Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.29

「うそ」をつくのはいい事? 悪い事?

あらすじは……
様々な日常生活にあふれた「うそ」の場面が表現されています。体裁を守るためのうそ、自分の都合が悪いときにつくうそ、見栄をはるうそ、相手を驚かせるうそ、仮病、ドラマ、店先のサンプル、相手を喜ばせるためのうそ……。文章とともにダイナミックな絵を通して、様々な「うそ」を考えていく、読み手自身が「うそ」について考えを深めたくなる、哲学的な絵本です。

子どもの頃、大人たちからは「うそをついちゃいけない」と教えられました。本当に「うそ」はいけないのでしょうか。どんな時でも「うそ」っていけないことなのでしょうか。大人になると、本当のことを言わないほうがいい場面があったり、相手を守る「うそ」もあるということを知っていきます。

これは一緒に絵本カフェを経営している、むっちさんから聞いたお話です。
むっちさんのお母さまは3年前にガンで他界しました。闘病生活を続け、いよいよという状況でお母さまは「もう自分はダメなのかな」と言われたそうです。そこでむっちさんは「大丈夫、母さんはまだまだ元気に生きられるよ!」といったそうです。
もう余命間もないと、家族はもちろん、お母さま自身も分かっていたのについた「うそ」。医者からもう覚悟してくださいと言われていたのに、その「うそ」を聞いて体調を少し戻され、2ヶ月病院で過ごすことができたそうです。

むっちさんの「うそ」は、お母さまにとって「まだ生きられるんだ」という心の支えになり、生きる希望につながったのだと思います。

「うそ」をつくことそのものを、立派な事だとは思いません。でも、大切な誰かを守るためや、誰かが傷つかないように、誰かを想ってつく「うそ」は認めてもいいのではないでしょうか。
もちろん、つく人とつかれる人との関係にもよりますよね。信頼関係は「信じる」と「頼る」の言葉で成り立っています。むっちさんのお母さまの場合、信じて頼りにできる人がついた「うそ」だからこそ、受け入れようとしたのかもしれません。

人間は「うそ」をつく生き物です。「うそをついたことがない」そんな人はいません。その「うそ」が自分にとって、相手にとってどんな「うそ」なのか。そのことを考えることが大切なのだと思います。それが人間としての生き方なのだと思いました。
難しい哲学書を開いてみるのもいいですが、この絵本を通して、「うそ」はどんな意味でついているのか、日常にあふれた「うそ」を改めて考えることができる一冊だと思います。

うそ

作:中川ひろたか
絵:ミロコマチコ
出版:金の星社

福島県出身。元保育士、夢の国の住人を経て現在、高円寺にある「絵本カフェ ムッチーズカフェ」の店長として、オーナーむっちと共同経営中。絵本専門士として、店内に置く絵本を選書しています。口癖は「ご縁って大事よね~」。ゆでたまごが好き。お店のTwitter の中の人。

このコラムについて

Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】

絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。

こっちもおもしろい

気になるコラム