人気Web漫画「今日のてんちょと。」おおがきなこ/「こはぜ珈琲」谷川隆次インタビュー ― 下北沢の片隅に、大人の居場所とコーヒーと。(前編)

おおがきなこ こはぜ珈琲

行きつけのカフェがあったらいいのに。マスターが、仕事の片手間に話し相手になってくれるような。

なんとなく寂しいとき、とにかく誰かと話したいとき、ふとそんなことを考えます。家族や友人とはまた違った心地よい距離感のマスターに、日常で感じているちょっとしたモヤモヤを話したい。

おおがきなこ こはぜ珈琲

イラストレーターのおおがきなこさんがInstagramで更新しているWeb漫画「今日のてんちょと。」は、まさにそういうストーリー。登場人物たちの悩みを肩の力の抜けたスタンスで聞いてくれる「てんちょ」のモデルは、下北沢駅北口から徒歩5分ほどの場所にある「こはぜ珈琲」の店長・谷川隆次さんです。

(C)おおがきなこ

きなこさんは、実際にこはぜ珈琲の常連さんなのだそう。ふたりにお話を聞きたくなって、夏祭り前の熱気にあふれる下北沢一番街商店街のゲートをくぐりました。

おおがきなこ こはぜ珈琲

おおがきなこ こはぜ珈琲

演劇から離れても、下北沢との縁は切れなかった

こはぜ珈琲にたどり着くと、最初に出迎えてくれたのはガラス窓に描かれたきなこさんのイラストでした。

おおがきなこ こはぜ珈琲

すぐに「こんにちは!」と声を掛けてくれた店長さん、「きなこちゃんも呼んできますね」と言い残してお店の外へ。

おおがきなこ こはぜ珈琲

飄々とした雰囲気の店長さんと明るいきなこさん。ふたりが並んで座ったときのリラックスした空気感にほっこりしながら、まず伺ったのは、それぞれの下北沢との関係について。

きなこさん:「わたし、ずっと演劇をやっていたんですよ。主に脚本を書いていました。だから、劇場がたくさんある下北沢には馴染みがあったんですけど、集団生活が苦手だって気づいて演劇はやめちゃったんです。下北沢とのつながりがちゃんとできたのは、夫が経営している眼鏡のセレクトショップ『纏オプティカル』がオープンしてから」

纏オプティカル おおがきなこ こはぜ珈琲

纏オプティカルは、こはぜ珈琲のご近所にあるお店。一人ひとりのお客さんとじっくり向き合い、本当に似合う眼鏡を一緒に選んでくれると評判です。きなこさんは、オーナーである旦那さんと一緒にスタッフとして働いています。メンテナンスなどにも対応しているので、お客さんとは長いお付き合いになるのだとか。

おおがきなこ こはぜ珈琲

店長さん:「僕の眼鏡も纏オプティカルのもの。きなこちゃんと旦那さんに選んでもらった候補を3つ、こはぜ珈琲に展示して、お客さんにどれがいいと思うか投票してもらいました。見事1位を獲ったのがこれ(笑)。普通に買うのもつまらないな、と思って……せっかくなら何かおもしろいことをしたいですよね」

きなこさんと同じように、かつては演劇に関わる仕事をしていたと言う店長さん。

おおがきなこ こはぜ珈琲

店長さん:「下北沢にはいろいろな思い出がありますよ。演劇の仕事をやめたときには、もう足を踏み入れることもないだろうなって思ったんですけどね。好きだった喫茶店の仕事をしたくて、こはぜ珈琲の前身であるお店にバイトとして入りました。当初は違う街の店舗で働いていたんですが、下北沢店に異動になり、気づいたら独立していました」

 イラスト展からはじまった「今日のてんちょと。」

そんなふたりの出会いはと言うと……

きなこさん:「どうして仲良くなったんだっけ?」

店長さん:「なんでだったかな」

きなこさん:「忘れちゃったね」

おおがきなこ こはぜ珈琲

そう言ってふたりは顔を見合わせます。店長さんの方が先に下北沢でお店を営んでいたとのことですが、その先が思い出せないようです。

きなこさん:「実はわたし、以前はぜんぜんコーヒーが飲めなくて。今は飲めるようになったんですけど。旦那のお使いでここにコーヒーを買いにきてて……それでだんだん話すようになって……」

おおがきなこ こはぜ珈琲

店長さん:「たぶん、お店のガラス窓に絵を描いてよって僕からお願いしたよね」

きなこさん:「あぁ、そうだ! 最初は纏オプティカルのガラス窓にイラストを描いていて、それを見た店長に『うちにもこういうの描いてよ』って言われたんだ!」

ガラス窓のイラストを通してはじまった店長さんときなこさんの交流。その後、きなこさんのイラスト展がこはぜ珈琲の前身のお店で開かれるようになります。Web漫画「今日のてんちょと。」が生まれるきっかけになったのは、2017年の展示「妄想女子カルタ展」でした。

おおがきなこ こはぜ珈琲

きなこさん:「わたしのイラストの原点は似顔絵。眼鏡を買ってくれたお客さんへのサービスとして、眼鏡ケースを入れる袋に似顔絵を描いたことからスタートしました。『妄想女子』たちにも全員モデルがいるんですが、似顔絵として姿形だけ借りて、名前や性格は完全フィクション。こはぜ珈琲に集まってくる人たちって設定で描いたんです。カルタだから、タイトルは〈あ〉から順番にね」

おおがきなこ こはぜ珈琲

店長さん:「でも、〈ら〉行がないんだよね」

きなこさん:「そう! なぜか展示の前日まで気づかなくて(笑)。『もうこれからは、ら行は使わない!』なんて強がりを言いながら展示がはじまりました」

妄想女子カルタ展で生み出された、50人近くの個性豊かなキャラクターたち。彼女たちこそが、「今日のてんちょと。」でお店に訪れる登場人物たちなのです。

きなこさん:「彼女たちが出てくる漫画だから、自然と舞台はこはぜ珈琲になる。お店の人がいないのは不自然だなということで、登場したキャラクターが『てんちょ』です」

おおがきなこ

おおがきなこさんの『今日のてんちょと。』Instagramより

後半では、「今日のてんちょと。」のストーリーがどのように生み出されているかや、ふたりから見た下北沢という街の印象について、さらに詳しく伺っていきます。

「今日のてんちょと。」
https://www.instagram.com/oogakinako/

漫画・イラスト提供:おおがきなこ TwitterInstagram

取材:ツチヤトモイ 写真:土田凌 編集:菊地飛鳥 企画構成:haletto編集部

こはぜ珈琲

東京都世田谷区北沢2-33-6 グリーンテラスビル 1F
営業時間:11:00-20:00
定休日:第2火曜
TEL:03-5738-9207
SNS:FacebookTwitter

纏オプティカル

東京都世田谷区北沢2-34-10
営業時間:11:00-20:00
定休日:水曜
TEL:03-3485-5115
Webサイト:
http://m.matoi.main.jp/

新潟県生まれ。週末は2時間散歩しないと気が済まない。ドラマを見ながらロケ地を確信しては、ひとりで楽しい気持ちになっています。他にも電車や駅、飛行機や空港、地図や路線図、おいしいものが好きです。

このコラムについて

ようこそ、わたしの街へ

生まれた街、暮らす街、通う街、帰る街。かつて住んでいた街や、いつか住んでみたい街。「街」はあなたの人生の舞台。街とあなたの関係が変われば、あなたの生き方も、きっと少し変わります。それは、単なる知人が友人に変わった時みたいに。気の合う新しい...

気になるコラム