【scene 01 ― 観察、東京ウォッチ 】日々を「見ること」 ― 写真家 池田晶紀さんに聞いた

見ること——。それは、「日々」をどう過ごすかによって人それぞれ違います。何を見るか、それによって「見る」そのものの意味も変わり、また、人の想いも相まって、その時々に見る風景は変わってきます。

街だけではなく、家の中やどこかの山や海、そして旅先。いつも見ている日常の風景も、年齢によっても、誰とその時間を過ごしたのかによっても、やはり見る風景は変わってきます。「あの日見た夕焼け」や「正夢のような景色」、初めて来たのに「この懐かしい感じはなんだろう」というあの気持ちはなんでしょう。

「見ること」は日々の暮らしの基本でありながら、まだまだ奥が深い日常の所作のように思います。今回はそんな漠然としたテーマのもと、ずばり「見ること」の意味をhaletto編集部のポートレート(https://haletto.jp/about/ )をお願いしている、写真家の池田晶紀さんにお聞きしました。

・写真家  池田晶紀
・コピーライター 市井了
・haletto編集部/プロデューサー 三宅朝子

・撮影 鈴木直道(haletto編集部)

- 青山のスパイラルガーデンで開催していた、池田晶紀展「SUN」の会場にて -

■「視点を変える-猫の冒険に付き合ってみる」

市井:「猫の写真、大きいですね。迫力あります!」

池田:「あの猫、名前が「牛」っていうんです。外を歩いている人は、夜に目が合うんですよ。実は、『見る』と『見られる』の関係なんです」

市井:「へぇー、面白いです。確かに夜だと外から見えますね。確かに、あの牛(猫)を発見した人は実は見られていた! みたいになります!」

池田:「『見る』ことをテーマに考えているのであれば、猫の冒険に付き合ってみることがかなりヒントになると思いますよ。

猫って、突然空気を見てたりするじゃないですか。『あれ!? お前さんはどこ見てんの?』みたいなね。例えば、お風呂のお湯を入れる時、僕らは忙しいからお湯はりボタンを押して、お湯が溜まる間は他のことをしながら待っている、すると牛(猫)は、お湯が出てくる様子をずっと見てるんです。

一緒になって覗き込んでみると、確かに水面がウニウニ動いていて面白いんです。これは『見る』ということよりも『観察』に近い行為なんですが、最初は面白いんですけど、だんだん自分の足が痛くなってきたり、他の音に気付くようになったり、携帯の音が鳴ったり、LINEの音が鳴ったり、割と日常が騒がしいから、意識が呼びもどされてしまうんです。

それでも我慢して付き合ってみる。じ~~~~と。見る時間。こういう時間をつくると、無駄な時間が、神聖なもののように思えてきたりして、いいんです。

『やった! 明らかにオレは、ウニウニ見たな』ってね。

猫は冒険心を満たすためとか、快適さを求めて1日中動いているんですね。気持ちいい風や陽のあたたかさとかを感じ取って、一番快適な場所で寝てるんですよ。それから太陽光でビタミンDを摂取してるんですって!」

三宅:「えー! ほんとですか」

池田さん:「ほんと、ほんと(笑) 毛づくろいをして栄養分を接種しているらしいです。太陽ってすごいよね」

三宅:「初めて知りました」

■「気付く力を養う - 秘訣は……サウナ!」

池田さん:「今年の夏は雨ばっかりで気が滅入りましたよね。天気というのは、実はテレビ番組にも影響があるらしいです。生放送は天気によって視聴率が違って、実は曇りの日の方が視聴率は良いらしいということを聞いたことがあります」

市井:「天気のことで言うと、halettoはCHINTAIという雑誌に、毎月、広告を載せています。『晴れた日には でかけよう』というキャッチフレーズなんですが、実は撮影で晴れた事が一度もありません(笑)。Web CMも制作しましたがそれも晴れていません(笑)

でも、ピーカンの天気より、その方が落ちついた気持ちが持てる、自分自身と向き合えるんじゃないかなと考えています。シンプルにいうと、雨の日も曇りの日もあるから、晴れた日が待ち遠しくなるじゃないかなと考えています」

