アタシが選ぶ本と週末(3)「手から、手へ」詩:池井昌樹

「手から手へ」

この本は、僭越ながら自身の結婚式のときに知人からいただいた本である。植田正治の写真は20代の頃から好きだった。モノクロームの世界に、「家族」というつながりがはっきりと、優しく写っている。おかっぱ頭の娘たちに、この時代特有のワンピース、シャツ、半ズボン。母は綺麗でコンパクトに髪を結い、息子はもちろん丸坊主。現代のファッションと一目瞭然なコントラストが、ひと目見ただけで懐かしさを覚えてしまう。
32ページというとても薄くて、数分で読める本の中に、「家族」のすべてが詰まっていた。自分が生まれてきた不思議さや、生きていく中で大切にしておくこと。ひらがなの文章は一見読みやすいように見えて、少し読みにくい。何度も目線を上から下に、右から左にしたくなる。右開きの本なので、右ページに文章、左ページに植田正治の写真と続く。ワンフレーズの詩が毎ページ毎ページ、胸に刺さる。

どんなにやさしいちちははも
おまえたちとは一緒に行けない
どこかへ
やがてはかえるのだから

本の帯にはこう書かれている。

ひとりで生きていくこと。それは父母から受け継いだ「やさしさ」をもって生き進めていくこと。本には不思議な力が宿っている。海の風を感じながら、アタシを見つける、見つめる本としてオススメしたい。本はいつでも読んでくれることを待っているし、必ずなにか気づきを与えてくれる。
たまにはゆっくり、言葉と写真の世界に浸って、ときに空を見上げて雲の形に目をやって。手元を見れば本がある。そんな時間を大切に、生きていきたい。

三崎

文と写真:ミネシンゴ

手から、手へ

詩:池井昌樹
写真:植田正治
企画と構成:山本純司
出版:集英社
URL:
http://amzn.to/2DRf3Ek

腰越・haletto houseを舞台にした5つのストーリー

2017年12月特集「そこへ、東京トランジット」では、5組それぞれのhaletto houseでの過ごし方をご紹介しています。あなたなら、どう過ごしますか。あなたらしいhouseを見つけてみてください。

https://haletto.jp/201712_halettohouse/

夫婦出版社『アタシ社』と申します。神奈川県・三浦市唯一の出版社であり、夫婦ふたりで本をつくっているのが特徴です。夫が編集者、妻がデザイナーという最小単位の布陣でせっせと本をつくっています。夫婦それぞれ編集長として雑誌も創刊しています。 言葉というのは不思議なもので、たった一節で人の人生を変える力を持っています。ですから、できる限り人の人生を、良い方に転がしていけるような本をつくれる生き方をしたいと思うのです。なんて、真面目な話はそこそこにして、ゆっくり本を眺めていってください。

このコラムについて

アタシが選ぶ本と週末〜三崎のちいさな出版社から〜

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