優しい和菓子で心身にご褒美|OFFにする土曜日 第2話「和のかし 巡」編

デスクワークのお供にはチョコレート。これが習慣になったのはいつからだっけ。

ふと疑問を持ってから、このまま毎日チョコレートを食べ続ける自分をイメージしてちょっと怖くなった。身体のことを考えるなら、おやつはナッツやドライフルーツにするか、いっそのこと我慢したほうがいいのかもしれない……なんて、職場の先輩にぼやいていたとき、教えてもらった和菓子屋さんが「和のかし 巡」。添加物は一切使わず、白砂糖ではなく天然の植物から抽出したアガベシロップを使用するというこだわりのお店らしい。

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「代々木上原にあるからご近所だよ。週末に行ってみたら?」

久しぶりの予定のない休日。今夜のひとりディナーのために仕入れた野菜を冷蔵庫にしまいながら、先輩のそんな言葉を思い出した。スマートフォンで調べてみたら本当にご近所みたい。お散歩がてら足を運んでみることにしよう。

代々木上原駅から井ノ頭通りを渡り、少し歩くと目印の看板が。深いブラウンに爽やかなスカイブルーのロゴが涼しげで素敵。いざ、お店の中へ。

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店内の照明は明るすぎず落ち着いた雰囲気。奥にはイートインスペースもある。カウンターに置かれた和菓子は、それぞれシャンとした佇まいだ。最初に目に入ったのは、木箱に入った「福巡り」という大福だった。2 種類あって「なめらか餡」「つぶ餡」と書かれている。

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なめらか餡? こしあんじゃなくて? 首を傾げていると、カウンターの中から店員さんが声を掛けてくれた。

「福巡りに使っているあんこ、よかったら試食してみます?」

ぜひ! と元気よく答える。にっこりと綺麗な笑顔で返してくれた店員さんは、どうやら店長さんのよう。肌がきめ細やかで健康的な印象なのも、無添加の和菓子に秘密があるのかも。

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「どうぞ」

差し出されたのは「なめらか餡」。このお店オリジナルのあんこなのだとか。確かに、今まで口にしてきたこしあんとは様子が違う。口当たりはなめらかなのに、素材の豆の味がちゃんとする。

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「一般的なこしあんは、水で小豆を濾す工程が何度もあるんです。そうすると小豆の栄養素もどんどん削られてしまうから、薄皮もそのまま使いつつ、なめらかに仕上げたオリジナルあんこをつくりました」

「和のかし 巡」の根底にはマクロビオティックの考え方がある。「ひとつのものをまるごといただ
く」のは「一物全体(いちぶつぜんたい)」というマクロビ原則のひとつ。例えば、お米は精米せずに玄米で食べたり、根菜もよく洗って皮ごと食べたりする。

「だから、小豆からあんこをつくるときにも、皮もアクも捨てずにまるっといただくようにしたかったんです」

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カウンターの中では、鍋がことこと火にかけられている。お店のあんこは、すべて店長さん自ら炊いているのだと教えてもらった。加える甘みは、血糖値が上がりにくいと言われるアガベシロップでほんの少しだけ。素材が持つ甘みを引き出すことにもこだわっているのだと言う。

「どんなに身体のことを考えていたって、おいしくないお菓子じゃ意味がないでしょう? やっぱり、おいしいと感じてほしくて和菓子をつくっているから。でも、そのために添加物をたくさん使うのは違うかなって思っていて……」

巡には、アレルギーに悩む人も多く訪れるのだそう。

「普段は食べるものが制限されている方も『ここにくると、自分が食べたいものを選べてうれしい』と言ってくださるんです」

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多くの食品に含まれているという添加物や、一般的な白砂糖とアガベシロップの違い 。店長さんからいろいろなお話を聞いて、今まで、口にするものに対してあまりに無頓着だったなぁと反省する。

「堅苦しく考えなくてもいいんです。『食べるものをきちんと選ぶ』という視点を持つと、食べる楽しみはもっと豊かなものになりますよ」

店長さんの言うとおり、せっかく食べるのならおいしいものがいい。おいしくて、しかも身体にも優しい和菓子。忙しい毎日を頑張るわたしへのご褒美にぴったりだ。

さぁ、何を買おう。少し悩んで、なめらか餡の福巡りとコアントローの夏羊羹を選んだ。

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お会計のときにちらりと見えたのは「アイスキャンディー」の文字。小豆を炊くところから手づくりで、夏の人気商品なのだそう。きっと外はまだまだ暑い。ちょっとお行儀は悪いかもしれないけど、食べながら帰ろうかな。

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お店を出てすぐにアイスキャンディーをかじった。ゴロゴロと小豆が入っていて、よく噛まないと食べ進められない。でも噛めば噛むほど、じんわりやさしい甘みが口の中に広がる。

「健康とは、体内における血液の巡りがいいこと」

小豆の滋味を感じながら炎天下を歩く。なんだか、みるみる力が湧いてくるよう。わたしの中を巡る血は、食べるものでつくられる。そのことを忘れないように暮らしていきたいと思った。

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取材:ツチヤトモイ 編集:菊地飛鳥 企画構成:haletto編集部

写真:川瀬一絵
島根県出雲市出身。忘れっぽいことへの焦燥感から写真を撮り始め、些細な体感を収集するように撮影を続けている。
近所や訪れた先々で適当に散歩して道に迷うのが趣味。
http://yukaistudio.com/?cat=22

和のかし 巡

東京都渋谷区上原3-2-1
TEL:03-5738-8050
営業時間:10:30-18:00
定休日:月曜 ※祝日の場合は翌日休み
年末年始・GW・お盆 ※時期をずらして休み
Webサイト:
http://www.wa-meguri.com/

この特集について

OFFにする土曜日 ― 2018年8月号

背筋を伸ばして、凛として。そんな大人の女性が暮らしている街というイメージに憧れ、2年前に暮らしはじめた代々木上原。だんだん街になじんでいくのと同時に、仕事では責任あるポジションを任されるようになった。 平日は綱渡りのように慌ただしく...

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