ジャズバー|横浜の音を聴く 野毛「DOLPHY」

夏のある夕方、JR桜木町駅は、みなとみらい大盆踊りへ向かう浴衣姿でいつもより華やかな様子でした。ゆずがストリートライブをしていたことでも有名な桜木町には、ランドマークタワーや観覧車のコスモクロックが見えるデートスポット「みなとみらい」と、ディープな飲み屋が立ち並ぶ「野毛」の2つの顔があります。今夜は、そんなディープな街「野毛」へ。

野毛

港町の横浜は、戦前より海外の文化の流動が盛んで、初めてジャズの演奏が行われた横浜国際映画劇場もこの野毛にありました。今でこそ、音楽を聴きながらお酒を嗜むというスタイルはふつうですが、ジャズバーの前身になっているのは昭和初期にできたジャズ喫茶。レコードをかけながら珈琲やお酒を嗜む場所で、ライブ演奏もあり、それがジャズバーの始まりでした。

DOLPHY

JR桜木町駅から野毛方面へまっすぐに伸びる“音楽通り”を抜け、小径を入ったところに「DOLPHY」はあります。二階には老舗感の漂う緑色の看板が、一階には2号店の「DOⅡ」があります。

階段を上って、年月を経た木製の重たい扉を開くとシンガーの女性と男性が。リハーサル前の緊張感の漂う店内は、全体的に照明が落とされ、オレンジ色の灯りにぼんやりと照らされていました。

マスターは一階にいるとのことで、降りるとラフな装いで談笑するおじさまがいました。

DOLPHY

DOLPHY

『DOLPHY』のマスター小室恒彦さんです。通称ツネさんと呼ばれる野毛界隈のジャズバーの大御所マスターです。halettoの取材だということを伝えると、今日だったけ、忘れてた、と笑いながら再び二階へ。リハーサル前のステージチェックや照明調整のあと、お話を聞きました。

DOLPHY

ツネさん:「当時主流だったジャズ喫茶ではなく、お酒と音楽を楽しめる場所を作りたくて、1980年から横浜・本牧でジャズバーを始めて10年後に野毛に移転してきたんだ。今はジャズバーとして営業しているけれど、元々はロックも好きでジャンル問わずレコードをかけていたんだよ」

「DOLPHY」のマスター小室恒彦さん

ここ「DOLPHY」は、年間360日以上もライブが行われ、ジャズミュージシャンを志す若者の登竜門となっていますが、始めた当時は週に2、3回のライブ。ツネさんの親しみやすい人柄と、音楽への愛情がライブの数を増やし、今の「DOLPHY」へ繋がっていることがお話を聞いていても伝わってきます。

ツネさん:「シンガーのケイコ・リーさんやギタリストの小沼ようすけさんも出演していたよ。ほかにもピアニスト大西順子さんや板橋文夫さんもよく出てくれていた」

「DOLPHY」のマスター小室恒彦さん

ジャズ界の大御所たちの名前が並び、歴史を感じながらも、ツネさんの人柄にどんどん惹かれていきました。目は悪いけど耳は良いんだ、という冗談を言いながら笑う姿は、初対面とは思えないほどホッとさせられる安心感がありました。

ジャズバーと言えば、ウイスキーを片手に聞き入っているイメージですが、「DOLPHY」のお客さんは老若男女、幅広い世代の人が訪れるんだそうです。ドレスコードがあるお店もありますが、ここは、ライブ中の私語は控えめにということは守ってほしいけれど、ライブやこの空間を楽しむのが一番大切だとツネさんが教えてくれました。月に一度行われているジャムセッションと呼ばれる参加型のステージでは、最近14歳のサックスプレイヤーが「DOLPHY」の門をたたき、プロへの道を切り開いたという。実力主義の世界は、これだから刺激的で素敵に見えるんだろう。

実際に今日のライブを見せていただきました。今日のライブは、サックスプレイヤーの皆川トオルさんを中心に、シンガーのキャロル・山崎さん、ピアニストの田村博さんの3人編成で行われ、ドラムセットやオーケストラでのライブ演奏もあります。

どの席からもライブが見やすいテーブルセッティング。ジャズライブは敷居が高いと感じるかもしれないけれど、POPSのライブと違い、アドリブで演奏が進んでいくのが醍醐味です。決まった譜面や尺で展開されていくのではなく、ステージの上でのミュージシャンの掛け合いによってその日にしかないステージが繰り広げられていくため、曲やアーティストを知らなくても感覚で楽しむことができます。

ソロの掛け合いが繋がれていく中で、それぞれのミュージシャンの演奏への賞賛の意味を込めて、合間に拍手を送るのもジャズバーの嗜みです。気持ちいい演奏だった、と感じる瞬間には思わず手をたたきたくなります。

DOLPHY

動画配信やストリーミングで素敵な音楽と出会うこともあるけれど、生演奏の肌で感じる音の感覚は画面越しでは感じることができないもの。シンガーの目線、言葉の並べ方や息遣いも含めて、ライブは日常に寄り添う非日常のエンターテイメントで、抱えていた悩みが解ける瞬間に出逢えるかもしれません。歌詞の一編が自分とリンクして、点と点がつながることも。

私にとって、ジャズバーは粋な大人の遊び場の象徴。ふらりと出向いて、ジャズの生演奏とともにお酒を嗜む、そんな大人な女性になりたいと思っていました。

DOLPHY

素敵なライブ演奏と美味しいお酒を楽しみ、ツネさんに、また来ます、という言葉を伝えて、「DOLPHY」を後にしました。開演前の雷鳴が嘘のような雨上がりの静かな野毛の街を、音楽とお酒で満たされて歩いていると、なんだか心もとても穏やかでした。

DOLPHY

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DOLPHY

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JAZZ SPOT「DOLPHY」

神奈川県横浜市中区宮川町2-17-4 第一西村ビル2F
TEL:045-261-4542
定休日:なし
http://www.dolphy-jazzspot.com/

大阪生まれ。歌をうたうために高校卒業後、上京。海とビール、ひとり旅が好き。出かけるときは絶対アクセサリーをつける派。歌ったり作ったり書いたりしながら、自分らしい毎日を求めて暮らしています。

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