー」の「バナナチョコパフェ」
画像提供:渋谷西村總本店

その背景には、「若者の果物ばなれを食い止めるのは果物屋の使命」という思いがあるのだと言います。

西村専務:「子どもの頃に、本当においしい果物に触れる機会がちゃんとあれば、大人になってからも果物を習慣的に食べてくれると思うんです」

「渋谷西村總本店」の果物柄のネクタイ
この日の西村専務のネクタイはフルーツ店オリジナルの果物柄

西村専務が、四季のフルーツや、全国各地のフルーツ農家さんたちについて語る姿はとても楽しそう。長年にわたって果物に向き合い続けてきた老舗としてのプライドと、果物への愛情を感じました。

多様性の街・渋谷とともに歩み続ける

昭和10年、西村専務のお祖父さまである初代が渋谷に拠点を移し、現在の位置に果実店を開いた頃、渋谷はまだ、今のように華やかな街ではありませんでした。

「渋谷西村總本店」のビル

西村専務:「昭和9年、渋谷駅に東横百貨店(現在の東急百貨店東横店の前身)ができるということで、祖父は渋谷に将来性を感じたようです。オープン前から何度も市場調査のために渋谷駅を訪れて行き交う人の流れをみていたらしく、昭和10年まで生きたハチ公にエサをあげたことがあると、祖母がたまに話してくれました」

渋谷が発展するに従い、次第に評判となった「渋谷西村フルーツパーラー」ですが、太平洋戦争末期の東京大空襲で、あたり一帯もろとも焼けてしまいます。

西村専務:「戦後の焼け跡の仮店舗から復興し、フルーツパーラーとして再オープンすることができたのが昭和26年のこと。その後も、東急と西武による開発が進み、 坂に囲まれた谷底というユニークな地形の街・ 渋谷が若者文化を発信する街となったのはご存知のとおりです」

渋谷の街

オープン以来、83年にわたって、渋谷という街の歴史とともに歩み続けてきた「渋谷西村フルーツパーラー」。進行中の再開発プロジェクトにも、地域商店街の一員として参加しているのだとか。

西村専務:「渋谷は、常に新しい文化や考え方を取り入れてきた『多様性の街』。うちのような路面店も、最先端の商業ビルの中のテナントショップも、どちらも輝ける楽しい街づくりをしていきたいですね」

50年後も食べたい。そんな「特別なパフェ」が渋谷にはある

フルーツパーラーの入り口となっているエレベーターフロアからは、渋谷の象徴であるスクランブル交差点が見えます。見上げると、「渋谷ヒカリエ」の隣に、11月1日に開業する「渋谷スクランブルスクエア」が。230メートルの超高層ビルで、渋谷エリアで最も高いビルになります。

渋谷の街

今回、西村専務のお話を聞きながら感じたのは、変わり続ける街の中に「変わらない場所」があることの価値。50年後も同じ場所に「渋谷西村フルーツパーラー」があってほしいな。

「渋谷西村フルーツパーラー 道玄坂店」のメニューサンプルのディスプレイ

おばあちゃんになった自分が、50年後の「渋谷西村フルーツパーラー」でフルーツパフェをほおばる姿を思い浮かべながら、小雨の降りはじめた渋谷を後にしました(50年後どころか、11月からはじまる洋梨のパフェ、きっと食べにいきます)。

お仕事を遅くまで頑張った日のごほうびに、久しぶりに会う友人とのおしゃべりのお供に。「渋谷西村フルーツパーラー」の、特別なパフェはいかがでしょうか。

「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」「渋谷西村フルーツパーラー」の「特選 シャインマスカットパフェ」

一度、その芳醇なおいしさを体験すれば、旬のフルーツに誘われるように、渋谷に訪れるたびに立ち寄りたくなってしまうお店ですよ。

渋谷西村フルーツパーラー道玄坂店(シブヤニシムラフルールパーラードウゲンザカテン)

東京都渋谷区宇田川町22-2 2F
TEL:03-3476-2002
営業時間:
<月-土>10:30-23:00(L.O. 22:30)
<日祝>10:00〜22:30(L.O. 22:00)
定休日:なし
https://snfruits.com/

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