東京に「地元」をつくる。暮らしに溶けこむ商店街 ― 松陰神社前「カネサオーガニック味噌工房」

東京には、たくさんの選択肢があります。どこに住むか、どう暮らすのか、事情さえ許せば自由に選ぶことができます。何より「地元」特有の束縛感がない。でも、東京での時間が長くなるにつれて、「“ホーム”を感じられる場所がほしい」と思うようにもなりました。

松陰神社前

そんなことをぼんやり思っていたある日。「松陰神社前」という街を知りました。駅前に商店街があり、おしゃれなお店が多いとうわさに聞くことが増えたのです。

始点の三軒茶屋駅から3駅、トコトコと2両編成で走る東急世田谷線に乗って松陰神社前駅へ向かいます。地下にある東急田園都市線とは違い、世田谷線三軒茶屋駅は地上。赤いレンガが印象的な駅舎に、たくさんの人が向かっていきます。

三軒茶屋駅

料金は一律150円(2018年3月現在。ICカードは144円)。世田谷線のほとんどは無人駅で、バスのようにICカードリーダーにタッチして乗車します(切符の場合は駅や電車内にいる駅員さんが対応してくれます)。初めて乗ったときは東京の、しかも世田谷の真ん中に無人駅があることに驚きました。

一人用の席が縦に一列並ぶ電車に乗ったのも、世田谷線が初めてです。支払いの方法や座席の感じから、世田谷線は電車とバスのハイブリッドみたい。途中に信号待ちをしながら進む電車は、どこかローカルな感じです。電車のスピードが早すぎなかったり、線路と民家の距離が近かったりするからでしょうか。

いつの間にか電車は松陰神社前に到着し、降りる人に続きます。そのままホームの階段を降りて松陰神社通り商店街へ。線路は商店街を横切るように通っていて、松陰神社方面と世田谷通り方面と、どちらにもお店が続いています。

松陰神社前

駅名の由来にもなった松陰神社は、世田谷通りに背を向けて商店街を進んだ先にあります。1882年(明治15年)に作られた松陰神社は幕末の思想家・吉田松陰が眠る場所。教育者でもあった彼にちなみ、学問の神様へのお参りに多くの人が訪れます。緑色のおみくじが結ばれているようすは、若葉が茂る木のように見えます。ゆったりとお参りをして歩きます。

松陰神社

松陰神社

松陰神社

この街の商店街は、車がすれ違えるかどうかくらいの道幅。道の両端には、たくさんのお店が並んでいます。昭和ころからあったんだろうという店構えの八百屋さん、以前からあった建物を再利用しているお店、最近建てられたのだろうお店。そのどれもが街の雰囲気を壊すことなく、それぞれのお店を営んでいます。

「15時になったら再開します」そんな貼り紙をしているお店にも出会いました。この街は、お客さんを大事にしながらも、自分たちのペースを守っている印象があります。日曜日にはお休みを取るお店も多く、よくあるおでかけスポットに比べると、むしろ平日のほうが、商店街の雰囲気を楽しめるのかもしれません。

松陰神社前

商店街をぐるりと周ったら、今日の目的地へ。松陰神社側の通りにある「カネサオーガニック味噌工房」です。

カネサオーガニック

カネサオーガニック

2017年9月1日にオープンしたこの工房では、店主・安部美佐さんが宮城のご実家で生産している有機栽培米と有機大豆の加工品を販売しています。

お店に入ると、ふわっと木の香りを感じました。置いてある木樽や机の香りでしょうか。出迎えてくれるのは、机に並んだお味噌に甘酒、手作り味噌キット。壁にはお味噌や甘酒を使ったレシピがずらりと並んでいます。

カネサオーガニック

カネサオーガニック

お味噌は量り売りもしていて、プラスチック容器などを自宅から持っていくと、その容器に直接量ってもらうことができます。近所の方や常連さんには、ひとつの容器に複数の味噌を組み合わせて買う方もいるとのこと。

安部さん

安部さん:「合わせ味噌は自分で作ってもいいんですよ。お客さまの中には容器にハーフ&ハーフで入れて、ご自宅で好きな割合で合わせたお味噌汁をつくる方もいます」

なるほど。これまでパックに入っているお味噌を何も考えずにそのまま使っていたけど、自分好みの合わせ味噌とは、目から鱗です。

工房では月に1回ほど、味噌づくりワークショップを開催しています。味噌の作り方はもちろん、味噌に使われている材料や大豆の選び方、味噌の種類についても教えてもらえるそうです。

カネサオーガニック

カネサオーガニック

今回は糀を多めに使った「二倍糀味噌」と有機生味噌を購入。これまであまり意識していなかった味噌の違いを学ぶこと、「自分好みの味噌って何だろう」、そんなちょっとした疑問からも毎日の楽しみが増えそうです。

カネサオーガニック味噌工房を知ったのはInstagramの「#松陰神社前」がきっかけ。

Instagram

安部さん:「Instagramやってるお店多いですね。しかもみんなおもしろそうな取り組をしているから、純粋にいいなって思っていいね!してます」
お店同士が互いにいいね!やコメントを贈りあい、尊重しあっているようすを見ていると、街の温度が感じられます。わたし自身Instagramで見ているうちに、お店や街に親しみを感じていることに気づきました。

 

お料理としての「発酵」はよく聞きますが、農業での土作りでも発酵技術が活かされています。 宮城県のカネサでは、今日「ぼかし」と呼ばれる有機肥料を作っています! 左上からスタートして、①米ぬか②菜種カス③お醤油の様にみえるのは糖蜜・EM菌・水の混合液。中段左の写真はそれらを混ぜている様子。全部混ぜ合わせたら袋につめて・・・空気を抜いて一ヶ月常温で発酵させます。以上が一連の「ぼかし」作りの工程です。 3月末からいよいよお米の苗の種蒔きが始まりますが、それまでの間このような農作業を日々行っています。 田ほりの時期なのですが雨が続いて中々進まず困っています・・・晴れますように! #有機農業 #有機肥料 #宮城県

カネサオーガニック味噌工房さん(@kanesa.organic)がシェアした投稿 –

東京で気になる街を見つけたらSNSでつながってみると、自分の波長に合う街を見つけられるのかもしれません。

毎日使うお味噌を買って、無くなったら容器を持って詰めてもらいに出かける、を繰りかえす。自分の暮らしの中に街が溶けこんでくる。そこに住んでいなくても、地元のように親しみを持てる街に出会うことができるのだと感じました。

松陰神社前

松陰神社前

松陰神社前

今度は右側から、世田谷線がトコトコやってきます。またお味噌がなくなったときに、遊びにこよう。次はあのカフェにも寄りたいな。パン屋さんにも行きたいな。そんなことを考えながら、帰りの電車に乗り込みました。

カネサオーガニック味噌工房

営業時間:10:00-19:00

定休日:不定休 店頭/Facebookにて都度お知らせ

アクセス:世田谷線「松陰神社前」駅より徒歩2分

Webサイト:
https://www.kanesaorganic.jp/

インスタグラムアカウント:
https://www.instagram.com/kanesa.organic/

Facebookページ:
https://www.facebook.com/kanesaorganic/

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