【scene 02 ― 爽快、東京ハイク】美味、山ごはんをつくろう!

「山ガールって呼ばないで」
そんなキャッチフレーズが印象的な漫画「山と食欲と私」(作:信濃川日出雄、出版:新潮社、連載:くらげバンチ)。
「山ガール」と呼ばれるのを嫌う自称「単独登山女子」である日々野鮎美(27歳/独身/会社員)が、一人で山を登り、そこで美味しい「山ごはん」を作って食べる、というのが一話ごとの基本ストーリー。

山と食欲と私

(C)信濃川日出雄/新潮社

注目すべきは、話に出てくる山ごはんメニューが、今すぐ山に行って再現したくなるほどどれも美味しそうなことです。早速、漫画「山と食欲と私」の「山ごはん」メニューを、実際に再現してみました。

山と食欲と私からの1コマ

(C)信濃川日出雄/新潮社

荒川岩淵関緑地バーベキュー場

7月上旬。やってきたのは東京都北区にある「荒川岩淵関緑地バーベキュー場」。荒川の河川敷に広がるこの開放的なバーベキュー場で、漫画に登場した「山ごはん」に挑戦です。

今日実際に作ってみるのは、主人公の鮎美ちゃんが第2話で作った「欲張りウインナー麺」と、第35話で作った「砕きミックスナッツのペペロンチーノ」、第56話で作った「ザ・ビール飯 ビーフジャーキーMIX」。家から持ってきた材料もありますが、ほとんどはここに来るまでのコンビニで購入しました。

欲張りウインナー麺

(C)信濃川日出雄/新潮社

砕きミックスナッツのペペロンチーノ

(C)信濃川日出雄/新潮社

ザ・ビール飯 ビーフジャーキーMIX

(C)信濃川日出雄/新潮社

山ごはんの食材

用意した道具はアルミ製の調理器具「メスティン」をはじめ、登山が趣味の知り合いに借りたミニフライパンや小さいお鍋など。

山ごはんの道具

メスティン(トランギア)1,600円、トレック 900(スノーピーク)2,380円、魚焼きグリル対応グリルパン(ニトリ)740円

川沿いだからなのか、思ったより風が強く吹いています。不慣れなバーナーを使うのは不安ですが、「単独登山女子」鮎美ちゃんに近付くために、ここは覚悟を決めて挑戦します。

川の写真

「じゃあ、始めましょうか!」まずは「欲張りウインナー麺」。お湯を沸かして、麺を入れます。

お湯を沸かしてラーメンを入れる

ちょっと高いウインナー(今回は御殿場高原あらびきポーク)を入れます。

ウィンナーを入れる

「いただきます!」

ラーメンをいただきます

調理工程としてはいたって簡単ですが、外で作って食べる熱々のラーメンは、シンプルながら本当に美味しい。ちょっとお湯が多くて味は薄くなってしまいましたが、ウインナーのプリッとした食感と旨みが最高です。

次は「砕きナッツのペペロンチーノ」。まずは早茹でパスタをお鍋で茹でていきます。

パスタをゆでる

その間に、ミックスナッツを川原にあった石で叩いて砕いていきます。強く叩きすぎたのか、袋が破けました。

ナッツを砕く

次に、フライパンにオリーブオイル、鷹の爪、乾燥にんにく、砕いたミックスナッツを入れて炒めます。

ナッツなどを炒める

鷹の爪が真っ黒になりました。ちょっと火が強かったかもしれません。

パスタの茹で汁を加えて混ぜた後、パスタを入れ、さらに塩コショウとバジル、パルメザンチーズで味付けしたら、完成です。

ペペロンチーノ完成

お味は、とにかく最高に美味しいです! ガーリックの風味と、ナッツのコクと歯ごたえが絶妙です。これは家でもう1回作りたいレベル。ここで我慢できずビールを一口。

ビールをひとくち

実はこのビール、ただ飲みたくて飲んでいるわけではありません。この後作る「ザ・ビール飯 ビーフジャーキーMIX」のために、この「半分残ったビール缶」が必要なのです。

