ゆるやかに地域と繋がる。古くて新しいコミュニティ ― 日野 古民家シェアハウス「ヒラヤマちべっと」

地域の繋がりが希薄になった現代。実際、私も隣に住んでいる人のことすらよく知りません。

そんな時代にあって、東京都日野市にある築150年の古民家が地域交流の拠点となっていると聞きました。「ヒラヤマちべっと」という一風変わった名前が付けられた古民家に、なぜ地元の人たちが集まるのでしょうか。気になって足を運んでみました。

降り立ったのは京王線の長沼駅。多摩川の支流である浅川を横切り、15分ほど歩くと「ヒラヤマちべっと」に辿り着きます。管理人の稲村行真さんが笑顔で出迎えてくれました。

稲村さん:「ヒラヤマちべっとは、シェアハウス兼イベントスペース。僕も住人のひとりです。古民家は障子を取っ払えばひとつの大きな空間になったり、縁側にいれば通りすがりの人たちと交流できたりと、すごく開放的な場所。僕が理想とする『寛容的な場所』をつくるにはぴったりだと思いました」

ヒラヤマちべっととして生まれ変わった古民家。もともとは、数世代に渡って住居として使われていたのだそう。3年前から空き家になっていたのを稲村さんが発見し、シェアハウスの管理人となって住みはじめたのが2017年4月のこと。現在は、1階の共有スペースをイベントスペースとして開放し、地域の人たちが楽しめるイベントを開催しています。

今回は、いくつかの定番イベントの中でも最も歴史がある「一品一灯の会」に参加させていただくことに。一品の食事とひとつの灯りを持ち寄ってはじまったこのイベント、今では日中にワークショップを行い、夜から宴会を開く2部制になっているのだとか。

この日のワークショップは、近隣の都立長沼公園の散策。地元のお散歩好きなシニアの方々と一緒に、都内とは思えない小高い山を登っていきます。

道中で軽食を食べたり、紙飛行機やシャボン玉で遊んだり。自然の中で童心に返って遊ぶと初対面同士でも会話が弾み、和やかな時間を楽しみました。

ヒラヤマちべっとへの帰路の途中、夕暮れどきの浅川沿いを歩きながら、稲村さんにお話を伺います。

学生時代に日本各地にある100軒以上の古民家を見て回り「古民家冒険家」を名乗るようになった稲村さん。「寛容的な場所」をつくりたいと思ったきっかけも、学生時代の経験にあるそうです。

稲村さん:「アルバイト先を30ヶ所以上も転々としたりして、自分に合ったコミュニティを見つける難しさを感じていました。僕のような少し世間からズレた人でも入れる寛容的なコミュニティをつくりたいと考え、ヒラヤマちべっとを立ち上げたんです」

日野という地域に惹かれたのも、この場所を活動の拠点にした理由のひとつ。

稲村さん:「日野は本当に自然豊かなところ。川沿いにある沼では魚釣りを楽しめますし、野鳥も多く訪れます。景色も雄大で、地元の人はこの辺りのことを、ヒマラヤ山脈のチベット高原のようだと言っているんですよ。地区の名前が『平山』ということもあり、ヒマラヤ山脈にかけて『ヒラヤマちべっと』と名付けました(笑)」

ヒラヤマちべっとに帰り着いて早々、稲村さんを筆頭に、参加者の皆さんがおにぎりをつくりはじめました。宴会でふるまわれるというこのおにぎり、海苔が不思議なかたちにカットされています。

稲村さん:「家の前にある門をかたどった『ヒラちべおにぎり』です」

日が落ちた頃、第2部の宴会から加わる親子連れの参加者が徐々に集まってきました。古民家の趣きもなんのその、子どもたちが元気に駆け回り、明るい声が飛び交います。

稲村さん:「日野は子育て世代が多い地域でもあるので、親子連れが参加しやすいイベントもたくさん開催しています。子どもがいると場の温度が高くなるような気がしていいですね。地域の人同士が交流しやすい空気も生んでくれていると感じます」

15人ほどが集まったところで、いよいよ乾杯!

順番に自己紹介をしたり、この日が誕生日だというお子さんにバースデーソングを歌ったりと、とっても賑やか。遅れてやってきた参加者もどんどん増えていきます。

あたたかな雰囲気の中、ふと思い出したのは、子どもの頃に過ごしたお正月。祖父母の家で親族がテーブルを囲み、近所の人たちもお酒を飲みにきていました。傍らで従兄弟とはしゃぎ回っていた私にとって、その光景は年に1度しか見ることのない、特別な非日常。でも、ヒラヤマちべっとに訪れる子どもたちにとっては、地域の人たちと繋がる暮らしは「日常」なんですね。

稲村さん:「毎日、職場と自宅を往復するだけだという人も多いと思います。それを続けていると人脈を広げるような出会いの機会もなく、価値観も凝り固まってしまいますよね。誰かと話したいと思ったとき、多様な価値観を持った人々が集まるコミュニティが地域に開かれていたら僕は嬉しい。今後も、各地にこういった場所をつくっていきたいです」

自らの居場所に悩んだ青年がつくったのは、誰もを受け入れる優しくゆるやかなコミュニティでした。

(写真:ogata)

ヒラヤマちべっと

東京都日野市西平山4-18-12

TEL:080-4118-5838

Webサイト:https://www.facebook.com/Hirayama.Tibet/

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