広告もしない、営業時間も決めてない。1対1のおもてなしがめざすこと ― 不動前の美容室「ココマンテュ(キッサ)」

ポータルサイトで予約した大きな美容室は、いつも緊張してしまうんです。自分のことをなんとなく説明して、美容師さんと当たり障りのない会話をする。シャンプーはアシスタントさんに代わって、一生懸命洗ってくれる。気を使って、逆にこちらから質問したり……。パーマのロッドを巻くのや、ブローも別の人で。髪はスッキリしたけれど、気疲れしてしまったということはありませんか。もっとゆったり、無理せずに。髪をきれいにしてもらう時間を楽しみたい。

今回ご紹介するのは「koko Mänty (kissa) (ココマンテュ(キッサ))」という、オーナーがひとりで営んでいる美容室です。

ココマンテュ(キッサ)

東急目黒線不動前駅から徒歩7分。商店がならび人が行き交う、生活感のある落ち着いたエリアを歩きます。春には桜のトンネルができる「かむろ坂」を武蔵小山駅方面へ上がっていくと、「ココマンテュ(キッサ)」に到着します。

ココマンテュ(キッサ)

ココマンテュ(キッサ)

入り口そばにある雰囲気のある看板が目印。縦に長い外観は、一目見ただけではわかりづらいかもしれません。「こんにちは」と、オーナーの成重松樹(なりしげまつき)さんが出迎えてくれました。

ココマンテュ(キッサ)

「自分の100%」でお客さまと向き合いたいから

「ココマンテュ(キッサ)」というちょっと風変わりなことばには、お客が最高の時間をすごすことをめざす、成重さんの思いが込められています。一体どんな由来があるのでしょう。

ココマンテュ(キッサ)

成重さん:「お店の名前を考える中でフィンランド語の『koko』という単語にたどり着き、日本語の意味を確認したら「サイズ」と出て。響きも可愛いし、意味もすごくいいなと思って。1人でお店を始めるにあたり『自分に合ったサイズの仕事』をしていきたいと思っていたんです」

ココマンテュ(キッサ)

お店の中は、細長い不思議なかたち。

ココマンテュ(キッサ)

以前は10人規模のヘアサロンで働いていた成重さん。

成重さん:「大きいお店で1度に数人のお客さまを対応していると、アシスタントの方にお願いする部分が必ず出てきます。誰かと代わると、お客さまに100%で接することができないと感じて。それがもどかしくなってしまいました。パーマをかけている15分間にもできることって色々あるのに、ほかの方を施術する間に気づけなくなってしまう。ぼく個人としては、もっているスキルをすべて使って、お客さまに接していきたいんです」

ココマンテュ(キッサ)

「自分ができることで最大限やる=自分サイズでやる」という思いを「koko」に込め、また成重さんの下の名前にある「松」のフィンランド語「Mänty(マンテュ)」を、次の単語に決めたのだそう。

肩ひじ張らずにいられる場所

店名の最後の「kissa(キッサ)」はフィンランド語で、猫のこと。成重さんが飼っていた猫の自由さと、“喫茶店”に響きが似ていることから、のんびり落ち着ける場所のイメージを持ってもらえるようにつけたそうです。

成重さん:「髪質や皮膚に問題があったり、シャワーが苦手だったり。美容室へ行くにあたり、障害や悩みを抱えている方は実は少なくありません。周りに人がいると話しづらい、知らない人には会話を聞かれたくない、と思う方もいらっしゃいます。ここはお客さまと自分の1対1の空間なので、肩ひじ張らず『今まで不都合だったことができる』場所であればいいなと思います」

ココマンテュ(キッサ)

シャンプーはオーガニック&フェアトレードの商品。爽やかなハーブの香りです。気持ちよく洗い流してもらったあとに身体を起こすと、シャワーでかき消されていたクラシックのBGMが再び聞こえ始め、髪の毛からは森林の中にいるような香りが漂います。

ココマンテュ(キッサ)

お客さんも等身大で、“自分サイズ”でいてもらえる。居心地のいい場所にしたいという成重さんの思いが、「kissa(キッサ)」ということばに込められています。

精一杯のサービスが、“未来”への広告になる。

成重さん:「例えば広告を出して、20人のお客様が1回ずつ来てくれるよりも、1人のお客様が20年来てくれる方が嬉しいです。目の前の人に、“自分サイズ”で、100%できることをする。また来てもらえるよう、その人の“未来”に広告するようにしています」

ココマンテュ(キッサ)

訪れるたびに居心地のよさを実感する理由。それは、ひとりひとりのお客と、等身大の自分で向き合い対話する、成重さんの姿勢がつくりだしたものなのだと感じました。

アトリエのような店内

店内には成重さんの感性が詰まった品々が、あちらこちらにちりばめられています。

こっそり隠れているパネルに好奇心がくすぐられます。文筆家の奥さまが作成したこのパネルは、店内のところどころに置かれています。

ココマンテュ(キッサ)

その他にもあちこちに絵画、恐竜のおもちゃや、不思議なぬいぐるみ、成重さんが撮影した写真、数々の本が雑多に置かれていて、まるでアトリエの一室のようです。

ココマンテュ(キッサ)

ココマンテュ(キッサ)

本は旅の雑誌やエッセイ、さくらももこさんの漫画や『ドラえもん』など、懐かしさもあって手に取りたくなるものばかり。「家に置ききれなくなってしまったものを、ここに避難しています」とのこと。なかなか手放せないお気に入りの本がここに置かれているようです。

ココマンテュ(キッサ)

一番おすすめしたい、素敵な場所はシャンプー台。ここに座ると、成重さんのこだわりのつまった空間を見渡すことができます。

ココマンテュ(キッサ)

訪れた日はもうすぐ雨が降りそうな空模様。普段なら「さっさと家へ帰りたい」と思うはずが、雨の景色を待ちたいような、ここでお茶を飲みながら外を眺めたくなるような。この美容室には、そんなふしぎな居心地がありました。

ココマンテュ(キッサ)

ココマンテュ(キッサ)

koko Mänty (kissa)

営業時間:応相談
(※様々なお客様のライフスタイルに合わせられるよう、特に営業時間の設定をしておりません。<Webサイトより>)
価格:カット4,500円程度(2018年10月時点)
定休日:不定休
電話番号:03-6303-9589
Webサイト:
http://kokomanty.com/

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