蒲田、「街」を記憶するフロッタージュ|京急のまちマガジン「なぎさ」

町工場の扉を色鉛筆で記録する、「オオタノカケラ」の運営者・酒百宏一(さかおこういち)さん。
今号では酒百さんと一緒に、日常のありふれた風景を、視点を変えて見てみよう。
日本のノスタルジーを辿るまち歩き、機械職人が育てた蒲田へ。

【酒百さん蒲田まち歩きマップ】

蒲田街歩きマップ

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酒百さんプロフィール

酒百 宏一(さかお・こういち)1968年石川県金沢市生まれ。東京工科大学教授。フロッタージュという美術の描画技法を駆使したオリジナルの方法で作品づくりを続ける。2006~15年、越後妻有アートトリエンナーレ、09~15年、水と土の芸術祭など、地域プロジェクトによるアートイベントに作品を出展。13年、プロジェクトとして「オオタノカケラ」の活動を開始。

ひとの営みを記憶する

「ずっとそこにあり続けることで存在するものに目を向けること、それがきっかけでした」

酒百さん外写真

「父が働いていたこの工場を使って、何かできないかと。空間をそのまま残して、自由にアートが集まり、文化を発信する場になれば、とギャラリーにしました」そう話すのは、水口惠子さん。4年前に父親を亡くし、ギャラリーをオープンして2年半になる。この場所では、現在、酒百宏一さんが運営する「オオタノカケラ」のワークショップが不定期に開催されている。

工具画像

職人さんたちが長年使い込んだ道具たち。ただのスケッチでは正確に写せない風合いを感じる。

丸、キューブ、長方形、曲線……、ギャラリー「南製作所」の扉を開けると、見たことがない道具がずらり。どれも一点モノ。これは、酒百さんが、大田区にある町工場の道具や部品を集めたもの。職人たちが、作業効率を第一に、手の大きさ、握り加減を考えて開発した、道具をつくるためのオリジナルの道具だ。

オオタノカケラのワークショップでは、色鉛筆を使って「フロッタージュ」という作業を行う。フロッタージュとは、フランス語で“こする”という意味。鉄や木などの凹凸面に紙を置いて、上から色鉛筆などでこすり、図柄を紙面に写し取る描画技法だ。

「“こする”という感覚は、“見る”よりもモノに寄り添うことができる。見るだけではわからなかった、凹みや歪みが紙の上に浮かび上がると、当時、その道具を使っていた職人さんのちょっとした癖や、使っているうちに形が変わっていった道具の歴史を感じることができます」と、酒百さん。この活動をはじめたのは、ひとりの男性との出会いがきっかけだったという。

酒百さん外写真バック

「蒲田で、89歳になるまで、切削加工をする工作機械の旋盤を扱っていた職人さんがいました。彼が亡くなったときに、息子さんが“親父がずっとやってきたことを何かに活かして欲しい”と大田区役所を訪ねてきたのです」。役所の担当者から相談を持ちかけられた酒百さんは、2013年、その職人さんの工場を、オオタノカケラの拠点とした。

「日本の近代工業を支えてきた大田区の町工場ですが、いまでは半数以下に減少。フロッタージュは、町工場の活躍を、形(作品)として記憶に残します。失いかけていたまちの歴史やひとびとの交流を、新しいモノづくりで再生できれば」。こうして活動がスタートした。

大田区町工場

トタン屋根の家の外には、アルミ缶や鉄の棒。災害が来ても大丈夫なように、出入り口は高くするなど、絶妙な職人の知恵が光る。

蒲田路地

路地を歩くと、「△△製作所」の看板がそこかしこに。「部品の製造が、安価で発注できる海外工場へシフトするようになると、大通りではマンションや駐車場を見かけるようになりました」と、酒百さん。

色鉛筆で甦る、蒲田の音

「語りかけるアートで、まちの記憶と未来をつないでいきたい」

蒲田アートドローイング

昭和の後半、日本の中小企業の数はピークを迎えていた。当時、町工場の人たちは、大手企業にとって“かゆいところに手が届く”部品をつくるスーパー職人。マンモス企業を相手に、食住一体型の家内工業で、新幹線や瀬戸大橋など、日本の進化の証ともいえる大きな構造物の要となる部品をつくり続けてきたという。

蒲田町工場看板

とくに、京急蒲田駅から東京湾へと続く呑川一帯エリアの住人たちは、江戸時代の海苔の養殖からはじまり、農業、工業へと、時代が求める産業に合わせて、次々と変遷を遂げてきた。今でも平日にこの周辺を歩くと、ガシャン、ガシャンと、機械を動かす音が聞こえてくる。

蒲田町工場職人

15の時からエンジンベルトをつくり続けて、今年で57年目。

蒲田工具結合

「住宅の中に工場が溶け込んでいる風景には、都会にいながら人の営みを感じます。とくに変遷が激しい蒲田に住むひとたちは“生きる”ことにたくましいから、まち全体に活気もありますよね」と、酒百さん。

ワークショップ風景

現在、オオタノカケラのまち歩き&ワークショップには、「自分たちが住むまちのことをもっと知りたい」という、引っ越して来たばかりの女性など毎回15人程度が参加しているという。

工場扉

時を重ねたからこそ出る風合いが絶妙な色を生む、工場の扉

「まち中にある欄干(らんかん)は、“欄干”として見るとサビや汚れが気になるけれど、固有名詞を外すと、色合いに味があったり、形が面白かったりするアート作品。過去を記憶するだけではなく、その場所にずっとあるものに気づき、あたらしい価値を見つける。これが、アートでまちを見直す試みの醍醐味です」

色鉛筆という柔らかなタッチで、ノスタルジーを形に残していくオオタノカケラの取り組み。その作品たちは、蒲田のひとびとが色付けてきた“生きるための営み”に目を向けてみようと、語りかける。

呑川の風景

呑川の風景

(写真/村上未知)

この記事は京浜急行電鉄が発行する無料情報誌『なぎさ』12月号「特集京急蒲田駅 町工場のカケラをあつめて」より抜粋しています。京急線各駅(泉岳寺駅を除く)や一部京急グループ施設において無料で配布中です。京急沿線へおでかけの際は是非ご覧ください。
〔提供元:京急電鉄〕

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オオタノカケラWORKSHOPに参加しよう!

オオタケノカケラワークショップ

ピンときた道具を選んでフロッタージュ。色鉛筆で写し取るだけの作業でも、色の付け方や力の入れ加減で個性が出ます。完成した作品は、つなぎ合わせて、大きな作品として展示します。
【お問い合わせ・応募先】
オオタノカケラ事務局/東京工科大学デザイン学部 酒百宏一
メール:otanokakera@gmail.com
Facebook:https://www.facebook.com/otanokakera

「なぎさ」は京急電鉄沿線のまちマガジンとして、1956年11月1日に創刊した無料の沿線情報誌。京急沿線の魅力やおすすめスポットをご紹介しています。 発行日:隔月発行(偶数月の1日発行を予定) 配布場所:京急線各駅(泉岳寺駅を除く)、京急グループ一部施設など

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