この懐かさはなんだろう|一人飲みと干物 浅草「ほしや」

浅草雷門近く、干物や乾物をメニューに取り入れた人々の溜まり場があります。その名も「ほしや」。イラストの描かれたガラス戸の奥は、和洋折衷、古今東西のお酒やインテリアが並ぶなんでもありな不思議なカフェバーでした。

ほしやのカウンター

平日昼間でもたくさんの人が集まる浅草の街。その賑わいを余所に雷門を背にして田原町のほうに歩き、北陸銀行の角を右に入ったところで、店先で干されるにんじんを発見しました。ホームセンターで見かけるシンプルな青い干し網です。あれは、おばあちゃんちにあったような気がすると思いながら近づいていきます。

スカイタワー

店先で干されるにんじん

店先で干されるにんじん2

ここが、今回の目的地の「ほしや」。下町らしい店名ではありますが、お店の雰囲気はおしゃれな現代風のカフェバーです。渋い下町のイメージが人気の浅草の中でも、観光客の喧騒から少し離れた場所に現れた異空間に期待感がわきます。

ほしや外観

干し物メニューを開発している店主の佐藤シュンスケさんを含む、3人の飲み仲間が手がける「アイデア家業」の事業の一つとして、「ほしや」が生まれました。

元は人形問屋の倉庫だったそうで、外観や骨組みはそのままに、カウンターの設置やロフトスペースへ上がる階段をつけるなど、内装を変え、和洋のミックステイストが心地よいカフェバーへと変身。

ほしやロフトからの眺め

佐藤さん:「友達の家に来たように、リラックスして過ごしてほしい」

そう話す佐藤さんがカウンターに立つ平日は、好みの昭和歌謡曲を流しているそう。土日担当のスタッフは、JAZZを選曲することが多いらしく、カウンターを任された人の個性が存分に発揮されるお店です。

ほしやのオーナーさん

そもそも、私がこのお店に来たいと思ったきっかけは、干し柿や、ドライトマトなどを使った「ほしや」のメニューを雑誌で見かけたことでした。なぜ乾物メニューにこだわったのか尋ねます。

佐藤さん:「乾物は日持ちがするし、素材そのものの味が活かされるのが魅力でおつまみにぴったりだったからです。最近では近所のおばちゃんと話が弾んでメニューについての情報交換をしたりもしているんですよ」

漬けたての干し野菜ピクルスや干し物の本を見せながら話す佐藤さんは、若いのにお母さんのような家庭的で堅実な部分を持っていて、そのギャップに驚かされます。おしゃれすぎない、渋すぎない、ほどよいゆるさがの居心地の良さにつながっているのですね。

ピクルス

カウンターに置いてある果実酒の瓶や、ウォッカなどの洋酒瓶の中に漬け込まれる野菜がカラフルで、どんな味なのだろうかと、興味を惹かれます。

果実酒と、洋酒瓶の中に漬け込まれる野菜

小腹が減っていたところで注文したのは、クラフトビールとお店の人気メニュー「しらすとイカチョビのピザ」(1200円)。モチッとした手作りピザ生地が、コクと香りのあるイングランドのバスペールエールによく合います。

ほしやの「イカチョビ」

イカチョビというのは、イカの一夜干しから作ったアンチョビテイストの調味料。程よい塩味があと引く、ほしやならではのメニュー。今日は、ちょっと一杯飲みたいというときに、ピザとビールの組み合わせなんて最高です。ここなら、一人で来ても気を張らずに過ごせるかもしれません。

「高野豆腐のスティックケーキ」(400円)は飲んだ後にちょっとつまみたいデザートにぴったり。食べ応えがあり、甘すぎず、ヘルシーでなんだか懐かしい味にほっこり。干物、乾物といっても、野菜だけでなく、魚介から豆腐まで奥深いんだなと気づかされました。

ほしやは、2016年11月のプレオープン、2017年3月のグランドオープンと、まだ若いお店です。主に新宿や渋谷で過ごしていた佐藤さんたちが、下町情緒の残る浅草で心がけているのは、「あいさつをする」というシンプルなこと。いまでは人力車の車夫さんたちが立ち寄ってくれたり、畳敷きのロフト席を気に入って予約を取るお客さんもいたり、ほしやの存在感が地域にも定着してきています。

ほしやの畳敷きロフト

佐藤さん:「おなかがすいたらちょっと寄れるような場所になりたい。あいさつや、イベントなどを通して人が集まりやすいオープンな場所を目指しています」

やはりお母さんのような温かさのある言葉が印象的でした。

ほしやでビール

気づけば、すべて完食。楽しい話ができて元気の出るひと時でした。普段は観光で訪れ、甘味処などに立ち寄る浅草で、干し物のおつまみ片手にさくっと一杯一人飲みするのもいいなと思いました。

この十年ほど、外国人観光客の姿が増える一方、空き店舗も増えてきている浅草の街。その「空き」を活用して人とのつながりを作りながら、「ほしや」が熟成されていく様子も気になります。

古さと新しさが混在する浅草で、ほっとできるあったかい場所。次は横浜の映画館から買い付けたという劇場用の客席に座ってみたいなと思いながら、お店を後にしました。

ほしや店内

ほしや

東京都台東区雷門2-13-1 KAMINARI 1F
TEL:03-6873-4481
時間:ランチタイム11:00-15:00 バータイム18:00-23:00
不定休
アクセス:都営浅草線 浅草駅 A4出口から徒歩1分
銀座線 浅草駅 2番出口から徒歩2分
http://hoshiya.idea-fp.net/

ライター

東京都生まれ。休日は近場の町探検へでかけます。気になった喫茶店にふらっと入り一息つくのが至福の時。出かけた先でお土産におやつを買うのが楽しみ。

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