くらべてわかる、好きな味。試飲のできるコーヒー豆専門店― 町屋の「Blackhole Coffee Roaster」

社会人になってから、コーヒーを飲む機会が増えました。でも豆の種類や煎り方についての知識はまったくなく、豆を買うときもなんとなくお店のおすすめを選んでしまいます。だから自分がどんなコーヒーが好きなのかもわからないままです。そんなある日、試飲をしながらコーヒーを買えるお店があると知りました。今日は、自家焙煎スペシャルティコーヒー豆専門店「Blackhole Coffee Roaster」に向かいます。

東京メトロ千代田線「町屋」の駅から出ると、大きな交差点を横切る線路が目に入りました。都電荒川線(東京さくらトラム)です。

一両編成の電車がゆっくり向かったのは、都電荒川線の町屋駅。電車からたくさんの人が降りて、代わりに同じくらいの人が乗り込んでいきました。

電車もゆっくり「急がない街」。住宅街を歩いてお店へ

オフィス街からメトロを乗り換えてきたわたしは、電車や人々の歩く速度に少しとまどいます。さっきまで我先にと歩く人の波にもまれていたのに、ここではマイペースなゆっくりスピード。まるで「そんなに急いでどこに行くの?」と聞かれているような。

都電が走る沿道には、たくさんの草木が植わっています。このまま線路沿いを歩くのも楽しそうだけど、線路を渡って、民家がぎっしりと並ぶ住宅街へ。

細い道の両側には、所狭しと家が建っています。しばらく歩くと、家々の中にビビットな黄色の建物が見えてきました。本日の目的地「Blackhole Coffee Roaster」です。

2017年6月にオープンした「Blackhole Coffee Roaster」は、自家焙煎スペシャルティコーヒー豆の専門店。スペシャルティコーヒーとは「豆の生産地の特性を活かした素晴らしいコーヒー」のこと。大きく開かれた入り口にはコーヒー豆が並んでいて、試飲用のテーブルと椅子がありました。ガラス扉の奥には、コーヒーを焙煎する工場が見えます。

たくさん並ぶコーヒー豆の瓶には、ひとつひとつ名前や煎り方の説明が書いてあります。眺めていると「こんにちは」と店主の前田さんが出迎えてくれました。

ずっとその味を楽しむために。「お家で淹れた味」でえらぶ

このお店はカフェではなくコーヒー豆の販売店ですが、納得した上で購入してほしいという思いから、コーヒーの試飲をおこなっています。特別に焙煎する工場の中に入れていただきました。

工場の中には焙煎に使う器具がたくさんと、4人がけのテーブルがひとつ。コーヒーの淹れ方などのワークショップで使うスペースで、普段はお客さんは入れない場所です。部屋に入るとふわっと、強いコーヒーの香りがしました。

お湯の温度を見ながら火を止め、コーヒーをドリップ。前田さんが使う器具はどれも家庭で使うものばかりです。
前田さん:「お店の良い器具を使って淹れたコーヒーを気に入って買ってもらう。でも家で淹れたときに『何か違うなあ、おいしくない』と思われてしまうのが一番悲しいんです。だから、家庭で入れるときと同じような器具を使って淹れています」

おいしいコーヒーを家でも淹れられるように、Blackhole Coffee Roasterではコーヒーの淹れ方教室も開催しています。

試して実感する「なんとなく」じゃない選び方

コーヒーは好きだけど、お店へ行ってもなんとなくで買ってしまうこと、よくありますよね。

前田さん:「僕の役割は、お客さまのイメージするコーヒーに出来るだけ近いコーヒーを提供すること。お客さまが『コロンビアが好き』と話したとしても、その人のイメージする味が別の豆に近いときもあります。
うちのコーヒーは100gで800円以上と、通常より少し高め。試飲しながら、納得する味を選んでもらいたいんです」

わたしも好みを伝えて、前田さんに相談してみました。伝えたのは”酸味は抑えめで苦味がある、仕事の合間に飲んでホッとするコーヒー”という漠然とした好みだけ。

前田さん:「苦味や深みがお好みでしたら、この深煎りのインドネシアかケニアはどうでしょうか」

普段はコーヒーを飲み比べることはないので、2つのコーヒーの味がそれぞれまったく違うことに驚きました。こんなふうにゆっくり試しながら、自分の好きな味を探せるのはとても贅沢です。

「地球を液体にしたみたいな」との説明を受けて興味をそそられたインドネシアの豆は、思った以上にほっとする味わいで気に入りました。

前田さん:「ミルクにもよく合うので、よりホッとしたいときにはミルクを入れてもおいしいですよ」
その一言が決め手となり、今回はインドネシアの豆に決定。いつもなんとなく選んでいたコーヒーが、ちょっとだけ特別なものになった気がします。

「またぜひお越しください」と前田さんから受け取ったコーヒーを手に、帰り道はうきうきと心が躍ります。

手に下げた袋から、時折コーヒーのいい香り。その度にうれしい気持ちがこみ上げます。しあわせを感じると足取りが軽くなるのは本当なんだなあと、実感しながら住宅街を縫うような道を歩いて帰りました。
ゆっくり歩ける街でホッとするコーヒー豆を買った、ゆったりとしたおでかけでした。

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2018-06-11 15:41

Blackhole Coffee Roaster

東京都荒川区町屋4-31-11
TEL:03-6807-9767
営業時間:火・水・金:12:00 ~ 19:00 / 土・日:14:00 ~ 19:00
定休日:月・木

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