赤ちょうちんの文具屋? ― 市川市八幡の「ぷんぷく堂」

千葉県市川市にある、夜だけ開く文具店「ぷんぷく堂」。

京成八幡駅から、千葉方面の鬼越駅へ向かう線路沿いに歩くこと8分。途中、葛飾八幡宮を通り過ぎ、民家の並ぶ道をまっすぐ進むと、黒い屋根と赤いドアが目印、「ぷんぷく堂」です。

ぷんぷく1

夕方17時になると、トレードマークの赤ちょうちんに明かりがともり、まるで居酒屋のような外観に様変わり。

ドアを開けると、5畳ほどの小さな敷地に、所狭しと並べられたカラフルな文房具。ファンシー柄のレトロ鉛筆、小学生の頃に筆箱に入れていたキラキラ定規、サクラカラーや牛乳石鹸の包装紙などなど、どれも「懐かしい!」と言えるようなものばかり。「商品の中には、現行の品もあるんですよ」と、声をかけてくれたのは、店主の櫻井有紀さん。町の文具店に繰り出し、昭和文具を発掘したり、自らオリジナル文房具を考案して製作販売したりと、こだわりたっぷりのお店づくりをしています。

店内1

櫻井さん

櫻井さん:「文房具は日用品。だから、貴重だからといって家に飾ってもらうのではなく、どんどん使ってもらいたいです。廃番のものやデッドストック品もあります」

鉛筆も、一本80円からバラ売りしてます。

櫻井さん:「パッケージに入っていると、手に持ってみたときの感触がわからないから、一本一本触れられるようにしています」

鉛筆

もともと、お店を開く前から昭和のレトロ鉛筆を収集していた櫻井さん。品揃えには特にこだわりがあるようで、三菱鉛筆やトンボ鉛筆の他にも、アメリカやドイツ産の外国鉛筆も取り揃えています。左利きの筆者にオススメしてくれたのは、ドイツのステッドラー社が出している「WOPEX」。

櫻井さん:「こちらの鉛筆は、芯が通常の約2倍圧縮されているから、芯の粉が出にくくて、紙も汚れにくいんです。手の甲も黒くならずに、左利きの方にも使いやすいと思いますよ」

また、櫻井さんが集めている昭和30~50年代の手動式鉛筆削り機は、自由に試せるようになっています。中身が見えるカプセル型の鉛筆削り機は、内部構造が見える斬新なデザインで、思わず「すごい!」と感嘆の声をあげてしまいます。

鉛筆削り

そして、風変わりな商品名が印象的な「ぷんぷく堂」のオリジナル文具も! 『過保護袋』『スキマメモ』『半分鉛筆』『虹色便箋』『虹色封筒』など……その中でも、特に気になったのが『競馬新聞の紙で作ったレポート用紙』。その名の通り、競馬新聞の紙を用いたメモ用紙です。

お試し

櫻井さん:「なにかストーリーのある紙を使って文具を作りたいと思ったのがきっかけです。『競馬』というと、あまり良くないイメージがあるかもしれませんが、珍しいものを好む紙好きの方たちには、グッとくるに違いないと思いました」

文具マニアの方からは、「万年筆との相性も良い」とお墨付きをもらっているこちらのレポート用紙。近所に中山競馬場があることから、たまに競馬好きの方が購入していくこともあるようです。

実は「ぷんぷく堂」、商品タグにもこだわりがあります。

櫻井さん:「観察していると、お客さんはまず値段を確認しているんです。なので、裏面の商品タグに品物のエピソードや使い方を記載しました」

一つ一つの文具に込められた物語を目にすると、一気に愛着が湧いてくるようです。

店内の狭さが、自然と櫻井さんとのコミュニケーションを生み出し、気になったものが見つかれば、すぐに聞いてみることができます。

ガラスの棚

櫻井さん:「自分の好きな文具を発掘してお店に出しているので、なぜその商品を選んだのか、どこがオススメなのか説明できるのも自分だけなんです。なので、代理は置かずに、必ず店主が店番をするのがポリシー。SNSを見てお店に来てくださるお客様も多く、『中の人に会いに来た』という期待にも応えられるようにしています。お店も広くないので、『これ何?』と商品について聞いてもらえます。売り手と買い手が面と向かって話せる距離感が、大型の量販店と違う良さですね」

この日、引き出しから発見したのは、ハードカバー仕様の和紙一筆箋。「かわいいなぁ」と見入っていると、嬉しそうに櫻井さんが説明をしてくれました。

和紙

櫻井さん:「その一筆箋の柄は、着物の小紋に使われている日本の伝統模様に、現代のアレンジを加えてるデザインなんですよ。それは、伝統模様の『壺』を惑星に見立てて宇宙っぽくしているの。ハードカバーだからカバンに入れて携帯しても良いし、縦書きと横書き、どちらにも使えるからちょっとしたメモ書きにもオススメです」

さっそく購入した文具を手に、近所で手紙の書けるカフェを櫻井さんに尋ねてみたところ、JR本八幡駅の近くにある『cafe螢明舎』を紹介してもらいました。

紅茶

櫻井さん:「市川には、歩いていると小さな変わったお店がたくさんあります。それに、冗談で東京都市川市というほど、都心までも近くてすごく便利。次回来るときはゆっくり歩きながら、街中を散策してみてくださいね」

順喫茶

ビルの二階にある螢明舎は、橙色の照明と木製のテーブル、心地良い音楽の流れる静かで落ち着いたカフェ。自分の時間を過ごすにはぴったりの場所で、「オ・レ・グラッセ」と「ガトーショコラ」を注文しました。
手紙の受取人に似合いそうな色を思い浮かべながら、封筒と便箋をそれぞれ選びます。とりとめのない内容を書き綴っていると、すぐに一枚、二枚とペンが進みます。ハードカバーの一筆箋は、さっそくメモ帳代わりに使ってみました。

ぷんぷく3

あの赤ちょうちんの明かりがすでに懐かしくなりつつも、櫻井さんの笑顔を思い出しては「また会いに行こう」と思える場所が増えた一日でした。

ぷんぷく堂

千葉県市川市八幡5-6-29
営業時間:月火木金土17:00-22:00 第1日曜/祝日12:00-19:00
http://www.punpukudo.jp/

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