【scene 04 ― 心を込めた東京レター】旅先から絵葉書を送る
2017.12.01
さて、11月号最後の企画は私、編集長の三宅から読者の皆さんへの手紙です。何を書こうか悩みつつ、私はやっぱり東京の街に飛び出しました。街に出て、街の流れを見ながら何か伝えたいメッセージが浮かんでくるのではないかと考えました。
向かったのは、銀座和光の向かいにあるドトールコーヒーの2階席。銀座にある会社の始業時間は少し遅いのか人の往来はまばら。思ったよりゴミゴミした雰囲気もなく、意外だなあと、朝の贅沢な時間を過ごします。こころなしか歩いている人たちの層も違う気がするなあと思いを巡らせます。
そんなときふと、「居場所」というキーワードが心の中に浮かびました。
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先日知り合いに人生相談をしている時に「早く、居場所を見つけた方がいいね」と言われたことを思い出したのです。居場所と聞くと、たいてい「場所」をすぐに連想することが多いと思いますが、それだけではなく、家も、仕事も、住む街も、それから人も。帰ってくる拠り所となるものを、居場所と考えているのだと、その人は言いました。
「私にとっての居場所は、なんだろう」
そんなことを考えながら、千駄木駅から徒歩5分程度の場所にできたばかりのカフェ「CIBI」へ向かいました。気になっていたこのカフェは、平日の夕方、子供を連れたお母さんからご年配の方まで、様々な人が談笑をしています。街の方々に愛されているカフェなのが伝わってきて、なんだか落ち着く場所です。
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そう、たしかに私は、本当の意味での居場所、は今のところありません。全てが借り物で、自分のものではないからです。今すぐじゃなくてもいいけれど、早めに居場所を作るべきだ、いや持つべきだね、とその人は言いました。
焦ることはないけれど、そんなことを問いかけられ、すこし考え込んでしまいました。
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頭の中をぐるぐると、「居場所」というキーワードが動いている中、自分の現在の「居場所」、新高円寺の駅に帰ってきました。駅の目の前にある「ブーケ」という純喫茶は、青梅街道沿いに大きな窓があって、道行く人を眺めながら考えごとをするのには最適な場所です。
コーヒーをいただきながら考えます。好きな仕事をして、好きな人と遊び、比較的好きな街に住み、部屋で過ごすこと。よく考えたらもしかしたらすごく不安定で不確かなものなのかもしれない。だからしばらく私の人生のテーマは、「居場所」探し、に決めました。
探したからといって、すぐに出会えることはないとおもうけれど、なにかこれから出会う多くのことに、その先に私が長く一緒にいたい、と思うかどうかという視点でも見ることによって、選択の仕方が変わるかもしれないな、と願って。
もしかしたら私がhalettoをこうして5年も続けられるのは、本当の意味での自分の居場所探しをしているからなのかもしれません。そんな街や場所に出会いたくて、ずっと探し続けているかもと考えました。
私は今日も知らない街へ、知らないものを見つけに出かけます。あなたにとっての「居場所」はどこでしょうか。
この特集について
公園の木々の葉は色付き、外苑前の銀杏並木は金色に輝いています。朝6時半、大手町から皇居の周りを走り始めれば、時折白い息の向こう側に、紅葉の鮮やかさが映り込み、思わず目が奪われます。お堀に写った紅葉と高層ビル、ランナーたち。東京の朝です。 ...
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好きな街はある。住みたい街はまだない。