平日夜、「東京」に泊まる。出逢いに満ちたゲストハウス ― 入谷・鶯谷「toco.」

約一年前、2か月かけて世界一周の旅に出たことがあります。色んな宿に泊まるうち「ゲストハウス」の楽しさを知りました。普通のホテルよりも、交流することに価値が置かれているのがゲストハウス。さまざまな背景を持つ人たちが集まり、語り、寝食をともにする非日常的な空間です。時には訪れた街の印象を決めてしまうほど、印象的な思い出になりました。あまりに気に入って、日本橋のゲストハウスで働いていたこともあります。

そんな記憶から日が経とうとしていたある日、古民家を改装したというゲストハウス「toco.」を知り、久しぶりにあの非日常を味わおうと思い立ちました。
帰ろうと思えば帰れるのにあえて「東京」で泊まるのは、なんだかちょっとイケないことをしているような、わくわくした気持ちです。

駅から数分歩くだけで、繁華街の喧騒から遠ざかります。根岸方面に歩いておよそ8分。人通りもまばらな住宅街に「toco.」はあります。ガラスのドアからているやさしい光。訪れた時はちょうどバータイム性別も年代も、おそらく国籍もバラバラな56人がいました。

入谷・鶯谷のゲストハウス「toco.」の外観

ここは別棟のリビング&バーで、宿泊施設はその奥の一軒家です。築90年以上の古民家を改築しているので、廊下を歩くたびに「キュッキュッ」と音がします。掃除が行き届いていて、大切につくられた空間なのだなと感じました。

庭には「下谷坂本の富士塚」という高さ約5メートル、直径約16メートルの塚があります。
1828年築造と考えられているので約200年の歴史ある史跡です。原形の保存状態がいいらしく、国の重要有形民俗文化財に指定されています。富士山浅間神社の祭神を勧請した一種の「神社」として祭られているのだそうです。

入谷・鶯谷のゲストハウス「toco.」のお庭

簡単に荷ほどきをしてから、宿泊者の集まるリビングに戻りました。
「どちらからいらしたんですか?」そんな何気ない声かけから、二人の男性と会話が始まります。長野から来た大学生、神奈川から来た会社員のお二人。一見、接点がなさそうに思えたけれど、ビールを片手に話すうち、旅好きという共通項が見つかりました。どの国が良かっただの、それぞれの旅の楽しみ方だの。ついつい話し込んでしまいます。こういう時間があるから、ゲストハウスは面白いんです。

そろそろ真夜中という頃、一人寝室に戻ります。私の寝床はドミトリーの上段。一人っ子だったから、子どもの頃は随分と二段ベットに憧れたよなぁなんて思いながら、眠りにつきました。

朝起きて、身支度を整えつつ、台所へ向かいます。すでに数人のゲストが朝ごはんを食べていたので、一緒のテーブルで私も朝ごはんを食べました。
「トメさんですよね?」なんと、かつて働いていたゲストハウスの常連さん。彼女も昨晩から泊まっていたそうです。ひとしきり近況報告をして「また、どこかで」と、旅人の常套句を言って別れました。

チェックアウトを済ませて街に出ると、よく晴れた爽やかな天気です。

駅までの帰り道、ラブホテル街にはもう、夜のような色気は漂っていません。清掃中なのでしょう、掃除機の音が響いていたり、ゴミを回収する人がいたり、妙な生活感にどこかホッとしました。

ゲストハウスに泊まって、街を歩いただけ。それだけなのに、寝ること・食べることといった日常の動作にも、普段は見過ごしてしまいそうな街の風景にも、ひとつひとつ意味があるように感じられます。日常の中にちょっとした“旅する感覚”を取り入れて、自分が生きる街を新鮮な視点で見つめなおすのも、いい時間だなと気づけた一泊二日の旅でした。

toco.(トコ)

東京都台東区下谷2-13-21
TEL:03-6458-1686
営業時間:
[LIVING & BAR]19:00-23:50(L.O.23:30)
※LIVING & BARは宿泊者以外も利用可
https://backpackersjapan.co.jp/toco/

金額など掲載の情報は、記事公開時点のものです。変更される場合がありますのでご利用の際は事前にご確認ください。

WRITER

ライター

気になるコラム