池田:「それ、良いね」

市井:「halettoは、よくある情報誌のように、イベントや流行りのお店を紹介するのではなく、例えば、その辺に落ちている石ころや、空き地に生えている植物を観察していた子供の頃の感覚を思い出した情報を発信しています」

池田:「面白いですね。あえて写真家らしいことを言うと、道を歩いていて何かいいなと思った時、やっぱり戻って写真を撮るんですよ。それはもう、使命感なんですね。立ち止まるっていう事が基本。皆が一定のスピードで歩いていても、気付いたことがあれば立ち止まるんですね。

しかし、そこに気付くためには『感じる心』が大事なんです。感じられる心と反応出来る身体をニュートラルなモノにする方法って、一番むずかしいことなんですが、世の中的には、いろいろ方向あるじゃないですか? それで『ぼくのおすすめは?』と聞かれたら、いや、むしろ聞かれていなくてもおすすめなのがサウナです。

CAMERA ©Masanori Ikeda x FSC(フィンランドサウナクラブ)

五感への回復がメチャクチャすごいんです。身体も自然なんだって気付けたのがサウナでして、そこからの経緯は、永遠と話しが長くなるのでいきなりはしょりますが、結果的に今回ぼくは作品としてサウナを作りました。

カメラの語源は『小さな部屋』という意味だそうです。この作品は、『サウナ』を『小さな部屋』=カメラに見立てています。そして車輪をつけることで、物語がはじまり、旅に出るのです」

市井:「なるほど、『感じる心』を取り戻すためにサウナに入る。僕もやってみます!」

三宅:「落ち込んでいる時とかは撮る対象は変わりますか?」

池田:「表現に関して言えば、落ち込んでいる時は、『落ち込んでいるぞ!』っていうチャンスが来ますよね。歌謡曲見ててもやっぱり、失恋した時や落ち込んでいた時の経験が結果的にいい曲になってるじゃないですか。なのでそれだけ心が繊細な分、気づくことをチャンスと捉えます。人間の感情はそこまで理路整然とは生きていけないものですが、そういうもどかしさが『ユーモア』だと気が付く。だから僕は気持ちを整えるためにサウナに行って、そんな自分の乱れていた部分を俯瞰視すると可笑しくなるんです。

それから、もうひとつおすすめしたい、快適な生活を過ごすための遊びは、もうあえて『遊び』っ言っちゃいますけど、早起きです。たとえば毎日4時半の定時に起きると、冬に向かってどんどん日が短くなるのがわかるんですね。そんなことは当然知ってたけど、わざわざ観察し習慣化にしてみるのもすごくいいんです。ちょっと前まで4時でも明るかったのが、日の出が1日1分ずつずれているんです。

時計の時間ではなく、太陽の時間に自分を合わせると、周りの変化に気が付いて、時間に追われる感覚から解放されるんですよ」

市井:「実は、さっきお話ししたhalettoのWeb CMは朝が舞台でして……突然ですが是非ご覧ください!」

池田:「見たい、見たい!」


haletto Web CM(60s 男性篇)

池田:「あぁ、こういう事だね。良い画だね」

市井:「午前2時から定点でカメラをセットして撮影を始めました。そして6時間後、すっかり夜が明けた朝の空を撮影しました。まだ暑かったので夜はしばらくセミの声が聞こえたり、夏夜特有のじめじめ感があったりで、おまけに深夜なので眠い。でも、ある時間にそんな闇の音が小鳥たちの声に変わって、その時、撮影部やスタッフ皆で『ハッ!』としたんです」

池田:「それ、わかるわかる!」

市井:「夜と朝の境目で、普段見ている風景が変わる瞬間に、僕らは感動しました。そのあとは普通の朝が来て、日常は始まりましたが」

池田:「そういうの、もっと紹介していきたいですよね。朝早く起きるのなんてダセーって思っていたのにね。寝ないで働けよ! という時代を過ごしてきたから。朝まで踊り狂うぜー! みたいな欲もあったりして、それが元気の象徴だったから」

