アタシが選ぶ本と週末(10)「ネコを撮る」 著:岩合光昭

新刊書店「三崎堂書店」は「本と屯」のお向かいさん。
その家族経営の小さな書店に “ちゃー”と呼ばれている1匹の野良猫が居ついている。ちゃーは雨の日も風の日も三崎堂書店のお母さんを待っていて、開店と同時にお店の中に我が物顔で入っていく。ちゃーは“ソックス”という猫とつるんでいて、2匹で雑誌の上で眠っている姿はほんとうに愛らしく、よく観光客にパシャパシャ写真を撮られている。

ある日、魚屋さんから盗んだ巨大な鯖をくわえ、駆け抜けるちゃーとすれ違った。瞬間、私は踵を返してちゃーを尾行した。ちゃーは細い路地を風のように抜けていく。タタタタタタタタ……。私もそのあとを必死で追う。「ちゃー!待って!魚は取らないから!」と叫びながら、スマホのシャッターを必死で切る。お魚くわえたどら猫を追いかけながら、「私は今、リアルサザエさんだ」とニヤニヤする。路地裏の角を曲がると、ちゃーは人間が通れない細い道に逃げ込んでいた。

あぁ、残念。ちゃーの勝ちだ。写真はぶれていた。

猫写真といえば思い浮かぶのは、岩合光昭さん。猫を撮らせたら右に出るものはいない、動物を愛し、愛される写真家だ。そんな岩合さんの素晴らしい猫写真の技術を盗み見ることができる「ネコを撮る」という本がある。ネコへの配慮、ネコに愛される距離感や、面白いポーズを引き出すテクニックの数々……見ているだけで楽しい一冊である。

そこにはこんなことが書かれている。

よく「私はネコが好きなのに、ネコに嫌われる」という話を聞く。その前に、ちょっと考えて欲しい。「私はネコが好き」というのは、自分が主人公になっていないだろうか。

もしも、自分の何倍もある大きな動物があなたに向かって一直線に駆けてきたとしたら……。間違いなく恐怖を覚えるだろう。それと同様に、カメラを持ってまっすぐ進んでくるヒトも、ネコにとっては怖いものだ。

これは、先日の私じゃないか……。
私はちゃーではなく、自分のことしか考えていなかったと反省した。ごめんよ、ちゃー。

今週末、出かけた先で猫を探してみよう。くれぐれも猫の迷惑にならないように。
気持ち新たにそう思うのであった。

文と写真:三根かよこ

カラー新版 ネコを撮る

著:岩合光昭
出版:朝日新聞出版
URL:
https://amzn.to/2tSu9Hx

夫婦出版社『アタシ社』と申します。神奈川県・三浦市唯一の出版社であり、夫婦ふたりで本をつくっているのが特徴です。夫が編集者、妻がデザイナーという最小単位の布陣でせっせと本をつくっています。夫婦それぞれ編集長として雑誌も創刊しています。 言葉というのは不思議なもので、たった一節で人の人生を変える力を持っています。ですから、できる限り人の人生を、良い方に転がしていけるような本をつくれる生き方をしたいと思うのです。なんて、真面目な話はそこそこにして、ゆっくり本を眺めていってください。

このコラムについて

アタシが選ぶ本と週末〜三崎のちいさな出版社から〜

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