お寺にステンドグラス 船橋「萬徳院釈迦寺」

太陽の光を受けて、神秘的な輝きを放つステンドグラス。キリスト教の一場面やシンボルなどが描かれ、西洋の聖堂や修道院で多く見られますが、なんと日本のお寺にステンドグラスを取り入れた場所があるのです。仏教なのに、一体なんでだろう。

JR船橋駅北口からバスターミナルへ向かい、1番乗り場から船橋グリーンハイツ行きのバスに乗車。15分ほど乗って到着した停留所「秋葉神社」で下車し、県道8号線沿いに北へまっすぐ進むと、3つ並んだ金色の塔が徐々に見えてきます。

萬徳院釈迦寺引きの写真

釈迦寺外観

ここは、「萬徳院釈迦寺 関東大本山 船橋中央」。現代的な造りで、金色を基調とし、頂上には特徴的な黄金色の塔が3つそびえ立つ、私がイメージしていたお寺とはだいぶ異なります。金色の窓枠には、早速、外からでもステンドグラスが見えました。

総住職の竹田明秀さんに、まず案内していただいたのは1階エントランスの作品。蓮の花の上に建てられた五重塔を中心に、6人の天女が舞っている図です。

萬徳院釈迦寺ステンドグラス

竹田さん:「これは『極楽浄土図』。仏教の世界で西方にあるとされる極楽浄土を描いたものです。中央の塔は阿弥陀如来を表しています。また6人いる天女は、実は『迦陵頻伽(かりょうびんが)』という、上半身が人間で下半身が鳥の姿をした生き物なんです」

下半身が鳥? と不思議に思い、天女たちの足元に注目しますが、鳥らしき描写はないように見えます。

極楽浄土図の天女

極楽浄土図の塔

竹田さん:「このステンドグラスでは、彼女たちは人間の姿で描かれています。半人半鳥の姿だと、迦陵頻伽を知らない人にはわかりづらくなってしまうため、天女の姿で迦陵頻伽を表現しています。本来の迦陵頻伽は美しい容姿をしていて、きれいな声で鳴くのですが、その特徴を楽器や花を持たせることで表しているんです」

五十嵐:「なぜ別のもので表現するのですか?」

竹田さん:「ステンドグラスはもともと、西洋で文字の読めない人にも絵だけでキリスト教の世界観や教えがわかるように作られたものです。現代の日本には、仏教の世界のことをよくご存知ない方が多くいらっしゃいます。そうした方々でも目で見て仏教の世界を理解していただけるよう、わかりやすさを重視してステンドグラスを作りました」

萬徳院釈迦寺の総住職2

萬徳院釈迦寺エントランスの階段

ステンドグラス導入の背景がわかったところで、エントランスの階段を上り、2階へと向かいます。金色の装飾がさりげなく主張している館内の様子を見て、特徴的な外観を思い出しました。

竹田さん:「仏教の世界は、本当は煌びやかなんです。死後の世界は良い場所だという願いが込められているんですね。当寺院では仏教の煌びやかな世界を表すために、華やかな装飾を施しています。頂上に建てられた3つの塔は、インド近辺で見られる仏塔『ストゥーパ』をイメージしているんですよ」

階段を上った先、廊下の中ほどに2つ目の作品がありました。磨き込まれた廊下や周囲のガラスにも映りこみ、いくつもステンドグラスがあるように見えます。

成道(じょうどう)図

中央に座しているのはお釈迦様。その周囲を、多くの人が取り囲んでいます。

竹田さん:「お釈迦様の周りにいるのは、実は悪霊なんです。悟りを開こうとしている釈迦の心を、あの手この手で惑わそうとしています。財産欲、色淫欲、酒食欲、権力欲、怠贅欲の5つの欲を表現しているのですが、釈迦は平然とした顔でこうした欲望や誘惑を断ち切り、悟りを開きました。この絵は『成道(じょうどう)図』といいます」

確かに言われてみると、悪霊たちは何かを企んでいるような顔つきで、欲を秘めた印象を受けます。彼らは耳が尖っているのが特徴で、普通の耳を描かれている小さな人は、地獄に落ちてしまった人間なのだとか。困ったような表情で、悪霊たちに付き従っています。

成道(じょうどう)図の案内

成道(じょうどう)図の悪霊

成道(じょうどう)図の悪霊2

最後に訪れたのは2階奥にある大本堂。朝夕の勤行や法要などで使われるというこの広間の最奥、釈迦像の背後に3つ目のステンドグラスが輝いています。釈迦をはじめ、3体の如来像と弁財天が並んで描かれた図です。両脇には実は仏教に由来するというシャンデリアも飾られ、これまで見てきた作品よりも一段と荘厳な雰囲気が漂っています。

大本堂外から見たステンドグラス

竹田さん:「これは『釈迦本尊図』です。左から薬師如来、阿弥陀如来、釈迦如来、大日如来、弁財天を描いています」

釈迦本尊図のステンドグラス

仏様は、特徴的な手の形でメッセージを発しているのだといいます。薬師如来は「どんな病気でも治しますよ」、阿弥陀如来は「お話を聞きますよ」、釈迦は「怖がらないで、どんな願いも叶えますよ」、大日如来は「仏の世界も人の世も一つ」と、それぞれが人々に伝えたい思いを手の形で表現しています。仏像の手に意味が込められているとは知らず、まじまじと手の形を見つめてしまいます。

萬徳院釈迦寺のシャンデリア

日本人にとって、身近な存在である仏教ですが、形式的になってしまっていたり、ほとんど意識していなかったりと、実はその深い意味をよく知らないことも多いように感じます。仏画を見ても何も知らなければ、なんとなく「仏様が描かれているんだなぁ」と通り過ぎてしまいがち。

でも、一つひとつの意味を知ると、急に味わい深く感じ、細部までしみじみと眺めてしまいます。もっと知ってみたいという気持ちも湧き起こってきます。仏教寺院の美しいステンドグラスは、身近すぎてよく知らなかった仏教の世界を、改めて見つめるきっかけをくれたのです。

「萬徳院釈迦寺 関東大本山 船橋中央」には、全部で3か所のステンドグラスがあり、一般の方も予約なしで自由に見学可能。全てのステンドグラスの絵は以前会長をしていた林泉道さんが作画したものだそうです。

ステンドグラス(座禅)

萬徳院釈迦寺 関東大本山 船橋中央

千葉県船橋市高根町2233-3
TEL:047-490-9000
営業時間:9:00-17:00(お彼岸及びお盆の期間中は18:00まで参拝可)
定休日:なし

ライター

埼玉県生まれ、群馬県育ち、東京都在住の関東人。エジプト、トルコ、ギリシャ界隈の歴史が大好きな世界史系歴女。シャーマニズム、古今東西の墓文化、ハロウィーンなどミステリアスなものにも惹かれる。

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