ビール缶をあける

ビールを半分くらい飲んだら、缶切りで蓋を開け、そこに生米とビーフジャーキーを投入します。

ビールに生米とジャーキーを入れて沸かす

20分ほど火にかけたら、蓋をして15分ほど蒸らし、完成です。

蒸らしてできあがり

ちなみにこちらのビール飯、漫画の中での鮎美ちゃんの感想は・・・。

山と食欲と私の1コマ2

(C)信濃川日出雄/新潮社

「美味し・・・・・・く・・・・・・ない!?」

美味し・・・・・・く・・・・・・ない

これ、本当にちょっと、なかなか、全部食べ切れるか微妙なお味でした。そこで登場したのは、鮎美ちゃんも漫画で「お助け万能調味料」として絶賛している「カレー粉」。カレー風味にアレンジすることで、ビールの苦味が少しマイルドになり、なんとか完食できました。

微妙な顔

子供の頃は家族でよく川にキャンプに行ったり、公園にピクニックに行ったり、アウトドアがとても身近なところにありました。でも大人になってしまうと、腰が重いですね。

二人の後姿

「山と食欲と私」に出会って改めて気付いたのは、自然を感じながら外で過ごすことの気持ち良さ。真っ青な空の下で、自分がその時食べたいものを作って食べて、それが美味しければ、日々の嫌なことなんて全部吹き飛んでしまうようです。

一人でも山に登って、その場所での出会いや時間を心から楽しむ鮎美ちゃんの気持ちがわかりました。

後日、作者である信濃川日出雄さん(以下、信濃川さん)と、編集担当の新潮社折田安彦さん(以下、折田さん)にお話を伺いました。

編集部:「昨年、出たばかりのこの漫画を読んで、すぐにメスティンとバーナーとオイルサーディンを買ってしまいました」
(三宅編集長、信濃川さんにインスタを見せる)信濃川さん:「(笑)そのインスタグラム、たぶん見てます。自分の作品にまつわる投稿は、すべて見るようにしているんですよ」

編集部:「先日河原で、ウィンナー麺と、ミックスナッツのペペロンチーノ、ビール飯をつくりました」

信濃川さん:「漫画のままの写真ですね。ビール飯までやったんですか!」

編集部:「まずい、というメニューも登場するのがいいよね、と話していたんです。作品のごはんはどのように考えているんですか?」

信濃川さん:「実際に山でつくったものをベースに、レシピはすべて自分で考えています。ビール飯は本当にまずかったのですが、山なので食べきるしかないんですよね」

折田さん:「わたしがかつて失敗したチーズフォンデュ(4巻41話)も、登場しているんです。おしゃれなメニューだったのに、おいしくなかったので余計悔しかった・・・」

編集部:「ビール飯はやっぱり…。苦味が強くて。チーズ入れたり、カレー粉を入れたりと工夫したのですが」

信濃川さん「わたしはキリンの一番搾りでつくったんですよ。ビールの銘柄でも味が変わるかもしれませんね」

編集部:「現地でよく作るメニューはありますか?」

信濃川さん:「やっぱり、ウィンナー麺は、どこでも買えるしおいしいのでよくやります。山らしい『ばかばかしい』メニューがいいですよね。もちろん、ブルスケッタ(1巻10話)みたいな凝ったメニューも、楽しいと思いますが」

折田さん:「この話で、山頂で酒盛りをして怒られたエピソードは、実は私の話なんですよ…」

信濃川さん:「生ハム(1巻 10話)、塩フレンチトースト(5巻53話)、桃(4巻39話)は、うまく描けたのがうれしくて、すごく思い入れがあります。おいしそうに描くのは、いつも苦労しますね」

インタビュー写真

編集部:「どうしてこんなに、女子目線がわかるんですか? 鮎美ちゃんの行動や考え方にいつも共感していて、リアルだなあと思って」

信濃川さん:「女子、という意識はしていなくて、常にこの人はどう思うか想像して描いています。おいしいものをたべたら、おいしい! というのは普通のことですよね」

編集部:「確かにみんな、表情が自然です」

信濃川さん:「コピー機でスクワットするシーン(1巻4話)は、働いている登山好きなら、オフィスでどうトレーニングするかな、と考えて描いてみました」

編集部:「鮎美ちゃんの行動や山の上で出会った人、出来事は、実体験ですか」

信濃川さん:「もちろん、私のエピソードもありますが、山友だちからきいた話などを参考にしていることもあります。飲み会のあとは、教えてもらった話をネタ帳に書き留めることもしばしばです。鮎美ちゃんは特に、複数のモデルをミックスしています。共通の知り合いには、『この回はあの子だね』なんて、よくつっこまれていますよ」

