【scene 05 ― 陽炎、東京リーディング】広い東京の下、移り変わる空を読む

高く伸びる雲

涼しく凛とした秋が近づいて来ました。秋雨前線もあり、8月後半頃から10月頃にかけて、雨が降りやすい季節です。

忙しくて天気予報をチェックし忘れて外出してしまい、雨に降られてしまった経験がある方も多いのでは。そんな時、ふと空を見上げて、天気がなんとなく予想できたら……。空が読めたら、世界がわかるような気もします。

一般財団法人日本気象協会の気象予報士・防災士の吉田直人さんに「空の読み方」についてお聞きしました。石川県金沢市出身の吉田さんは、大学時代に気象予報士の資格を取り、2011年に日本気象協会に入社。天気に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。

気象予報士・防災士の吉田直人さん

吉田さん:「金沢って、非常に雨が多い土地なんですね。小学生中学生の頃って毎朝テレビや新聞の天気予報を見て、傘を持って行くかどうか考えていたんですけれど、自分で空をみてわかったら楽だなと思ったのが天気に興味を持ったきっかけなんです」

お天気のプロも、きっかけは朝の天気からだったんですね。今まで印象に残った天気について尋ねました。

吉田さん:「昨年の11月に東京で雪が降ったのを覚えていますか? 11月の雪は季節はずれで、過去50年以上なかった天気。11月に雪が降るっていう予測を出すことは、気象を知っている人には“そんなことありえないじゃない”って一笑されてしまうような異例なことでした」

都内の空

東京のお天気は雨か雪かの予測がすごく難しいんだそうです。北海道や東北は寒いので、マイナスまで気温が下がり雪になるので予測しやすいそうなのですが、東京は雪になるか雨になるかのギリギリの気温でしか、降らないそうです。

去年は滅多にない11月の雪予報。「雪」という予報を出さずに、もし当日雪になった場合の混乱を考えて、勇気を出して「雪が降る」という予報を出したそうです。

気象予報士・防災士さん2

吉田さん:「かなり勇気がいる予報だったんですけれど、結果雪が降ったので自分の中でナイスな予報が出せたなと思いました」

気象予報士は、過去の予報と経験をもとにして予測しています。でも、時には経験よりも直感とデータを糧に予報を出していかなければならないと実感したそうです。

天気図

吉田さんのように季節はずれの雪をズバリ予想するのは、私たちには難しいと思いますが、空を見て天気の予測ができたら傘を持っていくかどうか、洗濯物を干すかどうかくらい知りたい! では、天気というのはどのように変化していくのでしょう。

気象予報士・防災士さん3

吉田さん:「一般的に言われているのは、天気は西から東に移ります。これは日本の上空に偏西風と呼ばれる西から東へ吹く風があるためです。雲とか低気圧などは西から東に動いてくるんですね」

遠くに黒っぽい雲

極端な話だと、自分の真上の空が晴れていても、西の方に黒っぽい雲が来ていたら、何時間後はその雲がやってきて雨が降るという可能性が高いそうです。このように、実際の空の様子から天気を予測することを、観天望気(かんてんぼうき)といいます。西側の天気を見る=空を読むとこの後の参考にしやすいということでした。

気象予報士・防災士さん4

吉田さん:「それからよく言われるのが、夕焼けが綺麗だと次の日が晴れるっていう話。夕焼けは太陽が西の空に沈むので、夕焼けが綺麗に見えるかどうかというのは、自分の西側の空の状態に関わってくるので、実は科学的な根拠があります」

夕焼け

同じことをもう一度言いますが、「夕焼けが綺麗に見えたということは、つまり西の空に雲などがないということなので、明日は晴れる確率が高いということ。」やっぱり、夕焼けっていいですね。しかし一方で、吉田さん曰く、夕焼けの色がとても赤い場合、西の空に水蒸気が多いことを表しているので、夕焼けが綺麗に見えても天気が崩れる可能性もあるそうです。

吉田さん:「天気を見るのにわかりやすいのが、雲の種類です。よく入道雲なんていいますよね、あれは積乱雲という種類の雲です。もくもくした雲の下では、強い雨が降っているんです。なのでこういう雲が見えたり近づいてきたりすると、この後雨が降る可能性があるなというのが予想できます。ただし入道雲(積乱雲)の場合、必ずしも西からやってくるとは限りません。北や北西などからもやってくることがあるので、入道雲が空に浮かんでいるときは西だけでなく北の方も気を付けた方がいいです」

入道雲

朝、家を出る時とかカーテンを開けた時、空のどこを見れば天気を予想できるのか聞いてみました。

吉田さん:「まず、ひとつは晴れているかどうかを見てください。あたりまえじゃないかと思うかもしれませんが、ここで西の空の方を見ておくと、この後下り坂なのか、晴れが続くのかが分かってきます。西の空に雲が多ければこの後曇りに、その雲が黒っぽかったら雨にという感じです」

