Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.27

雨の時期が恋しくなる絵本

あらすじは……

主人公のおじさんは、とっても立派なかさを持っていました。おじさんは、でかけるときはいつもかさを持って出かけました。大事にしすぎて、かさが雨に濡れるのが嫌でかさをささず、雨が降っていたら知らない人のかさに入れてもらうほどでした。
ある日、子どもたちがかさをさして、かさに当たる雨音を楽しんでいました。
それを見たおじさんは子どもたちにつられて、かさを広げます。おじさんの心境の変化は一体どのようなものだったのでしょうか。

ただ雨をしのぐ物である、かさの存在がおじさんにとっては大きな意味をもっています。かさだったり、誰にでも、心の底から愛着を抱いている大切なものってありますよね。どんなものでも関係なく、大人でも子どもでも、「大切」と思う気持ちに変わりはないと思います。

しかしあまりにも大事にし過ぎると、本来の物の役割が果たせていない、使いこなせていないってことがありますよね。子どもだったら本の付録に付いているシールを大事にとっておいて、しまっていたのを忘れて月日がたってしまうという結果に……他の人から見たら価値のないような何でもないものでも、その人にとって大切なものがあります。

私は絵本カフェを経営していく中で、素敵な絵本の魅力を伝えたくて、お気に入りの絵本を見つけて店内に展示しています。お気に入りの絵本をみんなにも見ていただきたいという思いと、大事だからこそ自分だけの物としてしまっておきたい、という思いの葛藤があります。でも実際に読んでいただけなければ、その絵本の良さや、魅力を伝えることはできないと感じ、絵本の好きな方の目に留まってほしいという思いで飾っています。

大切なものでも、大切にしすぎて使わなければ、そのものの本当の魅力も知らないままですよね。「お気に入りの物」だから、使わずにとっておきたいその気持ちもよくわかります。しかし物を大切にするあまり,その本質を見失ってしまうことは残念な事です。本来の役割を果たしてこそ、そのものの価値があると感じています。思い切って使ってみたら楽しい事や新しい発見があったり、使ってこそだとわかるところもあると思います。

実際私も絵本を飾って、読んでの感想をお客さまから聞くことがあり、違う視点から絵本を読み新しい魅力を感じたことがあります。

あなたにとって大切なものは何ですか。「大切にしたい」「好きなもの」があるのは素敵な事だと思います。『物を大切におもう心』と、『物は使われてこそ生かされ大切にされている』ということ。その絶妙な線引きを自分の中で考えることによって『物』にも特別な愛着もわき、思い出にも残るのだと思います。

この「おじさんのかさ」はかさを大切にしながらも、本来の「もの」の本質の大切さを改めて考えた絵本。かさはかさらしく雨の日に使ってこそ魅力を感じたのでしょうね。

雨の日は憂鬱になりがちですが、かさをさして、雨の中を歩きたいような楽しい気持ちになる一冊です。

おじさんのかさ

作・絵:佐野洋子
出版:講談社

福島県出身。元保育士、夢の国の住人を経て現在、高円寺にある「絵本カフェ ムッチーズカフェ」の店長として、オーナーむっちと共同経営中。絵本専門士として、店内に置く絵本を選書しています。口癖は「ご縁って大事よね~」。ゆでたまごが好き。お店のTwitter の中の人。

このコラムについて

Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】

絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。

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