【ニャー その伍】ゴマ猫のヤスケ- 谷中ニャンダフルライフ

ここは古い街ですから、人でもない、なんでもないもんが、でるんです。





猫です。とまあ、猫も怪談が好きです。階段も好きです。谷中から少し東へ、根津から弥生へと向かうと、その昔、東大に招聘された外国人教師の寄宿舎に由来する、異人坂の上に出ます。ここからさらに、根津教会の方へ前足を進めると、お化け階段があるのです。ドロロ〜。

その名もお化け階段。僕ら猫もよいしょ、よっこらしょと下ります。下ったら? 登ります。でもあら不思議、なんだか段数が違うんです。お化けの仕業だと猫仲間で噂しています。

ぐん、ぐんぐんぐん!

お化け? それ自体、不思議もなんとも思いません。なんせ谷中は寺町ですし、お墓もいっぱい。谷中霊園なんてそりゃもうたくさん。三崎坂にある全生庵は、毎年お盆の時期に、落語家三遊亭圓朝の幽霊画コレクションも見られます。どんなに暑くても、涼しい夏を過ごせます。

散歩兼ねたパトロール、そして偵察は続きます。谷中は狭いが猫には広い、いや、ちょうどいいサイズの街です。坂が多いから動くたびに運動になります。

言問通りを進み、善光寺坂を登ります。上野桜木町の交差点、カヤバ珈琲の角を曲がって谷中霊園の方角へ進む、日展会館のちょっと手前の路地を曲がると、古民家を改築した、上野桜木あたりがあります。

やっぱりね、いると思ったんだよ、このあたりを住処とするゴマ猫のヤスケ。ほーんと、気持ち良さそうにいつも寝ているヤスケ。谷中猫一の眠りっぷりで猫っぷり! こういう時は、起こしちゃいけない。猫には猫のルールがあるのです。

 

* * *

 

谷中ニャンダフルライフ--。サビ猫のケン、ブチ猫のモー、トラ猫の小太郎、ヒゲ猫のチョビ、ハチワレ猫のトン吉、ゴマ猫のヤスケ。谷中、根津、千駄木 - 谷根千ならぬ、にゃねせんにはたくさんの仲間がいます。群れずに一匹、孤独を愛するその愛しい仲間たち。

この街は入り組んでいて、行き止まりも多く、人間にはきっと迷路チックかもしれません。特に外国人の観光客は最近ほんとうに増えました! でもね、街がどう変わろうとも、やっぱり谷中は猫の街だと、僕ら猫は思っています。

あ、サビ猫のケンだ!

<谷中ニャンダフルライフ-- 了>

ニャー そのⅥ(おまけ)】につづく。

写真:川瀬一絵
島根県出雲市出身。忘れっぽいことへの焦燥感から写真を撮り始め、些細な体感を収集するように撮影を続けている。
近所や訪れた先々で適当に散歩して道に迷うのが趣味。
http://yukaistudio.com/?cat=22

WRITER

この特集について

谷中ニャンダフルライフ ― 2018年4月特集

こんにちにゃ。気付けば猫になっていました。東京は東の里、谷中に住んでもう5年になります。この街は、西日暮里、上野桜木から、そして千駄木、根津から谷中へとかけて、文字通り「谷」になっていまして、僕はもう、そこの谷にハマってしまい、抜け出せず...

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