さらに、飛行機雲が出ているかどうかというのも、意外と天気予報の役に立つのだそうです。

飛行機雲

飛行機雲が見えるかどうかは運ですが、出ていてもすぐ消える場合は天気が安定している証拠で、飛行機雲がずっと残っている状況になると、この後お天気が崩れがちになってくるという予兆になる、と吉田さん。大気中に水蒸気が少ないと飛行機雲がすぐに蒸発して消えていってしまうのですが、長い間飛行機雲が残るのは、水蒸気が多いということで、雨になる確率が高くなるということです。

長い時間残った、飛行機雲の跡

長い時間残った、飛行機雲の跡

空に浮かんでいる雲は、浮かぶ高さ、形や特徴で種類が10種類もあり、「十種雲型(じっしゅうんけい)」と呼ばれます。

十種雲型

「十種雲型」haletto編集部作成

吉田さん:「今見えている雲が1種類しかないということはめったになく、2、3種類の雲が同じ空の中にあることがよくあります。おのおの浮かんでいる高さが違います」

色々な高さの雲が同時に見える景色

色々な高さの雲が同時に見える景色

秋の空によく見かけるのが、刷毛で擦ったような雲で「巻雲」といいます。この雲も天気が崩れ始める最初に出てくると言われ、次第に厚い雲になっていって、最後雨が降るというようなことが言われています。そのため巻雲みたいな雲が見えていたら、今晴れていても、折りたたみ傘ぐらいは持って行った方が良いそうです。

刷毛ですったような巻雲

刷毛で描いたような巻雲が高い位置に浮かぶ、遠くに黒雲が見える

吉田さん:「巻雲が見えたからすぐに雨ということはないんですが、数時間後から半日後、または一日後に雨が降ってくるという可能性はあります。巻雲が見えていても、ちょっとコンビニに行こうということだったら傘はいりませんが、明日のお天気として見るとしたら雨が降る可能性はあります」

都内の空

さらに夜空にも明日のお天気がわかるヒントがあるそうです。ポイントは「月」と「西の夜空」です。

吉田さん:「月の周りに暈がかかると翌日天気が崩れる可能性が高いです。分厚い雲がかかってしまうと、そもそも太陽も月も見えなくなるのですが、月のまわりに暈が見えるということは、薄い雲がかかっている状態で、雲が薄いということは高いところに雲がある状態ということで、この雲が厚さを増しながら近づいて来るということになります。そのため月の暈が見えていたら、明日は雨か曇りかな、といった予報ができます。」

きれいな満月

吉田さん:「それから、あとは西の空を見てください。星が見えないぐらい雲が出ていたら、やはり次の日の天気は崩れがちの予報に。西の空がすっきりしていて、星が見えやすい状態というのは大気中の水蒸気量とも関わってくるので、星がよく見えれば西の空の天気の状態は悪くないということがわかります」

日没後の空

秋になると「天高く」「空が高い」などという表現をよく耳にします。9月に入って涼しい日が続いていますが、空でも季節を感じることができます。吉田さん曰く、いわゆる 「秋らしい空」というのは「高いところに雲がある空」なんだそうです。夏だと反対に低い位置に雲ができやすいのですが、秋は高い位置に雲ができるので、地上から見上げた時に、夏空と比べて、ぐっと高く見えるということです。

秋らしい空

一通り天気を見る際のポイントを伺った後、実際に公園に移動して、今日の空を見上げてみました。

空を見上げる

この日の雲は、高さによって大気の状況が違うというのがわかりやすい空で、飛行機が飛んでいる高さによって雲がずっと残っている部分と、全く雲を引かないところがありました。

すぐに消えていった飛行機雲

すぐに消えていった飛行機雲

吉田さん:「実は空の低いところと高いところで風の流れが全然違うところがあって、見ていると上の雲と下の雲って全然違う方向に動いていることがよくあります」

風の流れが全然違う

空を読むなら、西の空。秋は巻雲が出やすい季節なので、朝にそんな雲を見かけたら、傘を持って行くと安心かもしれません。スマホから顔を上げて、朝にはカーテンを開いて。空を見上げるとわかることは、思った以上にたくさんあります。自分の目に見える世界を少しだけ深く、読み解いてみませんか。

空

空

空

空

空

空

空

空

ライター

福島県生まれ。旅行やお祭が大好きで、日本全国あちこち周っています。猫好きの猫ストーカーです。

この特集について

陽炎、東京リーディング

暑かった日々も過ぎ去りました。夜風はふいに冷たく、少しずつ秋を感じる、まるで風邪の治りかけのようにぼんやりしていた視界が、急にピントがあってきたような季節です。秋雨降る街を眺めながら、ふと、交差点に咲く色とりどりの傘に美しさを感じます。 センチメンタルな気分。今年も残り三分の一だと思うと、「今年はなにしたかな」「去年の今頃はどこにいただろう」とつい振り返ってしまうこともあります。そんな時、なにかを映し鏡にして、街のどこかに、自分の輪郭を探したくなります。 「読むこと」で自分の今を知る。空を読む、街を読む、本を読む、手相を読む、歌を読む。いろんなことを読み解いて、2017年の今を愉しみます。さぁ、街に出て歩きましょう。