「何もしない」をくれる海。南房総に泊まる ― 白浜町「波音日和」

都心から約2時間、千葉駅からも約2時間。千葉市民の私にとって、南房総は「東京より遠い地」で、同じ県内とは思えないほどの距離感があります。

(こちらの記事は、2018年5月7日に公開した記事を2019年4月8日に更新いたしました)

南房総の道路

根本海岸のバス停のサイン

サーフィン好きのオーナーが営む、今日のお宿へ

幼い頃、家族で海水浴に行ったのを最後にすっかり足が遠のいていた場所。大人になってから行く房総の海は、どんな風に見えるだろう? さっそく千葉駅から高速バスに乗り、まずは館山駅へ。そこから路線バスに乗り換え、のんびり揺られること約30分。「根本海岸」駅で降りたのは私と友人の二人だけ。夏は海水浴場としてにぎわう場所も、今日は静かな波音が聞こえるばかり。

白浜町「波音日和」の看板

南房総「波音日和」の外観

海の目の前に立つ建物が、本日のお宿「波音日和」です。灰色の空と、まっすぐ伸びる道の途中にポツンと立つ姿は、どこか現実味がなくて不思議な感じがします。

白浜町「波音日和」のオーナー

オーナーは、「Tonman」の名前でアーティストとしても活動している松井俊さん。「波音日和」は、サーフィン好きの松井さんが会社の退職を機に開店した一棟貸しの宿泊施設です。店内には松井さんが描いた絵がギャラリーのようにして飾られていたり、房総で活動する作家さんの作品が置かれたりしています。

※2019年4月現在、カフェの営業は終了しました。現在は1階と2階合わせて最大8名泊まれる宿泊施設として営業しています。

目の前の海を堪能する屋根裏部屋

「波音日和」の1階の様子

ギャラリーだった2階を改装し、1日1組限定の宿泊をはじめたのは2年前。屋根裏部屋のように斜めに切り取られた室内と、窓から見える風景に息を呑みます。たっぷり日差しの差し込む窓の外には、真っ青な海。絶好の眺めが堪能できる窓際には小さなウッドデスクが備えられ、なんだか創作意欲が湧いてきそうです。

「波音日和」のベッドルーム

白浜町「波音日和」の窓からの眺め

松井さん:「一日この部屋から出てこないお客さんもいるんですよ。満月の夜には月の道が見られるし、新月の日には満天の星空が見られる日もあるんです」

南房総最南端の野島崎へ

野島崎灯台口のバス停のサイン

せっかくだからと、房総半島の最南端「野島崎」に向かいます。「波音日和」のある根本海岸停留所から「野島崎灯台口」まではバスで10分程度、それから歩くこと10分。食堂や土産屋さんの立ち並ぶバスのロータリーが見えてきます。

野島崎灯台近くのバスのロータリー

野島崎灯台の110段の階段を昇りきると、眼前には太平洋のパノラマ絶景が広がります。びゅうびゅうと風が吹き、トンビが下を飛んでいる視界に驚きます。
ゴツゴツした岩場の上には、「朝日と夕日の見える岬」と記された碑の横に、白いベンチ。空もベンチも灯台も、すべて白に包まれた神秘的な空間です。

野島崎灯台

野島崎のベンチ

「波音日和」での時間

少し肌寒くなって来たので、日が落ちる前に宿に戻り、松井さんとのおしゃべりに花を咲かせました。

会社員時代は、館山でサーフィンを楽しんでいた松井さん。南房総に足を運んでいるうちに、このエリアの人脈を通じて見つけたのが根本海岸でした。
今は穏やかな海も、冬は南房総の風物詩・強い西風の「大西」対策や台風被害で苦労したこと。季節によっては、店の前からイルカが見えたり、浜辺にウミガメが来たりすること……。街での暮らしについて、さまざまなできごとを話してくださいました。

松井さん:「根本海岸は、タカラガイの聖地としても人気ですね。その手のマニアの間では有名みたいで、タカラ探しに親子で泊まりに来るお客さんもいましたよ」

根本海岸の貝殻

明日の朝は私たちも貝拾いをしに行こう。雲の隙間からわずかに顔をのぞかせた夕日を見に、海岸に出ます。

根本海岸の夕日

太陽が地平線に沈むと、まもなく辺りは真っ暗に。「ブランケットを用意したので、自由に使ってください」と松井さんに言われ、夕食後は潮風と波音だけの宿で、ゆっくりとしたひととき。空を見上げると、月が煌々と輝いていました。
部屋に戻っても、ずっと波の音が聴こえる夜。いつのまにか眠りに落ちていました。

