【scene 03 月を見る夜 ― Tokyo Trip 冬の旅2018】

せっかくの一人旅、だから知らない宿に泊まりたいと思った、それはインターネットで見つけた「ハッピーペンション」。

ハッピーペンション

冬の庭の奥に佇むカナダ風の建物。玄関を開けると……「わおっ!」。中から勢いよく何かが飛び出してきた。すみません、と言いながら現れたオーナーが「何か」を追い、抱きかかえる。

それは、あどけない表情の猫だった。

猫

猫

名前は、「九十九」と書いて「つくも」。まだ1歳半の女の子だ。小さな身体に満ちあふれるパワーと無邪気さに、私は一瞬にして骨抜きにされてしまった。

チェックインを済ませたら、ひとときの住みかとなる別棟コテージへ。一棟まるごとひとりじめという特別感に胸が高鳴る。

建物の中をあれこれ探索していると、備えつけの電話が鳴った。夕食の準備ができたらしい。

猫

夕食

本館の食堂に赴くと、食欲を刺激するおいしそうなにおい。オーナー自慢の洋食も、この旅の楽しみのひとつ。

魚料理、肉料理、グラタンと手づくりの味を堪能していたら、つくもにデザートをねだられた。猫じゃらしでしばし遊んでから、コテージに戻ることにする。今日は晴れていたからきっと星が綺麗ですよ、とオーナー。

コテージ

外に出ると、頬を刺す冷気と色濃い闇に包まれた。

実は、寒いのも、暗いのも苦手だ。でも、ここの空気は凛と澄みきっている。闇の向こう側には、生き物の気配を感じる。なんでだろう、寒さにも、暗さにも何か温もりが通っていて、不思議と心地良かった。

夜空

夜に全身を委ねるような気分で空を見上げる。オリオン座。赤く光るベテルギウス。あれは確か、冬の大三角。

夜空をしばらく見ていると目が慣れて、見えていなかった星もだんだん見えてきますよ、というオーナーの言葉を思い出した。

闇に目を凝らす。次第にぼやりと浮かび上がるのは、雲か、無数の星が集まった星雲か。

私はそのまま、夜空を見上げ続けた。

ハッピーペンション

写真:川瀬一絵
島根県出雲市出身。忘れっぽいことへの焦燥感から写真を撮り始め、些細な体感を収集するように撮影を続けている。
近所や訪れた先々で適当に散歩して道に迷うのが趣味。
http://yukaistudio.com/?cat=22

ハッピーペンション九十九里

本館と別棟コテージからなる人気のペンション。広々とした庭には豊かな自然が残り、その隣にはテニスコートも。九十九里浜でマリンスポーツを楽しむ常連客も多く訪れる。24時間入浴可能な人工温泉も嬉しい。
千葉県山武郡横芝光町木戸8405-10
TEL:0479-84-2482
定休日:年中無休
アクセス:JR横芝駅からタクシーで10分、または車で横芝光ICから国道126号線経由で10分

http://www.happy-pension.com/

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この特集について

Tokyo Trip 冬の旅2018 ― 2018年1月特集

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