vol.05 川崎の友、「エンちゃん」

先日、ちょっと用事があって、川崎駅に降りた。

川崎に来たのはいつ以来だろう。東京に出てきたころ付き合っていた人と、一度だけ「ラ チッタデッラ」に買い物に来たのが最後だから、たぶん7年ぶり? まだ上京したばかりのわたしにとって川崎は、ちょっと怖い印象だった。周辺の建物の威圧感と人の波が容赦なく襲いかかってきて、「こんな場所はしばらくいいや・・・・・・」と思った記憶がある。

今回向かったのは、駅から歩いて8分くらいのところにある、日進町という街だ。この街には、簡易宿所が所狭しと並んでいる。かつて京浜工業地帯で働いていた労働者が格安で宿泊し、翌日朝早くからまた働きに出て行く、そんな歴史ある街だ。

今日の用事は、かつて工場だった場所をリニューアルし、シェアハウス・シェアオフィスとして生まれ変わらせる佐藤さん。来月初旬にオープン予定のシェアハウス「unico」の壁塗りを手伝いに来たのだ。近い将来シェアハウスとなる場所へ案内されたが、数十室はあろうかという部屋はまだまだすっからかん。壁も板がむき出しのままだった。

さて、こんな素人のわたしで恐縮ではあるが、いざ、壁塗りを! と思ったそのとき、「今日一緒にやってもらう、エンちゃん」と紹介された女の子がいた。

「よろしくお願いします」と小さく微笑むエンちゃんは、台湾人の女の子。27歳。併設されている倉庫をリノベーションしてつくられた、多目的施設の運営や企画をやっているらしい。笑顔がとっても素敵な女の子だった。

「人見知らない」わたしは、手を動かしながら、エンちゃんにたくさん質問した。

「いつごろ日本へ来たの?」
「なんで日本に来たの?」
「どうしてこの仕事に出会ったの?」

エンちゃんは、ひとつひとつの質問に丁寧に答えてくれた。本当に流暢な日本語で驚いた。母国以外の場所で働く、というのはとてつもない努力があったのだろう。

作業をしながら、ときに集中して無言になりながら、また思い出したかのようにどちらかが質問をしたりして、わたしたちはすっかり仲良くなった。

17時過ぎに作業を終えて、facebookのアカウントを交換。
「4月のはじめに、大きなお祭りがこのあたりであるんです。よかったら来て下さい!」と、目をキラキラさせて、教えてくれた。
「うん、きっとくるね」といって、その日は別れた。

帰り道、川崎駅へ向かう足取りはとても軽く、なんだか一気にこの街が大好きになってしまった。わたしはエンちゃんに会いたくて、きっとまた川崎に来るだろう。どこかの街を好きになるきっかけは、友とのささやかな出会いであることだってある。新しい街と出会うきっかけを、知ることができた。

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仙台生まれ。好奇心旺盛。週末、街歩きしながら外でビールを飲むことに至福を感じる。好きな街の種類はこじんまりした居酒屋がある場所。口癖は「なんとかなるさー」。最近、山ごはんに興味津々。

このコラムについて

【スナック あさこ】編集長の徒然日記

haletto三宅朝子編集長が日々思う、暮らし方や街歩きのための街の見方、住み方などをエッセイとして綴ります。よもやま話から人情話、噂や、偶然見つけた教えたくなるあんなことまで、世間を取り巻く事柄について、halettoな視点で読み解きま...

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