目が覚めたら、一面に広がる海

白浜町「波音日和」の窓からの眺め

朝7時。ブラインドをあげると、真っ青な海と空。どこかすごく遠い場所に来たような気がして、しばらく外の風景から目が離せません。

白浜町「波音日和」のテラス
「なんにもしたくなくなるね」「なんにもしないのがいいんだよ」と話していると、磯遊びに夢中になっていた子供時代とは違う、海の楽しみ方を見つけた気がします。

宿の前の浜辺で、懐かしい時間

チェックアウトの前に浜辺へでかけました。注意深く足元を見ていると、たくさんの貝殻や、キラリと光るシーグラスが落ちています。

根本海岸

根本海岸で集めたシーグラスや貝殻

根本海岸の一角には御神根(おがみね)と呼ばれる磯場があります。松井さんによると、関東大震災で地盤が隆起して出来たらしいとのこと。その神聖な名称から、パワースポットのような場所になっているようです。

白浜町の根本海岸の屏風岩

「屏風岩」と呼ばれる県指定の天然記念物もありました。変わった形の岩盤が連なり、屏風というよりは、恐竜や軍艦のようにも見えてきます。

白浜町の根本海岸の屏風岩

松井さんと白浜町めぐり

廃校をリノベーションした「シラハマ校舎」

旅の終わりは、松井さんの車で白浜町を案内していただきました。
はじめに向かったのは、廃校になった旧長尾小学校をリノベーションした「シラハマ校舎」。校舎内は、シェアオフィスやゲストルーム、ショップやカフェのある複合施設です。
細長い廊下や教室、黒板や水飲み場など、懐かしい面影を残しつつも、大人も楽しめるような空間に生まれ変わったコミュニティセンター。昼食は、校舎の一角にある「バルデルマル」というカフェ・レストランで、菜の花パスタをいただきました。

シラハマ校舎にあるカフェ・レストラン「バルデルマル」の店内

シラハマ校舎のカフェ・レストラン「バルデルマル」の菜の花パスタ

豆腐料理でほっこり「白浜豆腐工房」

次に向かったのは、「白浜豆腐工房」。築50年の平屋を改築した、お豆腐を中心に大豆料理をつくっているお店です。

「白浜豆腐工房」の外観

おからマフィンや、豆乳と寒天、トウキビをつかったプリン。赤ちゃんを抱えながら、お茶出しをしてくれた店主の奥さまは、店内で定期的にヨガ教室を開いているそうです。

「白浜豆腐工房」のデザート

周辺は民家と畑のあるのどかな雰囲気で、海の街のイメージとはまた異なった印象。一面に菜の花畑があったり、農作業をする人の姿が見えたり。

松井さん:「南房総といっても、街それぞれの性格みたいなものがあって、館山は地方都市、鴨川は個性的、千倉は都会的で、白浜は……田舎っぽいかなぁ」

南房総の畑の風景

南房総 白浜町の菜の花畑と海

何もしない、白浜での時間

日が暮れたら眠りについて、日が昇ったら目を覚ます。時間に追われる生活から離れて、自然のリズムに身を委ねる気持ちよさ。
白浜町は、どこへ行っても、どこかなつかしくて、ふと耳を澄ますと波音が聞こえる街です。あの街で見た風景は白昼夢だったのかな? と思いながら、帰りのバスに乗り込みました。

シーグラス

白浜町の橋と川の風景

白浜町 根本海岸の海と砂浜

波音日和

千葉県南房総市白浜町根本1626-4
TEL:0470-29-5148
http://www.namiotobiyori.com

野島崎灯台

千葉県南房総市白浜町白浜630
開館時間:9:00-16:00 (10月から4月)
9:00-16:30(5月から9月)
休館日:荒天時
料金:大人200円、子供無料

シラハマ校舎
カフェ・レストラン「バルデルマル」

千葉県南房総市白浜町滝口5185
TEL:0470-29-5848
営業時間:11:00-21:00(L.O 19:00)
定休日:火
https://www.awashirahama.com/

白浜豆腐工房

千葉県南房総市白浜町滝口1477
TEL:0470-29-7229
営業時間:11:00-16:00
定休日:不定休
http://shirahamatofu.wixsite.com/andoyoga/blank

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