東京で古墳を探せ!②都立芝公園「芝丸山古墳」

街には、長い年月をかけて自然にできた小高い丘があちこちにあります。大抵の人は、それを見た時にただ「丘があるな」と思うだけで、それ以上は特に気にも留めないと思いますが、中には自然にできたものではなく、古代人が作った古墳の遺構という場所もあります。実は、東京タワーの横にある小山も古墳なのです。

古墳の名は「芝丸山古墳」。東京タワーのふもとに広がる芝公園内に位置し、東京都内最大級といわれる古墳です。都営三田線芝公園駅で降り、広大な公園の中でも一番古墳にアクセスしやすいA4出口から向かいます。

出口を出て右折し、園内へ続いていく道をまっすぐ歩いていきます。しっかり手入れの行き届いた豊かな緑を眺めていると、静かな郊外の庭園にでも来たような気分になります。そして、緑の向こうにそびえる東京タワーや高層ビルが見えた瞬間、ここが東京のど真ん中だということを思い出すのです。

東京タワー

江戸時代からの歴史があるという梅園を通り過ぎると、丘を登る階段を発見。どうやらこれが、芝丸山古墳へと続く道のようです。丘は見上げるほど大きく、木々がたっぷりと茂っていて、頂上の様子も階段の先もまったく見えません。冒険心をくすぐられ、早速階段を登ってみました。

芝丸山古墳へと続く階段

階段の先には、平坦な空間が広がっていました。林に囲まれ、中心部には木が数本並び立ち、端には休憩用の石のベンチもあります。「この何もない場所が本当に古墳なの?」と疑問に思ってしまいますが、広場の端に建てられた「芝丸山古墳」の碑が、ここは確かに古墳なのだと伝えてくれています。

芝丸山古墳の階段上

芝丸山古墳の階段上

5世紀頃に造られたとされる芝丸山古墳は、南武蔵屈指の族長の墓だと考えられています。1893(明治26)年に考古学者・坪井正五郎氏が調査を行っていますが、遺体や副葬品などは見つかっていません。

広場奥には、小さな神社が建てられています。江戸時代、増上寺がこの地に移転してきた際、寺の本尊を守るために随行してきたお稲荷さんを祀っているのだそう。社の中にも周りにも、いろいろな表情・サイズの稲荷神がいます。

芝丸山古墳内の神社

芝丸山古墳内の稲荷神

「芝丸山古墳」碑の横から続く階段を登ると、また別の広場に出ました。一段高くなった場所には虎の像が鎮座し、増上寺を詠んだ詩歌が刻まれています。明治から昭和の時代を生きた政治家・大野伴睦氏の碑だそうです。

芝丸山古墳にある虎の像

大野氏の句碑を通り過ぎ、さらに奥へ進むと、一番ひらけた空間に辿り着きました。どうやらここが頂上のようです。中央には記念碑が、周囲には腰かけられるイスが並んだ展望スポットがあります。展望台から下を見下ろすと、先ほどまでいた稲荷神社のある広場が見えました。

芝丸山古墳内の展望スポット

中央に建てられた碑は、江戸時代に日本全国を測量して回った伊能忠敬の記念碑。この地が測量の旅に出立するスタート地点にほど近い場所だったことから、碑が建てられたそうです。

伊能忠敬記念碑の裏

伊能忠敬記念碑の裏からは、木々の隙間から増上寺と東京タワーが見えました。増上寺の本堂をほぼ平行な視点で眺められ、この古墳の大きさを改めて実感します。ここに埋葬された族長は付近の水田地帯や交通路を支配下に置いていたとされていますが、その影響力をしみじみと感じる、圧倒的なスケールです。

有力者が葬られたのち、増上寺の移転や、日本全土を測量するという偉業、東京タワーの建設など、この地にはさまざまな歴史が積み重なっていったようです。

東京タワー2

この古墳には私が登ってきた場所以外にもさまざまな階段がありました。帰路では、私は東京タワーを眺められる緩やかな階段を選択。中には違う階段を登ってどちらが先に頂上に辿り着けるか競争する子どもや、軽いハイキング気分でいろいろな階段を散策する人の姿も見かけました。

階段を下りると、増上寺に面した気持ちの良い芝生の広場に出ました。ここは都立公園の中に含まれている港区立芝公園の敷地で、東京タワーと芝丸山古墳の2ショットが眺められる場所です。東京を代表する人気スポットのすぐ横に、大昔の人のお墓が並んでいる光景はなんとも不思議。

港区立芝公園内の案内板

あの小山に眠っていた族長は、自分が葬られた場所が今、日本を代表するランドマークのふもとだと知ったら、きっと喜ぶんじゃないだろうか……。芝生に座りながら、古代人の姿や、あの丘の上に積み重なった歴史に思いを馳せたのでした。

都立芝公園

東京都港区芝公園4-10-17
TEL:03-3431-4359(芝公園サービスセンター)
営業時間:常時開園
定休日:年中無休(サービスセンター・各施設は年末年始休業)

ライター

埼玉県生まれ、群馬県育ち、東京都在住の関東人。エジプト、トルコ、ギリシャ界隈の歴史が大好きな世界史系歴女。シャーマニズム、古今東西の墓文化、ハロウィーンなどミステリアスなものにも惹かれる。

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