100年先も残る文化を目指して。変わりゆく街を喫茶する ― 国分寺「胡桃堂 喫茶店」

ここ数年で、国分寺は随分と変わりました。小学校の頃に通った文房具屋さんも、中学校の頃にプリクラを撮っていたゲームセンターも、どこかに行ってしまいました。地上30階以上のタワーマンションと商業施設が建設される大規模開発で、子どもの頃から住んでいた街がどんどん変わっていきます。

そんなある日、「胡桃堂 喫茶店」というお店を見つけました。駅から歩いて7分、野球選手の清宮幸太郎くんの母校・早稲田実業高校のすぐ近く。商店街からは少し離れた場所にあります。いつの間にオープンしていたんだろう。レトロな外観の2階建ての喫茶店に、吸い寄せられるように入りました。

ドアを開けるとふわっと珈琲の香りが漂います。店の1階部分では、女性3人がお喋りに花を咲かせていたり、少しお年を召した男性が壁沿いにある本棚をじっと見つめていたり。直感的に「あ、好きな雰囲気」と思いました。

喫茶店だからコーヒー、という定番を裏切って、今日は煎茶を注文しました。国分寺で茶葉の栽培・加工・販売をしている「松本園」のお茶だったからです。ずっと住んでいたこの街に、茶畑があるなんて知らなかった (なんと松本園は創業60年!)。はじめての地元のお茶は、ほんのりとした甘さが際立つ上品な味でした。

あわせて、自家製の「シベリア」もいただきます。バターを使わずサラダ油と強力粉で仕上げたカステラのスポンジケーキに、あんことホイップを挟んだ一品。しつこくない甘さで、ぺろりと平らげてしまいました。

本棚に置いてある本の一部は、「読み継いでもらいたい本」だと店主の影山知明さんはいいます。地元に暮らす人から出品された本なのだそうです。その場で喫茶と一緒に楽しむこともできますし、もちろん購入することもできます。興味をそそられ、しばらく本棚を眺めることにしました。

ふと、並んでいる本の中に「喫茶の文体」と書かれた本を見つけました。影山さんをはじめ、お店に縁のある「純喫茶コレクション」の難波里奈さんや「OZmagazine」前編集長の古川誠さんなど15人が、「珈琲」や「喫茶店」をテーマに8~48ページの小説やエッセイを書いていて、その中からお客さんが好きなものを組み合わせて1冊の本をつくることができます。どんな順番にするかはもちろん、どんな装丁にするかも選べます。本好きにはたまらない趣向ですよね。今後も、テーマを徐々に増やしていく予定なんだそうです。

おいしい煎茶とシベリアを味わいながら、オリジナルの文学に浸る。とても贅沢な時間だなぁと感じました。

影山さん:「国分寺、広く言えば日本、日本文化、喫茶店文化などに根ざした仕事がしたいと思っています。50年先も、100年先も残るような、そんな仕事です」

喫茶店の店主として、この地に生まれ育った一人の大人として。ご自身が街に根ざした樹のような影山さんの言葉には、どっしりとした重みがありました。地元・松本園の煎茶も、昔懐かしいシベリアも、地元の人から預かった本も。文化として続けたい、未来に残していたいというメッセージは共通しています。

子どもの頃の記憶からどんどんかけ離れていく国分寺の街。なんだか思い出が消えていくような、寂しさすら感じていました。でも、今日出会った「胡桃堂 喫茶店」は、そんな目まぐるしく変わっていく街に根ざし、これから先、新しい文化やつながりを紡いでいこうとするお店です。 わたしの記憶にも、街の記憶にも残る場所であり続けてほしいなあ。街の変化を観察しながら通いたい、新しいお店を見つけたある日の午後でした。

胡桃堂 喫茶店

東京都国分寺市本町2-17-3

営業時間:日・月11時-18時/火・水・金・土曜11時-21時

定休日:木

Webサイト:
http://kurumido2017.jp

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