Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】Vol.21

何気ない日々の繰り返しに幸せを感じる

あらすじ…
「あさになったのでまどをあけますよ」という言葉の繰り返しとともに、山々のちいさな村や、たくさんの人々と車が行き交う都会、広大な海が望める家など、それぞれの場所で朝をむかえた子どもたち。あたらしい一日のはじまりに窓を開けた時の風景が、見開きページいっぱいに描かれています。絵はまるで額縁に入れた絵画のようで、窓を開ける人のいる風景、窓を開けた時に見える風景、朝の陽ざしにあたった街並みや自然が広がっています。ダイナミックなタッチでありながら、どの風景もいつか見たことがあるような、不思議な懐かしさも感じました。
実は、最初に読んだ時には「あたりまえじゃない。あさになったらまどをあけるなんて。作家さんは何を言いたいのだろう」と思っていました。しかし、そのバックグラウンドを知った時、この絵本のメッセージが伝わってきました。

この絵本は作者の荒井良二さんが東日本大震災の後にすぐ描かれた絵本です。震災後、絵本作家としての自分にできることは何かと模索された荒井さん。ご自身が被災地でワークッショップをしたり、被災者の方とお話したりする中で「毎日カーテンを開けることから一日が始まる」と実感したことが、この絵本を描くきっかけとなったそうです。
絵本の文章の中に
「あさになったので まどをあけますよ」「やまは やっぱり そこにいて きは やっぱり ここにいる だから ぼくは ここがすき」
という一文があります。
この文章にはっとしました。あの日、昨日まで「あたりまえ」にいた人たちや、物、風景が「あたりまえ」でなくなったということです。あたりまえであることの幸せ、窓の外に広がるあたりまえの風景。けれども、その日常のくりかえしの中にこそ、生きるよろこびがあることを気づかせてくれました。それぞれの場所で「新しい一日をむかえるため」に窓をあける子どもたち。今生きているあたりまえの毎日こそが本当の幸せだと、改めて気づかせてくれた絵本です。

バックグランドを聞いて、自分の今抱えている悩みがちっぽけなように感じました。なぜなら私はここに存在して「あさになったのでまどをあける」ことができます。「生きているのだから、何でも出来るんだよ。やれるだけやってみればいいじゃない!!」と後押ししてくれているようなメッセージも感じました。人生、この先何があるかわかりません。一日いちにちを大切にし、生きていることに感謝し、そしてなにより「自分のやりたいことをしていく」ことが大切なのだと実感しました。

少し勝手ですが、最後にこのコラムを読んでくださっている皆さまと、自分自身(笑)にこの絵本から感じたエールを…

今日はどんな一日でしたか
明日はまた新しい朝がやってきます
でもそれって「あたりまえ」だけど「あたりまえ」じゃない
「あたりまえ」であること
それってとっても幸せなこと
朝の光は、私たちに希望と喜びを与えてくれます
今日が残念な一日でも、また新しい一日が始まります
明けない夜はありません
そうしたら私たちは「あさになったので  まどをあけますよ」

あさになったので まどをあけますよ

作:荒井良二
出版:偕成社

福島県出身。元保育士、夢の国の住人を経て現在、高円寺にある「絵本カフェ ムッチーズカフェ」の店長として、オーナーむっちと共同経営中。絵本専門士として、店内に置く絵本を選書しています。口癖は「ご縁って大事よね~」。ゆでたまごが好き。お店のTwitter の中の人。

このコラムについて

Mucchi’s Caféの【おとなの絵本教室】

絵本にはいろいろな魅力があります。よく考えてみると怖い話から、ほんとに人生に役立つ良い話まで。忘れた気持ちを思い出さしてくれる、おとなのための絵本を紹介します。

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