新しい年に、新しい体験を。はじめてのバレエ鑑賞レポート「くるみ割り人形」

東京文化会館

クラシックバレエにクラシックコンサート。「クラシック」と名がつくものは、どこか敷居が高い感じがしませんか。ピンクのトウシューズに、真っ白なチュチュ。バレエ教室を見学したのは、たしか小学生の頃。「あなたも着てみる?」と先生に聞かれたのに、恥ずかしくて断ってしまって以来、バレエに触れる機会を逃し続けてきました。

今回、haletto読者の方へのプレゼント企画で、バレエ公演を取材することに。
※応募期間は終了しました。

はじめてバレエを鑑賞するにあたり、主催である光藍社の制作担当、戸塚彩夏さんからポイントを教えていただきました。

戸塚彩夏さん

戸塚さん:「バレエは一言でいうと、踊り、衣装、美術、物語を楽しむ『台詞の無い舞踊劇』。通常の舞台鑑賞と同様に、鑑賞の楽しみ方は人それぞれです。お気に入りのダンサーを見つけたり、華やかな衣装や舞台装置を観て楽しんだり、音楽を楽しんだり。はじめての方はシンプルに『お話を踊りで観ること』を楽しんでほしいですね」

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

今回観劇するのはロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ。「くるみ割り人形」は、ホフマンの童話を題材にした、チャイコフスキー作曲の三大バレエのひとつです。クリスマスイブの夜に、くるみ割り人形をプレゼントされた少女がお菓子の国に誘われるファンタジー。1幕目では、クリスマスパーティーの様子や人形使いが登場し、2幕目では、王子様の姿に変身したくるみ割り人形が少女を連れてお菓子の国へと向かいます。
こういったひとつの物語を通しで上演する作品のことを「全幕もの」といい、豪華な舞台セットに囲まれた演出を楽しめるため、はじめての鑑賞にはおすすめの公演だそうです。

くるみ割り人形

戸塚さん:「バレエは台詞がないので、あらかじめあらすじに目を通しておくのも良いでしょう。そうしておくことで、踊りの根本的な意味まで楽しむことができます。」

アドバイスを参考に、童話のあらすじや、バレエのくるみ割り人形の概要を調べておきました。演出によって登場人物や話の起承転結が変わることもあるので、大体の流れを押さえておく程度で十分だそうです。

上野駅

東京文化会館

会場となる上野の東京文化会館は、1961年に日本ではじめてオペラやバレエを演じるために建てられた施設です。会場内は、幾何学模様のタイルや螺旋階段など、お洒落なデザインが目に留まります。特に、照明が星のように散りばめられた紺色の天井は、まるで星空のよう。

東京文化会館

東京文化会館

東京文化会館

特別に見せていただいたバックヤードには、壁一面の歴代出演者たちのサインがありました。

東京文化会館

東京文化会館

これまで東京文化会館で公演を行った国内・海外の出演者たちが記念に残したサインが、隙間なく壁を埋めている空間は圧巻です。来日公演のポスターが貼られた部屋には、歴史ある建物の思い出がたっぷり詰め込まれていました。

東京文化会館

開演前のロビーで待機するお客さんは、ご年配の夫婦から小さな子どもを連れた親子、一人で来ている女性などさまざま。出かける前にドレスコードを気にしていた私。皆さん、思っていたよりも普段と変わらない服装で、緊張が少しほぐれます。

東京文化会館

16時半からは、本番前のリハーサルを見学しました。練習着で踊るダンサーたちに向かい、熱心な指導をするバレエマスター(舞踊監督)。はじめは客席から指示を出していましたが、そのうち自ら舞台に上がり、振付指導を行っていました。

東京文化会館

東京文化会館

リハーサル中の舞台

18時すぎ。オーケストラが音出しをする風景を観客の方々が眺めています。はじめはバラバラだった音色が、開幕直前になると一つにまとまっていく。幕が上がり、いよいよ「くるみ割り人形」のはじまりです。

クリスマスツリーの飾られた舞台で、音楽の演奏と共に華やかな衣装に身を包んだダンサーが踊り出します。バレエは、手足をしなやかに伸ばして優雅に踊るイメージがありましたが、意外にも細やかな動きやコミカルな仕草といった、演劇のような振り付けも見られました。手の動きに表情をつけることで、台詞がなくても、登場人物の感情が伝わってきます。驚いている時は、両手を口にかざしたり、怒っている時は、拳を振り上げたり。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

舞台の上を軽やかに跳ねるダンサーの足音や、オーケストラの音楽を聴いていると、次第に気持ちがリラックスしていきます。バレエは難しいものだと思っていた心配も、いつしか消えてしまいました。

特に、喜怒哀楽がわかりやすく伝わる主人公の少女の動きは、見ているうちに「今の動きは、こんな気持ちなのかな?」と想像が膨らみます。喜んでいる時に、舞台を跳ねるように動き回る様子は愛らしくて、つい目で追ってしまいます。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

第一幕で登場する人形使いは、様々な人形を糸で手繰るような動きが巧みで、人形たちとの息の合った動きにじっくり見入ってしまいました。

物語の展開や人物の感情がすべて、踊りを通して表現される。そこに音楽が加わり、キャラクターの性格がより一層はっきりと色付けられていくようです。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

第二幕では、お菓子の国で披露される各国のダンスに、観客の拍手が続きます。どこかで一度は聞いたことのあるチャイコフスキーの音楽に合わせて繰り広げられるお菓子の踊りは、衣装、曲、踊りのどれに注目しても楽しめます。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

スペインのチョコレートの踊りは、チョコを彷彿させるようなデザインの衣装がお気に入り。ぴょんぴょん飛び跳ねる中国のお茶の踊りは、映画「ファンタジア」で見たアニメーションを思い出します。エキゾチックで妖艶なアラビアのコーヒーの踊りでは、ひらひら舞う布を使った演舞が印象的で、「バレエ=チュチュとトウシューズ」だけではなかったのか、という新鮮な驚きがありました。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

クライマックスで王子と少女が踊るシーン。元気よく舞台を飛び跳ねていた少女は、前半の姿と打って変わって大人びた雰囲気を放ち、女性らしさが際立っていました。同じバレリーナでも、踊りが変わるだけで全く異なる印象になります。夢から醒めた少女が、ラストシーンの一瞬で王子に駆け寄る姿は、恋する一人の女性。胸のときめく演出で幕が下りました。

ロシア国立モスクワ・クラシック・バレエ

踊りだけの舞台を楽しむことができるのか、知識がなくても大丈夫なのか、きちんとした服を着ないといけないのか……など、敬遠してしまっていたバレエ。実際は思っていた以上にカジュアルに楽しむことができました。

たとえば映画を観るのと同じように、ストーリーや出演者、音楽、衣装やセットなど、好奇心をくすぐられるポイントは尽きません。オーケストラの生演奏を聴きながら、ダンサーの踊りや身体の美しさに惚れ惚れするのは、心地よい時間でした。

台詞がないからこそ、音楽や踊りの中から想像を膨らませ、物語を楽しんでいく。バレエの魅力に触れられた一夜でした。

〔写真提供:光藍社〕

光藍社

ロシアやウクライナのカンパニーを主に招聘し、バレエやオペラ、クラシックコンサートの公演をおこなう光藍社。

その他の公演情報はこちらからご覧ください。

Webサイト:
http://www.koransha.com/

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