【scene 04 凜とした朝 ― Tokyo Trip 冬の旅2018】

翌朝の五時。寝静まったペンションからそっと抜け出して、歩いて三十分ほどの場所にある砂浜に向かう。

昨日、飯岡灯台で海に沈んでいくのを見送った太陽が、今度は海から顔を出す。そんな光景が見たくて、吐く息も白く、歩みを進めた。ニット帽にマフラー、あたたかい手袋もはめて。

九十九里浜

砂浜に到着。九十九里浜の日の出予定時刻までは、あと二十分。目の前の九十九里浜は左右にどこまでも長く伸び、視線を向ける方角によって、違う光景が広がっていた。

西の空は、まだ夜。薄暗い視界の中、寄せては返す波の音に合わせ、鈍い光が水面に反射する。夜の海は、こちらを飲み込もうとする巨大な生き物のようで少し怖い。そして東の空はうっすら明るくなりはじめていた。まるで夜と朝の狭間に立っているみたいだ。そう思った。

海

西から東へ、夜から朝へ。グラデーションを描く空を覆う雲のベール。

海

雲の間から地上へと注ぐ太陽の光はほんのりとあたたかい。視界が明るくなっていくにつれて、曖昧だった海と砂浜との境界がはっきりしていく。

九十九里浜

空は、青とも水色とも、灰色ともつかない色をしていた。どこか懐かしいような気もするし、はじめて見るような気もする不思議な色合い。そのところどころに、ぼんやりとオレンジ色がにじんで、溶け込んでいく。

優しい夜明けだった。太陽の光がなくては、人は生きられないことを実感する冬の朝。
遠くから、キーンと耳を刺すヒコーキの音が、波の音に重なる。

飛行機

美しく、今日がはじまろうとしている。

写真:川瀬一絵
島根県出雲市出身。忘れっぽいことへの焦燥感から写真を撮り始め、些細な体感を収集するように撮影を続けている。
近所や訪れた先々で適当に散歩して道に迷うのが趣味。
http://yukaistudio.com/?cat=22

九十九里海岸の日の出時間

1月:6:50前後/2月:6:30前後/3月:5:50前後/4月:5:10前後/5月:4:40前後/6月:4:20前後/7月:4:40前後/8月:5:00前後/9月:5:20前後/10月:5:50前後/11月:6:20前後/12月:6:40前後

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