「やりたいこと」を「やったこと」へ。背中を押してくれるコーヒー牛乳 ― 西八王子「フィルタープレイス」

一風変わったカフェができたという情報を知り、学生時代を過ごした西八王子駅に13年ぶりに降り立ちました。

当時の私は、高校を卒業していざ東京へと意気込んでいる大学生。都内とはいえ、高尾山まで二駅で行けてしまう西八王子の街並みは、馴染んだ故郷とあまり変わらないのんびりとした空気でした。期待が外れたような、それでいて安心したような気持ちで荷解き作業をしていたことを思い出します。

西八大路

駅周りにはチェーンの居酒屋やレストランが並び、かつてアルバイトをしていた喫茶店は24時間営業のフィットネスクラブに、学生の味方だった100円ラーメンのお店も閉店。前日降り積もった雪のせいもあって、まるで知らない街のように感じられました。

そのカフェは駅の北口から10分程度歩いた住宅街の中にあります。大きくペーパーフィルターのロゴマークが描かれた暖簾をくぐって中に入ると、思いのほか若い店主さんが顔を出しました。

外観

昨年2月、実家近くのこの場所を借りて、お店を立ち上げた安部隼人さん。それまでは6年間で6回の転職を繰り返したという波乱万丈な経歴の持ち主です。

安部さん:「引っ越し業者、ホテルマン、アパレル販売員、藍染職人……さまざまな仕事を経験しました。どの仕事にも人との出会いがあって、面白さと学びがありましたが、しっくりくるものがなく『仕事とは何か』を考える日々でした」

いい写真

そこで、大の牛乳好きという安部さんは、「珈琲牛乳」をメインにしたカフェをオープン。お店の内装も知人や友人の手伝いがあり、少しずつ形になっていったそうです。

安部さん:「壁塗りやインテリア選びから、お店に置いているお酒の選定など、自分にできないことは『できない』と恥じずに口に出すようにしています。そうすると、『できるよ』という人が集まって力を貸してくれるようになったんです。そうしてこのお店の今があるんですよ」

店内

自身の「やってみたい」を「やってみた」にすべく始めたカフェは、いつしかお客さんにとっての「やってみたい」を応援する場所に変わったと安部さんは言います。

安部さん:「コーヒーをきっかけに来店したお客さん同士で、本を出版する企画を立てたり、新しい作品を作ってみたり、イベントを開催したりと、人と人とが出会い、企画やアイディアが生まれる場所になっています」

店内のショーケースには、一編の詩が綴られたハーバリウムが陳列されていました。読書会を主催しているお客さんとドライフラワー作家さんが、この場所で出会い、生まれたコラボ商品です。

鏡越し

「長居すること前提」で提供されるドリンク類は、どれも大きなマグカップに入ってきます。定番の「西八珈琲牛乳(700円)」を注文すると、ホットミルクとコーヒーが別のカップで、さらにお猪口も付いてきました。

コーヒー2

安部さん:「まずはミルクだけ飲んで、次に好きなタイミングで割って珈琲牛乳にしてみてください。お猪口にはコーヒーを入れて合間に飲むと、口のなかがスッキリします。まぁ、自由に飲んでみてください」

人と人が出会い、何かが生まれるきっかけを作っているのは他でもない安部さんの人柄だと感じます。人脈が広く、おしゃべり好きで、好奇心にあふれる店主が営むカフェだからこそ、訪れる人の小さな夢や好奇心が刺激され「やってみようかな」という気持ちに変えてくれるのかもしれません。

飲んでる

室内

2月25日で1周年を迎えたフィルタープレイスは、まだまだリニューアル途中。内装やメニューなど、その時々のアイディアと人とのつながりで、姿を変えていきます。

私の中の「やってみたい」を考えながらお店を後にして、近くを流れる南浅川の土手まで歩いてみました。慣れ親しんだ街で知らないお店や景色に出会うのは、今までの思い出をキラキラと新鮮に上書きしてくれます。「好き」を形にしている安部さんの姿を見て、西八王子がより一層伸び伸びと自由な街に感じられた帰り道でした。

川

フィルタープレイス

東京都八王子市千人町2丁目5−3
TEL:042-673-4320
営業時間:日月火曜12:00-19:00、木金土曜14:00-22:00
定休日:水曜日
http://filter-place.com/

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