晴れた日の朝のしあわせな30分 亀有「吉田パン」

パンの袋

「知ってます?  亀有に朝からやってるおいしいコッペパンのお店があるんですよ」

会社の後輩が、そんなことを言っていたと思いだしたのは会社の帰り道でした。このことをきっかけに、無性にそのパンを食べたくなったのです。調べると朝の7時半からやっているとわかりました。それならば、少し早起きをしていつもと違う朝ごはんにしよう。その衝動に従うように、次の朝には荒川を渡って、亀有駅にやってきていました。

亀有駅

亀有駅改札

朝8時の亀有駅は、都心に向かう人がいっぱいです。わたしは都心方面から来たので電車は空いていたけども、代々木上原行きの電車を待つ人たちからは仕事に向かう戦闘モードを携えた空気を感じました。千代田線に続く電車には、たくさんの人が乗っています。わたしが乗るころには、少し空いていればいいんだけれど。そんなことを考えながら、エスカレーターを下り、改札を目指します。

改札を抜けて、北口を向かうと目の前に「こち亀の両さん」こと両津勘吉の像が見えました。これは実物大なのでしょうか。よっ、と手を上げてまるでわたしを歓迎しているみたいにこちらに笑顔を見せています。少し小さなロータリーにやってくるバスに乗る人も少なくありません。振り返ってみると、駅の向こう側、反対の南口には大きなバスロータリーがあるようです。そんな駅に向かう人たちの流れに逆らって、今日の目的地「吉田パン」を目指します。

かんきち

北口から伸びる商店街は『亀有北口商店街』です。朝早い時間なので、どのお店もまだシャッターが降りています。チェーン店のハンバーガーショップや居酒屋、レンタルビデオ店、スーパーなどが並んでいて、食べることには困らない街だなと道の両側をキョロキョロしながら歩きます。

昔ながらの電気屋さんもあって、どこか懐かしさを感じました。大きな通りではないのに信号があるから、昼になると人通りも車通りも多いのかもしれません。朝の時間は時折車は通るものの歩行者天国のような状態も多かったので、道路の真ん中からの写真も撮れました。

信号を渡ってしばらく歩いて、マンションを越えたコンビニの先の角に見えてきました。吉田パンです。かわいい顔が描かれているオレンジ色の看板といっしょに「Lucky Bread」と書かれたコッペパンの白い看板が目印です。

吉田パン_看板

「朝からすごい行列」と聞いていたので覚悟をしていたのですが、この日は外への行列はありませんでした。後で店員さんに聞いたところ、寒い日や雨の日には行列になることが少ないそう。この日は晴れていたけども、前日に比べて気温がぐっと下がったのでラッキーだったんだと思います。

お店からふわりとパンのいい香りがしました。それだけで幸せな気分になって、今日来てよかったと心が軽くなります。中を覗くとお客さんが並んでいました。わたしもその列の最後に加わります。

内観

人が20人いると少し窮屈に感じるくらいの広さの店内に2列の行列ができていました。列の後ろからでもメニューが選べるように、店員さんがコッペパンを挟んでいる頭上には木札のメニューがずらりと掲げられています。ツナの札の下に「売り切れました」の文字を見つけて、朝の早い時間でも売り切れるのかとびっくりしました。

いくつか注文するメニューの候補を頭のなかで絞っているうちに、あっという間に1列目に進みました。目の前に現れたのはイラストで書かれているメニューと実際にコッペパンにマーガリンやあんこを塗っている店員さんです。せっかく注文するものを決めつつあったのに、イラストを見ると「こっちも食べたい」と思ったり、前の人が注文した目の前でサンドされていくメニューがひどく魅力的に感じたり、どれを食べようか、いくつ注文しようか、ぐらぐらと心が揺らぎます。

「4つ買うと多いですか?」と店員さんに聞くと、10個買っていく人もいるので大丈夫ですよと答えてもらいました。朝とお昼にも食べられなかったら、夜ごはんにするか、周りのだれかにプレゼントすればいいかと4つ買うことにします。

味はどうしよう、と悩んでいると「フライ系は朝で売り切れることが多いので、この時間ならおすすめです」と店員さんに教えてもらいました。それならばと、フィッシュサンドとあんマーガリン、そぼろレンコン、フルーツサンドを頼み、いっしょに三角の牛乳も注文します。

注文をしたそばから、隣にいたスタッフさんがぱかっと開いたコッペパンの片側にたっぷりのこしあん、もう片方に黄色く光ったマーガリンが塗っていきます。ぱたんと音がしそうなくらいに厚みのあるコッペパンを閉じて、ささっとビニールの袋に詰めていきます。一切の無駄のない所作は、思わず見入ってしまうほどにスムーズです。おかず系のコッペパンは、カウンターからは見えないところでサンドされていました。

袋の中身

「お待たせしました」と渡された紙袋にはきっちり4つのコッペパンが並んでいます。持ってみると思った以上にずっしりと重みを感じました。朗らかでこちらまで自然と笑顔になってしまう店員さんの明るさに後押しされて、今日はなんだかとっても良い日になりそうです。

亀有公園

ぶらんこ

晴れていたこの日は、ちょっと寄り道をして亀有駅の手前にある亀有公園でコッペパンをひとつ食べることにしました。ここにも両さんがいます。さすがに両さんの隣でパンを食べるのは気が引けるので、その隣のベンチに座りました。亀有公園には、子どももたくさん集まるんだろうな、と昼間には子どもが集まりそうな遊具を眺めます。

ぱん

牛乳屋さん

朝ごはんは、あんマーガリンに決めました。パンを一口かじると甘すぎないあんこと優しい塩気のマーガリンが起こすシンプルなおいしさに、気持ちが柔らかくなります。外側はほんの少し固くて、中はふんわりのコッペパンを食べながら、こんなふうに生きられたらいいのかもなあ、とコッペパンに思いを馳せてみたくなりました。

鳩

三角の牛乳を飲みながら時計を見るとまもなく8時半です。そろそろ会社に向かわなきゃ、とあんマーガリンを食べきって少しだけ軽くなった紙袋を掴みました。この中には、今日1日分を幸せに過ごせる魔法が入っているんだから、と軽くなった心と足取りで会社に向かう特別な朝です。

吉田パン 亀有本店

東京都葛飾区亀有5-40-1
TEL:03-5613-1180
営業時間:7:30-17:30(月曜日のみ7:30〜13:00)
※商品がなくなり次第閉店
http://yoshidapan.jp/

新潟県生まれ。週末は2時間散歩しないと気が済まない。ドラマを見ながらロケ地を確信しては、ひとりで楽しい気持ちになっています。他にも電車や駅、飛行機や空港、地図や路線図、おいしいものが好きです。

カテゴリ―新着記事