編集部:「この作品がうまれたきっかけを教えてください」

信濃川さん:「これまで、いろいろなジャンルの漫画を描いてきました。週刊連載をしていたとき、とても忙しい中で、自分が空っぽになっていくような気がしていて。趣味をはじめようと、山に登りだしたんです。もともと、山育ちというのもあって。続けていくうちに段々蓄積したものを、漫画にすることにしたんです。登山漫画をやろう、というところで、戦略的な面も含めて、折田さんと相談しました」

折田さん:「もともと『ライフスタイル漫画』というものをやろうと話していて。漫画って、とっつきやすいじゃないですか。そこで『登山っていいな』と思ってもらえたら、あたらしい価値を提案できるのではないかと。これだけアクティブな作家さんもめずらしいので、すごくあっていたと思います」

信濃川さん:「人に会いに行く漫画家なんです。もともと、アウトドアメーカーや登山関係の友人も多くて。彼らが広めてくれたことも、この漫画をたくさんの人に知ってもらえた大きい理由かもしれません。『登山のある生活』へのあこがれがある人たちへ入り口となるような作品にしました」

編集部:「作品の中での『ごはん』というものの位置づけって、何なのでしょう」

信濃川さん:「決して、山だけ、ごはんだけにフォーカスしたいわけではないんです。平日都会で仕事をして、週末登山にいく、という生活を魅力的に伝えたいと考えています。鮎美ちゃんの日々の行動を通して、『山とごはんのある生活』を感じてもらえるようにしたいと」

折田さん:「毎度、ごはんをつくって食べる、という行為が一種のカタルシスになっているんですよね。いわゆるバトル漫画にでてくるような『たおすべき敵』だったり、恋愛漫画でいう『落としたい、好きな人』がいない漫画ですから。つくって、食べるまでを描写している」

信濃川さん:「『食欲』が、毎話たおすべき敵といってもいいのかもしれません」

編集部:「最近読む漫画、そういった、明確な敵やミッションのないものが増えてきたかもしれません。ゆったりしていて、それでいて芯のある漫画、といいますか。大人になったんですかね」

折田さん:「いま、出版社としてもライフスタイル漫画を推しているところもあって。昔なら『モテる』をテーマにしていたところが、いまは『そもそも生きるって楽しい』というテーマになったんですよ」

編集部:「これから、鮎美ちゃんの恋愛はどうなっていくのかなあ」

山と食欲と私

作:信濃川日出雄
出版:新潮社
無料WEB漫画サイト「くらげバンチ」にて、ほぼ毎週金曜日に更新中!
http://www.kurage-bunch.com/manga/yamashoku/

haletto編集部が実際につくった際の手順はこちら

実際に作る際は、作品を参考に工夫してみましょう!

欲張りウィンナー麺(1巻2話登場)

鍋に湯を沸かし、袋めんを入れる。弱火にしたら、「ちょっと高め」のウィンナーをそのままつっこみ、数分後に粉末スープを入れてできあがり。
※三宅・折戸の実践時は、少しスープが薄くなってしまったので、水分量に注意
登場するお話はWEBにて無料公開中

砕きミックスナッツのペペロンチーノ(4巻35話登場)

ミックスナッツを、袋の上から石で軽く叩いて砕く。少量の水に早茹で細麺パスタを入れ、沸騰したら火からおろす。フライパンで多めのオリーブオイルに乾燥にんにくと鷹の爪、砕いたミックスナッツを加えて、弱火で炒める。フライパンに茹で汁を加えて乳化させたらパスタを入れて絡める。最後に塩コショウ・バジル、お好みでパルメザンチーズをふりかけてできあがり。
※強く叩きすぎると袋が破けるので、注意

ザ・ビール飯 ビーフジャーキーMIX(5巻56話登場)

500ミリリットルの缶ビールを半分くらい飲み、缶切りで蓋を開ける。残ったビールの中に生米(0.7合)とちぎったビーフジャーキーを加える。缶ごと火にかけ、弱火で15~20分炊く。吹きこぼれそうなときは、息を吹きかけて泡を壊すこと。水分が減ってきたことを確認したら、適当なところで火を止めて、適当なもので蓋をして、蒸らす。
※お味は作中での鮎美ちゃんの感想のとおりなので、カレー粉を持参するなど工夫しましょう。

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この特集について

爽快、東京ハイク

今年も暑い夏がやってきました。東京の気温も37度を超えて都心は灼熱地獄。街を歩けば、すこしでも涼しい方へと緑豊かな木陰へ足が向かいます。 東京の中心は皇居です。大手門から東御苑に入ると旧江戸城の本丸に続く坂道で、本丸跡から望む丸の内...

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