古民家と美しい庭 — 鎌倉市長谷「蕾の家」

新宿駅から電車で約1時間。鎌倉にある一軒の古民家を訪れました。住宅地の中、ひっそりと佇む「蕾の家」は、自然の楽しみ方や日本文化の良さを訪れる人に感じさせてくれる素敵な場所でした。

江ノ電「由比ヶ浜」駅を降り、細い路地を入ったところに赤い屋根の古い日本家屋を見つけました。大通りから一本奥まった場所にあるためか、車道からの音も聞こえず静かで、ここだけ別の時間が流れているかのよう。

蕾の家

広い庭には夏みかんや月桂樹の木、ミント、ローズマリーなど生活の中で使える植物がたくさん。整頓されすぎず、かといって雑然としている訳でもない、肩肘張らない庭の風景が心地よく感じます。

蕾の家_木

オープンして5年目を迎える「蕾の家」は、「考える、自然と生きる、学ぶ」をコンセプトにワークショップやイベントを開催しているコミュニティスペースです。

ここを立ち上げたのは、代表の池田めぐみさんと、池田さゆりさんと、池田さんの大学時代の友人の奥谷舞子さん。現在はその運営に池田さんのご兄妹や友人を含め、総勢9名が携わっています。建築、WEB制作、デザイン、イラスト……スタッフそれぞれの特技を持ち寄り作り上げたという「蕾の家」。きっかけは「大学の卒業旅行」だったと池田さんは言います。

蕾の家_池田さん

池田さん:「蕾の家の運営を思い描きはじめたのは22歳のとき。卒業旅行として奥谷と私の妹と三人でヨーロッパを旅して回った時の経験が、事業のアイデアを生みました」

奥谷さん:「旅行中はホテルには宿泊せず、友人宅に泊めてもらうなどして『その町に住む』という経験をしたんです」

池田さんたちの友人が所有していたスペイン・バレンシアの山あいの別荘では、オレンジ畑で、もぎ立てのオレンジを絞って飲んだり、山で獲れたウサギやキジを使ったパエリアを地元の人たちと囲んで食べたりと、観光とはちょっと違う「その場所だからできること、その季節だから味わえること」を体験したそうです。

「自分たちが体験したような時間を、日本で作りたい」。その思いが池田さんと奥谷さんの心を動かしました。卒業後、各々企業で勤めながら、空き時間を使って事業計画を具体化。

奥谷さん:「約1年間、『朝活』と称して朝5時に集まって相談していました」

朝活を通じ、事業計画を考えていくうちに、「古民家での体験」づくりをしていきたいという結論にいたりました。そんな折、鎌倉が地元の池田さんの知人伝いに「長谷の古民家が今、空いているよ」という情報を得て、足を運んだのがここ、「蕾の家」だったそうです。

2012年4月のオープン以降は、この家でのワークショップ開催を中心に行い、現在はヨガ、書道、メディカルハーブ、金継ぎなど約10種類を定期開催しています。いずれも忙しい日常から脱して、自分と向き合う時間を過ごせる内容です。どの項目も3〜8人が定員の少人数制なので、周りの目を気にせず自分のやりたいことに集中できる空間が用意されています。

蕾の家_室内

蕾の家の玄関を上がると、まるでおばあちゃん家に帰って来たかのような懐かしい雰囲気にホッと肩の力が抜けていきます。この日は「メディカルハーブ」のワークショップを開催していました。数種類のハーブの成分を聞きながら、実際に自分で淹れて飲み比べます。

蕾の家_茶

淹れたてハーブティーの香りが広がる部屋の片隅に、ススキが生けられていました。スラリと流線型を描き、白壁に彩を添えています。蕾の家の企画運営に携わるスタッフの遠藤さんが、毎日野の草木や花を生けているそう。

蕾の家_草木

奥谷さん:「日本の二十四節気と七十二候の四季の変化、うつろいを大切にしたいという遠藤の想いから始まった、『リース作り教室』も好評です。山から拾った枝や葉っぱを使ってリースを作るんです。また、他にも庭で取れた夏みかんや山椒を使った四季折々の料理教室なども企画しています」

蕾の家_みかん

日々の生活や仕事に追われる日常の中で、少しだけ立ち止まって自分と向き合う時間、四季を感じる時間を作ることが毎日の生活を良くすることにつながる、と池田さんと奥谷さんは言います。

現在は「蕾の家」だけでなく、「朝食 喜心」、町家宿「京都 つきひの家」や、ママと子どもたちの学び場「槙の家」の運営、さらに地域ブランディングなど、新たな取り組みでスタッフの皆さんは忙しい毎日を送っているそう。

「蕾の家」の名には、「自然を感じる場所」というコンセプトとともに、いつ来ても初心に立ち帰れる場所でありたいという「始まりの場所」としての思いも込められているそうです。この家は、スタッフの皆さんにとっても「立ち止まって自分と向き合える場所」になっているのかもしれません。

池田さんたちが学生時代に思い描いた夢は今、長谷の街に根を張り、さらなる新規事業へと枝葉を広げています。

帰り道、ちょっと遠回りして由比ヶ浜まで歩いてみました。海の匂いと風の音、上空を舞う鳶の声、ひんやりと冷たく感じる空気の温度……蕾の家で過ごした束の間の時間は、私の意識をいつもより自然へと傾けてくれたような気がしました。

江ノ島

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蕾の家

神奈川県鎌倉市長谷2-4-2
TEL:0467-23-6339
営業時間:平日9:00〜17:00
(イベント時のみの営業となります。スケジュールをご確認ください。
http://www.viajes-jp.com/schedule.html

http://www.viajes-jp.com/index.html

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