【scene 02-旅する東京ライフ】気持ち良い朝のしあわせなサンドイッチ 「カリーナ」

いつもよりも早起きした土曜日、カーテンを開けると雲ひとつない澄んだ青空が広がっています。最高のお出かけ日和になりそうです。

きれいな空

先日、仕事帰りに立ち寄ったブックカフェで、「今週末は都内一人旅をする」と決めていました。とはいえ、決めていたのは「土日で泊まり掛け」と「東京都内」ということだけでどこに行くかは気分次第。窓を開けてまだ冷たい朝の空気を思い切り吸いこんで「よし、まずは朝ごはんを食べに行こう」と思い立ちました。

せっかくだから前から気になっていたお店に行ってみよう、と我が家からバスに乗って10分、杉並区井草という街にあるサンドイッチ専門店「カリーナ」へと向かいます。

杉並区井草

9時を回った頃、目的地の上井草駅前でバスを降りました。街はとても静か。犬の散歩をする人と時折すれ違う程度で、みんな週末の贅沢、朝寝坊中なのかしら。線路を渡り、上井草商店街を歩くことわずか1分。サンドイッチ専門店「カリーナ」に到着しました。

カリーナ外観

商店街にある店のほとんどがシャッターを下ろしている中、「カリーナ」は営業中です。白地の看板には「サンドイッチとコーヒーの店 カリーナ」とシンプルに大きく書かれていて、白、赤、青のフランスを思わせる配色です。ファサードの日よけが「ずっと昔からある」安心感を漂わせています。

創業32年、カリーナの店主は種村耕一さん。8年前に前店主であるお父さまからお店を受け継ぎました。「同じ味をいつも提供できるように」と、創業当時からの変わらないレシピで「カリーナ」のサンドイッチの味を守り続けています。

カリーナの商品ケース

店内のキッチンでは、4人のスタッフさんがサンドイッチを仕込み中。凛と張り詰めた空気。とても真剣です。恐る恐る挨拶すると、種村さんがこちらに気付き、ほほ笑んでくれました。その間も止まることのない手元は、穏やかな笑みとは対照的にテキパキとフル回転で作業を続けています。

毎日、午前2時半から始まるというサンドイッチの仕込み。土日には約1000個ものサンドイッチを作るといいます。それらが並ぶのは、両手を横に広げたくらいの大きさの3段棚のショーケース。どれにしようか遠くから眺めていたら、あっという間に行列ができてしまいました。あわてて列の最後尾に並びます。

カリーナの列

「追加で作っては店頭に並べる。その作業を限界まで繰り返します」
穏やかに話す種村さんの言葉には「たくさんの人に食べてもらいたい」という強い思いが込められています。飛ぶように売れていくサンドイッチ。9時半頃にはショーケースに空きが目立ってきましたが、それを追いかけるように新たに仕込んだものを並べられていきます。

サンドイッチを選ぶ

3年前までは喫茶スペースも営業していたそうですが「品切れを出したくない」という種村さんの思いから、サンドイッチの仕込み・販売を優先し、喫茶スペースはやむなくクローズ。現在は6時から14時まで店頭販売の営業です。

店頭に並ぶサンドイッチは全部で22種類。この日は創業当時からの人気メニュー「たまご」「ポテト」「野菜」の3種類、それから懐かしの紙パック牛乳を注文しました。すぐに袋を開けたい気持ちをぐっとこらえ、種村さんおすすめの散歩コース「石神井公園」へ向かうことに。

カリーナのタマゴサンド

まだ朝の10時前、買ったばかりのサンドイッチを持って公園へ向かいます。早起きしてよかった、と素敵な一日のスタートと気持ちよく広がる青空に気分も上々。閑静な住宅地の中を北へ北へと進みます。ゆっくり歩いて30分、23区内とは思えないほど豊かな自然に囲まれた武蔵野の原野を受け継ぐ、石神井公園へ到着です。

石神井公園

石神井公園を歩く

池のほとりのベンチに腰掛けてお待ちかねの朝食タイム。パンよりも厚みがあるほどにたっぷりと詰まった具にわくわくしながら一口目は定番、たまごサンドをぱくり。マヨネーズで和えたふわふわたまごに思わず笑顔になってしまいます。

