その名も「あげパン」 — 大田区鵜の木「東京あげパン」

カレーにジャージャー麺、クラムチャウダー、冷凍みかん。私が小学生の頃、給食で好きだったメニューはたくさんありましたが、不動の一位は「あげパン」でした。コッペパンを油で揚げて、砂糖がまぶされたあげパンは、甘くてふわふわで紙パックの牛乳とも好相性。

そんな給食のあげパン発祥の地である東京の大田区鵜の木に、あげパン専門店があると聞き、口の周りを砂糖まみれにしながらかぶりついていた子ども時代を懐かしく思い出しながら、電車に乗り込みました。

中目黒駅で東急多摩川線に乗り換え、20分弱で鵜の木駅に到着。改札を出てすぐ右側、自動券売機の脇にあるのが、あげパン専門店「東京あげパン」です。窓ガラス越しに懐かしのあげパンたちが30個ほど並んでいました。

東京あげパン外観

東京あげぱんショーケース

今から12年前に鵜の木で創業したパン屋「ラ・ヴェール」が、2014年に新たに立ち上げたのがこのあげパン専門店でした。今ではおやつとして、手土産として親しまれ、ご近所さんだけでなく遠方から買いに来るお客さんも多く、店舗販売と通販分とで合わせて約400個が売れていくそうです。

この日店頭に出ていたあげパンの種類は全部で10種類。定番のきなこ、シュガーや、シナモン、ココアに加えて、中にクリームを挟んだレアチーズ、つぶつぶピーナッツ、北海道小倉あん、チョコレートなどバラエティー豊か。和栗など、季節にちなんだメニューも月替わりで登場するそうで、立ち寄るたびに違う味に手が伸びそうです。値段もクリームなし商品が一個180円、クリームあり商品が一個250円とおやつにちょうど良いお手頃感です。

あげぱん4種

あげパンは、昭和27年に鵜の木の峰町小学校で生まれたそうです。インフルエンザでたくさんの子どもたちが学校を休んでいた時、大量に余ってしまった給食のコッペパンを目の前にした当時の調理師さんが、固くなってしまったパンでも美味しく食べられる方法はないかと思案の末、油であげて砂糖をまぶすという調理法を試したところ、子どもたちに大好評。戦後9年、まだ甘いお菓子や栄養価の高い食べ物が少なかった時代に、あげパンは子どもたちにとって美味しく、力のでる食べ物だったに違いありません。食べ物をもったいないと思う気持ち、手間をかけて美味しく食べようと工夫する気持ちから生まれたあげパン誕生の物語は、今の子どもたちにも知っていてもらいたいストーリーです。

黒川さん:「あげパンを鵜の木の名物にしようと、鵜の木住民の皆さんと一緒に美味しいあげパンを生み出しました」

あげパン誕生のストーリーを知ったパン屋「ラ・ヴェール」代表の黒川みどりさんは、あげパン専門店立ち上げのため、7歳から74歳までの幅広い年齢の鵜の木住民約120人に集まってもらい、あげパンの土台となるコッペパンの試食をしてもらいました。

黒川さん:「『パンはもっと柔らかい方がいい』とか、『もう少し甘い方が美味しい』とか、いろんな意見が飛び交いました。約半年間、皆さんの声を元に改良を重ねて生まれたのが今の“東京あげパン”なんです」

鵜の木住民の声を集めて出来上がった東京あげパンは、出来たてはもちろん、翌日もふんわり美味しく食べられると言います。

黒川さん:「パンを食べるタイミングは人それぞれ。買ってすぐ食べ歩きする人もいれば、朝買ってランチタイムに食べる人もいるし、翌朝の朝食にする人もいます。だから『時間が経っても美味しい』を目標にしたんです」

取材中も、「今日の3時のおやつに」と買っていく常連さんの姿がありました。

あげパンの仕込みは、鵜の木にある工場で毎朝3時30分から始まります。焼きあがったコッペパンは東京あげパン店舗に運ばれ、店内で揚げ、きな粉やクリームのトッピングなどの仕上げを行います。こじんまりとしたお店の奥から、しゅわしゅわとコッペパンをあげる音が聞こえてきました。

ぱんを揚げる

揚がったぱん

黒川さん:「ここに出ているメニュー以外にも、トッピングしたいクリームを自由にカスタマイズできますよ」

人気メニューの「つぶつぶピーナッツ(250円)」を購入し、近くを流れる多摩川河川敷でいただきました。

揚げパンを入れる

外側はパリッと揚がっていて、中のパンはふわふわ。きな粉の風味が懐かしく、ピーナツバターのつぶつぶの食感が楽しい味わいです。揚げ油にもこだわっているという東京あげパンは、一つペロリと完食できる軽さ。口の中をベタつかせることもなく、揚げ物特有の重たさを感じません。

空と揚げぱん

あっという間に完食してしまいました。きな粉が多少服にこぼれても、口の周りが汚れても気にならないのは、気持ちが小学生にかえっていたからかもしれません。どうせなら紙パックの牛乳も買っておけばよかったな、なんて思いながら小学生の給食の思い出が蘇ってきた、ノスタルジックなおやつタイムとなりました。

東京あげパン

東急多摩川線「鵜の木駅」発券機そば
TEL:03-5732-3568
※売り切れ次第終了
営業時間:10:00-14:00
定休日:月、火、日曜

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