【墓地女が行く!③】― 雑司ヶ谷霊園に眠る「サトウハチロー」

昭和の詩人・サトウハチロー。彼は「小さい秋みつけた」など、誰もが一度は親しんだことがある童謡の作詞を手がけたことで有名です。かつて上池袋に居を構えていた彼は、豊島区南池袋の雑司ヶ谷霊園に眠っています。

サトウ氏は素朴で優しい作風とは裏腹に、転校8回・落第3回・勘当17回を記録し、小笠原諸島の更生施設に送られたこともある不良少年だったそう。当時の彼の様子を物語る、さまざまな逸話が残っています。

中学生の頃、体操の授業をよく抜け出していて、授業時の点呼は「サトウいるか」だけで済んだ(サトウ氏がいれば全員出席と見なされた)ことや、進級を心配する同級生から「サトウが大丈夫なら、われわれが落第する筈はない」と喜ばれたことなど。彼のくすっと笑えるエピソードは、枚挙にいとまがありません。

彼のお墓は霊園内の区画「1-5」にあります。管理事務所側から霊園中央通りを歩き、区画「1-5」を左折し、しばらく歩くと見つかるはずなのですが……見当たりません。

辺りを2~3周ほどウロウロし、「どうしようか……」と困り始めた頃、自分が単純に「佐藤家」というよくある墓碑銘で探してしまっていたことに気付きました。少年時代からあれほど個性の強かった人なら、きっと普通のお墓に大人しく収まっていないはず。

そこで、「詩人っぽいお墓!」と意識して改めて探し始めたところ、とうとう彼のお墓を見つけました。3行の詩と、「サトウハチロー」の署名が刻まれた、紛れもない彼のお墓です。

「ふたりでみると すべてのものは 美しくみえる」

墓石に刻まれたこの象徴的な詩は、サトウ氏自らが生前に選んだのだそう。

彼は数々の落第や勘当、更生施設での暮らしなど、ほとんどの人が体験しない多くのことを経験してきました。しかし、そんな自分の人生に卑屈になることなく、異なる環境に身を置いても、そこで新たに出会った師匠や友人との日々を存分に楽しみ、詩作の糧にしてきたのです。

自伝にも、自分がものを書いて暮らせているのは「先生と友達のおかげ」と記しています。墓石の詩は、その型破りな人柄や才能で人々を惹きつけ、多くの人に支えられた、彼自身の人生が詰まっているように思えました。

このお墓には時折、彼のファンがお参りに訪れるそうです。いつまでも子供心を忘れなかった昭和の詩人は、今でも多くの人の心の中でやんちゃな魅力を振りまいています。

サトウハチロー

サトウハチロー記念館提供

【参考文献】
『サトウハチロー 落第坊主』サトウハチロー(日本図書センター、1999年)

雑司ヶ谷霊園

東京都豊島区南池袋4-25-1
TEL:03-3971-6868
営業時間:8:30-17:15(窓口のみ、園内は年中無休)
定休日:年末年始(窓口のみ、園内は年中無休)

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