石神井公園にいた猫

「カリーナ」のサンドイッチで使われるパンはふわふわで口どけが良く、いい具合に具の引き立て役になってくれています。種村さんいわく、焼き立ての食パンを熱いうちに耳をカットすることで、水分量の多い柔らかいパンに仕上がるそうです。

たまご、ポテト、野菜のサンドイッチと牛乳

サンドイッチを頬張る

次のサンドイッチへとはやる気持ちを牛乳で落ち着かせ、野菜サンドとポテトサンドを一切れずつ食べ比べてみます。刻んだキャベツとニンジン、キュウリを塩もみしてマヨネーズであえたものを具にした野菜サンドは、マスタードがぴりりと効いていてしゃきしゃきと歯ごたえが楽しい。ごろっと存在感のあるポテトサンドは家庭的であたたかい味。どれもシンプルな味付けだけれどひと口食べるごとに、じわりじわりと懐かしさが体の中に広がります。そして、種村さんから聞いた創業当時の話を思い出しました。

「カリーナ」が上井草でオープンした当時、「今の時代、何かに特化したお店でないと生き残れない」と、サンドイッチ専門店として看板を出すことを決意したのは、前店主の奥さま、つまり種村さんのお母さまだったそうです。

「マスタードを入れてアクセントを効かせよう」
「きゅうりは塩もみしたほうが、食感がいいかも」

と、試行錯誤しながら今の22種類のレシピを作り上げたんだろうと想像します。

一つひとつのサンドイッチの背景にある物語に思いを馳せます。高校生の頃から両親と共に店に立ち、仕込みの過程を間近で見てきた種村さんがしっかりと受け継いだのは、当時から変わらないレシピとその根底にある「おふくろの味」なのかもしれません。この味を求めて「また来たよ」と創業当時から通い続けてくれる、常連さんの気持ちがわかる気がしました。

石神井公園の池

サンドイッチを食べ終えた後、公園内をぶらりと散歩します。澄んだ空気が気持ち良いです。すると、大きなカメラを持った人たちがきょろきょろしながら歩いています。普段なら緊張して道行く人に話しかけたりしませんが、サンドイッチの優しい味と暖かな日差しに心がほころんだ私。

石神井公園の池2

ひときわ大きな望遠レンズを装備した小柄な年配女性に何を撮影しているのかと声をかけてみました。「野鳥を撮影しにきたの。この時期はカワセミやオシドリも見られるわよ」と話す女性は、野鳥撮影の度にその魅力にはまり、カメラやレンズを買いそろえるようになったと言います。

石神井公園の池に浮かぶ鳥

その女性にならって池のあたりを観察していると、「きゅわきゅわ」という不思議な鳴き声が。目が黄色、体部分が黒と白のツートーンという強そうな見た目の鳥の群れが池の左右から隊列を組んで泳いできます。そのまま交差するかと思いきや左の群れが180度方向転換。きれいに並んで泳ぎ始めました。見ていた周りの人から思わず「お~」と感嘆の声があがります。調べてみるとキンクロハジロという野鳥だったようです。思いがけずキンクロハジロのシンクロショーを見られて大満足な朝時間となったのでした。

冬を越し、次の場所へと旅に出る野鳥たちはまた今年の冬、石神井公園のこの池に戻ってくるのかもしれません。彼らに郷愁の思いを感じるのかどうか分からないけれど、「カリーナ」のサンドイッチには再訪したくなる引力があります。

 

「また来るね」「また来たよ」、そう言えるお気に入りの店があることはとても幸福なこと。満腹になったお腹をさすりながら、「次行った時は、ハムカツとパンプキンを食べてみよう」と早くも違う味に目をつけている食いしん坊な私なのでした。
さて、お昼は何を食べようかな。

石神井公園で写真を撮る

サンドイッチ専門店「カリーナ」

東京都杉並区井草5丁目19−6

TEL 03-3301-3488

営業時間・定休日 6:00-14:00※品切れ次第終了・月/火

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この特集について

旅する東京ライフ

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