三宅:「はははっ」

■「朝の時間を大切にする、日々を見つめ直す」

池田:「今は、季節の移り変わる様を毎日写真に撮って、LINEグループの仲間に送るんです。それで仲間の誰が、鳥が入った瞬間の写真とかが撮れて盛り上がったりしてるんです(笑)

実は夜よりも朝の方が集中力は4倍高いと言われているみたいで、理想は午前中に仕事が終わらせる。その方が最終的にパフォーマンスが高い結果を生み出しているそうですね」

市井:「わかります。僕もコピーとか企画を考える時、断然朝の方が進みます。徹夜した企画よりも絶対、朝の企画の方がすっきりしています」

池田:「僕は今、時間管理術っていう本を読んでいるんですけど、すごく面白いですよ。自分の時間を管理するっていうことを技術的にやるんですけど、とても有効だと思います。

朝の時間を集中してガツってやると、あとはもう、コーヒー飲みつつ鳥の声とかを聞いて原稿を書いたり、これも理想ね(笑)。でも実は、歴代の芸術家や企業の社長さんやスポーツ選手の統計も基本ルーティンなんですって。

そういう偉人たちって才能が目立つから一見破天荒な生活習慣に思いがちですが、例えば、ピカソなんかにしても、朝起きてすぐ絵を描いていたみたいですね。それから庭を散歩して朝食。このルーティンを続けているから、世界で1番多くの作品を残せていたようです。

イチロー選手やキングカズも毎日同じことの繰り返しを行っていますよね。しかもそれ全然、簡単じゃないんですよね。でもやってみる価値としては、質が高いものを生み出すために必要な技術が、時間の管理でした」

市井:「実はhalettoのWebサイトにある『halettoのことば』、毎日変わるんですけど、基本は、その日の朝4時に起きて僕が書いています」

池田:「その習慣、すごく重要ですよ。習慣化こそ心強い味方ですからね。」

三宅:「私は、サボっちゃいそう……」

池田:「うん、オレも(笑)。でも、コツコツ出来ることをいくつか続けると、できないことが出来るようになるんだって! 車の運転にしたって、『絶対無理!』って何度も思ったけど、次第に訓練することで体感的に出来るようになったりするから、そういう毎日コツコツ出来たことや、感じれた日々を褒めてあげる時間を習慣化にするのが、ポイントのようですよ」

市井:「大切なことは、小さなことの習慣化ですね、是非実践してみます!」

(了)

 

池田晶紀

写真家 / Photographer
1999年自ら運営していた「ドラックアウトスタジオ」で発表活動を始める。2003年よりポートレート·シリーズ『休日の写真館』の制作·発表を始める。2006年株式会社「ゆかい」設立。2010年スタジオを馬喰町へ移転。オルタナティブ·スペースを併設し、再び「ドラックアウトスタジオ」の名で運営を開始。国内外で個展·グループ展多数。アーティスト三田村光土里とのアートユニット「池田みどり」としても活動。
現在、Coyote「水草物語」で連載中。フィンランドサウナクラブ会員、サウナスパ健康アドバイザー、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター、かみふらの大使など。

http://yukaistudio.com/

halettoは、アラウンドサーティーに贈る、まだ知らないTOKYOの新ガイドブック。知っているようで知らなかった東京という街の魅力を紹介します。都心だから守られた豊かな自然、歩いてみてわかった街のすがたとそこに住むひと、美味しい発見。あなたが素敵な休日を過ごすための情報をWebマガジンで発信、ワークショップ・イベントを通して価値観を伝えます。

この特集について

観察、東京ウォッチング

観察、東京ウォッチ

もう10月です。今年も2ヶ月とあとわずか。緑葉の木々もだんだんと色変わりを始めて、毎日通る街路樹を見るたびに1年が過ぎ去る年月の移り変わりを、季節を通じて感じさせられます。春と秋。この二つの季節は特になにか敏感になる季節。周囲の変化が自然と自分を意識させます。 さて、何を見に行きましょう。「見ること」を通して、あらためて日常を感じる。普段は見過ごしていた、気付かなかった街の痕跡を探して、今まで知らなかったことを知る。そして、あたらしいことを発見する自分を見つける! そんな素敵な日々の旅に出発しましょう。