訪れるたびに新しい出会い。心ときめく700種のうつわでコーヒーを ― 渋谷「茶亭羽當」

素敵なうつわを見ていると、ささいな悩みごとがどこかに行ってしまいます。凝った装飾、特徴的な形、作られた国はどこなのだろう……と、すてきな考えに頭がいっぱいになってしまうから。

茶亭羽當

大切につくられた品々に囲まれた空間は、多くのつくり手の思いに囲まれているようで、なんとも言えず満たされた気持ちになります。

今回は、訪れるたび、さまざまな個性的なうつわでコーヒーをたのしめる喫茶店「茶亭羽當」にお邪魔してきました。

流行のものがなんでも揃い、どんなお店もある魔法の街・渋谷。人であふれるスクランブル交差点はみんなが早足で、渋谷駅の大改築もあいまって、目まぐるしく変化を遂げる街です。

茶亭羽當(サテイハトウ)は、そんな渋谷で30年以上営業しているお店です。人通りの多い明治通りから少し入った坂の途中。

茶亭羽當

趣のあるドアを開けると、落ち着いたインテリアの店内が広がっています。

茶亭羽當

茶亭羽當

目を上げるとすぐ、カウンターの奥にズラリと並ぶうつわに目を奪われました。クラシックで繊細なカップ&ソーサ―から、日本の焼き物、ぽってりと厚手の北欧のマグカップまで。幅広くさまざまなうつわが置かれています。

カップはオープン時から使っているものから、新しく買い足されたものまで約600~700種類。どんなうつわで喫茶を提供されているのか、バリスタの寺嶋和弥さんにお話を伺いました。

寺嶋さん:「このお店は常連の方が多いので、いつも新しい発見があるように、うつわもなるべく変えるようにしています。初めて来てくださった方は、服装や表情を見てお選びしているんです」

茶亭羽當

コーヒーは羽當オリジナルブレンドが1種類と、シングルと呼ばれる豆が6種類。そのとき出ている種類は、豆を卸す業者さんのチョイスによって変わるそうです。せっかくなので、オリジナルブレンドをお願いしました。

豆は通常10~15gと言われているところ、倍近い25~28gと、たっぷり使います。少し粗めの挽き方で、美味しいところだけ抽出できるようにこだわっているそうです。

茶亭羽當

店内に豆を挽く音が響きます。カップだけでなく、ソーサーもお湯で温めていることに感動しました。穏やかなBGMがひっそりと流れる中、コーヒーの香りが漂います。

寺澤さんがわたしに選んだのは、ゴールドの装飾が美しいカップ。

茶亭羽當

茶亭羽當

寺嶋さん:「イギリスのスージー・クーパー(※)という、陶磁器に革新をもたらしたと言われる作家さんの作品です。これはアンティークですが、現在は復刻盤も出ているので、気に入られたら比較的お求めやすい価格で手に入れることができますよ」

(※編注:1920年代からおよそ60年にわたりウェッジウッドのシリーズを含む数多くの陶磁器をデザインした陶器デザイナー)

普段使い慣れなていない薄い飲み口、細い持ち手。金の装飾はひとつひとつ手書きで描かれているのでしょうか。淀みなく描かれたその線に職人技を感じました。少し色褪せた装飾も、これまで使われてきた時間を感じさせてくれます。
普段は丈夫なマグカップを使っているので、背筋がピンとなるような華奢なカップに緊張しながらコーヒーをいただきます。

茶亭羽當

最近増えている酸味の強いコーヒーではなく、酸味が軽く抜けていくような飲み口なので、最後まで美味しく飲むことができました。

寺嶋さん:「カウンターにすべて並んでいるわけではなく、季節ごとに衣替えのように変えています。高価なものから手頃な価格のものまでさまざまです。ここ最近は北欧ブームの影響か、ぽってりとした厚手のものが人気なんですよ」

特徴的なうつわをいくつか、ご紹介いただきました。

茶亭羽當

寺嶋さん「こちらはアジアの作品のように見えますが、ハンガリーの『ヘレンド』という窯のものです。中国の『景徳鎮(※)』から着想を得た作品です。この黒には『西安の黒』という名前も付いています」

(※編注:千年の歴史をもつといわれる江西省東北部の陶磁器の生産地。白磁に青の染めつけの技法「青花」が有名)

茶亭羽當

寺嶋さん「独創的な形をしていますよね。こちらは台湾のフランツというコレクションです。以前は日本の百貨店などでも取り扱いがあったようなのですが、装飾部分がどうしても輸送時に欠けてしまうので、あまり見かけなくなりましたね」

茶亭羽當

寺嶋さん「最後はご存知だと思いますが、HERMÈSのカップ&ソーサーです。通常のカップメーカーでは使わないような斬新な黄色と黄緑が美しいですよね。ファッションブランドならではの色だと思います。」

茶亭羽當

そのほかにも有田焼なども見せていただき、次に来たときは、どんなうつわが選ばれるのだろう……と心が躍ります。

ちょっとした空き時間があるとカフェに入ります。ただ、それはコーヒーが飲みたいからではなく、次の予定への時間つぶし、wi-fiが飛んでいるから、スマホが充電できるから……自分にとって「必要なものがある」という理由です。

茶亭羽當

茶亭羽當では、コーヒー自体を楽しむことはもちろん、うつわの数々をゆっくり眺めることができます。国内外、さまざまな年代のものが並んでいるので、これまで見たことがないような装飾、凝った形のものも多くありました。いつから使われているんだろう、どんな作家さんが作ったものなんだろう。そうやって考えていると時間はあっという間に過ぎていきます。人混みに揉まれて肩が凝ったら、素敵なうつわに囲まれた自分だけの時間を過ごしてみませんか。

茶亭羽當(サテイハトウ)

東京都渋谷区渋谷1-15-19
電話番号:03-3400-9088(予約可)
営業時間:11:00-23:30(L.O.23:00)
定休日:年中無休(年末年始等は要確認)

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