【scene 03 ― 陽炎、東京リーディング】歌を読む ― はじめての「秋のhaletto歌会」

歌を読む。それはふだん見ている風景やことに対して、あれはなんだったかな、これはなんだろう、と言うように、よりピントを絞る行為です。漠然と考えていたことが五七五七七のことばの中に濃縮されて、自分が何を見ていたのか、気持ちがことばとして炙り出されます。時には、思いも寄らない、意識的に考えてもいなかったこと、正に「こころ」とも言えることが短歌を読むことで表出してきます。haletto編集部でふだん考えていること、「休み」をテーマに歌を読みました。

最近は心がどきどきしてるから 一駅手前で降りてみようか  【三宅】

― どきどきはなんのどきどきなんですかね。いろいろな意味で気になりますが、一駅手前で降りる、二、三キロメートル歩いて帰るということは、なかなか家には帰りたくない、気になる飲み屋でも見つけたのでしょうか、後ろ髪を引かれる情景が目に浮かんできます。歩くことは健康にいいですね。

駅

 

寄り道を 一緒にしたい そのあとに いつものアイス かって帰ろう  【浅田】

― 寄り道を一緒にしたい人。いいですね。初々しい気持ちが感じられます。いつもはひとりで買って帰るアイス。今日はふたりで買って帰る。休日ですから、きっと、帰ってサザエさんでも見ながらふたりで食べるのでしょう。想像力を掻き立てられる歌です。やっぱりスーパーカップのバニラでしょうか。

アイス

 

休日は ジーパンを履き 原っぱへ ダンボール箱 芝生でソリ  【鈴木】

― まるで少年のよう。金八先生のオープニング。荒川沿いの土手を滑り降りる感じですね。至極健康的な休日ですが、きっとひとりではなさそうですね。意外とこれもまた良いデート。キャーと言って、ふたりで滑り降りる数秒間、その瞬間はふたりにとって数時間に感じられることでしょう。

土手

 

夢の国 千葉県だけじゃないはずだ 行こうよ見よう 自分の足で  【折戸】

― よっぽどディズニーランドが好きなんでしょう。カリフォルニアやパリ、香港、上海にもありますからね。しかし、この千葉県が指すものは、千葉県が「夢の国」であり、他の都道府県もまた「夢の国」ともとることができます。それにしても、世界のディズニーないし、四十七都道府県を自分の足で回ることは結構大変そうです。

池

 

白飯と魚と汁とおつけもの それだけでいいと 言ってくれるあなたを見遣る  【三宅】

― 「見遣る」と書いて、「みやる」と読みます。遠くの方を見ることです。この歌は距離感が半端ないですね。部屋で質素に食べている朝ごはんでしょうか、しかし、一緒に食べていた人はそこには居なく、「わたし」は「見遣る」わけです。まるでアルプスの草原を見渡すかのような遠い風景を想像してしまいます。意味深ですね。

食卓

 

日帰りで どこかへ行きたい 出掛けたい そう思いつつ 陽は沈みゆく  【佐藤】

― 結局どこにも行っていません。こういう日、よくあります。こういう日に限って天気もよく、夕陽も綺麗だったりするんです。それで、綺麗な夕陽だな、とか思いながら、日は沈み、おもむろにコンビニに行く。一見、ぜんぜんダメな1日のようですが、身体的にはどこにも行っていないので、凄まじい回復力、明日からの仕事も頑張れそうです。

夕日

 

帰りみち まってといえず 立ちどまり ふりむくまでの 時間かぞえる  【百江】

― 乙女。でも気持ちは伝わっていたのですね。「まって」、とは言えなかったけれど、「ふりむくまでの 時間かぞえる」ということはとどのつまり、振り向いてくれたのでしょう。その顔はきっとふたりとも笑顔だったでしょう。

夜道

と言うように、歌を読みました。ふだん何気なく皆が考えているロマンチックな妄想が表出してしまったようです。歌はいいものですね。

短歌ではありませんが、halettoのトップページには、毎日halettoの「ことば」を掲載しています。毎日違うことばで、あなたの1日をささやかに応援しています。

(選者:市井 了)

この特集について

陽炎、東京リーディング

暑かった日々も過ぎ去りました。夜風はふいに冷たく、少しずつ秋を感じる、まるで風邪の治りかけのようにぼんやりしていた視界が、急にピントがあってきたような季節です。秋雨降る街を眺めながら、ふと、交差点に咲く色とりどりの傘に美しさを感じます。 ...

こっちもおもしろい

気になるコラム