【scene 02 オレンジの向こう ― Tokyo Trip 冬の旅2018】

九十九里浜に行こうと思った時、それなら、飯岡灯台にも行こうと思った。九十九里浜は犬吠埼灯台も有名だけれど、夕日を見るなら飯岡灯台だと同僚から聞いたことがある。
同僚いわく、岩井俊二監督の「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」の舞台でもあるらしい。

銚子駅周辺でのんびりしすぎて、気づくと、もうだいぶ日が傾いていた。タクシーに乗り込み、夕日を追う。東京で見るよりも、ずっと大きい気がする太陽。すると、

九十九里浜

灯台で私を待ち受けていたのは、群青に変化していこうとする空の青と海の青の狭間に、オレンジ色が溶け込む世界だった。

太陽は、ハッとするほど鮮やかに燃えている。目が離せなくて、じっと見つめる。みるみるうちに、地平線に吸い込まれていく激しい光。

九十九里浜

風はなく、雲は一帯に留まり続けている。天へと伸びる階段のような雲が、不思議な浮遊感を生み出していた。

太陽が、完全に海に沈むのを見届けてから展望台に登る。展望台から見下ろす飯岡漁港、どこまでも長く伸びる九十九里浜のパノラマ。地平線はゆるやかに弧を描き、地球が丸いことを実感する。

展望台にはカメラを構える人もちらほら。聞けば、飯岡灯台の絶景の真髄は夜景にあるらしい。漁港に戻る船が灯りで航路を描く、そんなベストショットを狙っているのだと言う。

飯岡灯台

群青から、夜の闇へ。漁港の西側に広がる街に、ぽつぽつと灯っていく光。美しい夜景のことを、宝石箱のようだと形容する人がいた。

鮮やかなオレンジ色を目の奥に焼きつけて、今日という日が終わっていく。

写真:川瀬一絵
島根県出雲市出身。忘れっぽいことへの焦燥感から写真を撮り始め、些細な体感を収集するように撮影を続けている。
近所や訪れた先々で適当に散歩して道に迷うのが趣味。
http://yukaistudio.com/?cat=22

飯岡灯台

房総半島の東部から太平洋を見下ろす小型灯台。屏風ヶ浦の西端、刑部岬の上永井公園内に位置している。1956年に稼働開始。2001年に展望台が設置された。刑部岬からの景観は「日本の夕陽百選」「日本の夜景百選」「関東の富士見百景」などに選ばれている。

千葉県旭市上永井1309-1
アクセス:JR旭駅から千葉交通バス「双葉町」行に乗車25分「灯台入口」下車徒歩10分、またはJR飯岡駅からタクシーで20分、車で横芝光ICより国道126号線経由で50分

映画「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」

1993年にテレビドラマとして放送された岩井俊二監督の出世作。その後、1995年に映画として劇場公開された。物語の舞台は旧飯岡町(現在の旭市)。飯岡灯台は、作品中でも重要な役割を持つ。2017年にドラマ・映画を原作としたアニメ映画も公開された。

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