緑豊かな奥多摩 ― クラフトビールで乾杯! ビアカフェ「VERTERE」

照りつける太陽、ぽっかり浮かぶ白い雲。今年も夏本番を迎えましたね。
この時季、涼感を求めて最初に思い浮かべるのは、冷えたビール。清々しい青空の下で飲めたらきっと気持ちいいだろうなぁ。

そこで今回は、東京の最西端、奥多摩にあるビアカフェを訪ねることにしました。都心から1時間半の小旅行の始まりです。

新宿から中央線と青梅線を乗り継ぎ、約1時間で青梅駅に。青梅駅のホームは、駅名看板をはじめ待合室も昭和レトロな趣。ここからさらに乗り換えて奥多摩へ向かいます。青梅駅を発車すると、それまでとは一転、あたりの景色はすべて緑に包まれます。車窓のすぐ外に広がる木々、そびえる山々。同じ緑でも、瑞々しさをたたえた若葉と山稜を縁取る深緑とでは色合いが異なり、奥深い自然の色彩に心を奪われます。

しばらくすると、さっきまで遠くに見えていた山の狭間に自分がいることに気がつきました。小川も、いつの間にか山々を写す水鏡に変わります。そんな豊かな自然の中に現れた、終点の奥多摩駅です。

駅を降りると、あたりは山に囲まれます。駅前には登山届の提出所があり、バックパックを背負った人たちがハイキングの準備をしているなど、みんな奥多摩の自然を目的にやってきたようです。

ロータリーの向こうに、さまざまなお店の名が連なった「柳小路」という看板を発見しました。小路を進むと「Beer Cafe VERTERE」の看板が見えます。

玄関までは石畳が続いています。そして築70年の古民家を改装してつくられたレトロな佇まいのお店。たっぷりと注ぐ陽の光が高い天井の店内に広がり、ゆるやかな時間が流れています。

「VERTERE」では、カウンターでビールを注文し、その場で注いでもらうスタイル。早速オーダーをすることにしました。ビールのラインナップは基本の5種類にプラスして、季節に合わせた限定ビールが2種類ほどです。

種類によっても異なりますが、Sサイズは600円前後、Lサイズは900円から販売されています。この日は「セッションIPA」をいただくことにしました。目の前でビールが注がれていく様子を見ていると、期待は一層高まります。

深い黄金色の一杯。そのままカウンターに腰掛けて飲むのも、テーブル席で飲むのもよさそう。でも、せっかくビールが美味しいこの季節。「VERTERE」の特等席、テラスでいただくことにしました。涼風が頰をなで、お店の裏に流れる川の音が響きます。

おいしい空気を吸い込んだら、お待ちかねのビールをひと口。パッションフルーツを感じさせるフルーティな味わいが口いっぱいに広がり、昼に飲むのにぴったりな華やかな一杯。

従来のビールのように喉越しを楽しむというよりは、じっくりと味わいを堪能することができるビールです。その他の種類も、苦味を抑えたものや口当たりの軽いもの、ほのかに蜂蜜が香るものなど、どれも試してみたくなるものばかり。すると、ビールのラインナップが記された黒板のブルワリーの箇所に、すべて「VERTERE」と書かれていることに気がつきました。

「VERTERE」で飲めるビールは、基本的にすべて自家製のクラフトビール。お店の横には醸造所も備えています。醸造所には樽が並び、奥には発酵させるためのスペースも。ここでビール造りを担っているのが、醸造長の辻野木景さんです。日によってホップの配合を変えながらオリジナルのビールをつくり、そのままお店で提供しています。1種類のビールができ上がるまでには約2週間。その傍で、新しいビールを生み出すための試作も繰り返しているのだそうです。

代表の鈴木光さん:「自分たちでは失敗だと思ったものでも、お客さんに試飲してもらうと、おいしい、と言われることもあって、みんなで一緒につくっている感じがしますね」

醸造長の辻野さんと代表の鈴木さんは、高校・大学の同級生で、「2人で事業ができたら」という夢をクラフトビールに託したのが始まりです。大学卒業後、辻野さんはビール工房で修行を積み、鈴木さんはサラリーマンをして開業資金を貯めました。そして3年後の2015年、満を持してオープンしたのが「VERTERE」です。

鈴木さん:「最初は都心でお店を出すことを考えていたのですが、醸造所も併設できる場所を探していたら、現在の物件に出合いました」

当初は予定していなかった奥多摩での開業。築年数が経った古民家をお店の仕様に改装したり、ビールをつくるための免許を取得するのに予想以上に時間がかかったりと、現在のスタイルにたどり着くまでには苦労も少なくありませんでした。けれど、ここには奥多摩ならではの触れ合いがあると話します。

鈴木さん:「登山帰りのお客さんが飲みに来てくれることが多いのですが、電車の発車時刻ギリギリまでビールを楽しんだ後に店を出て、結局乗り過ごして戻ってきたりして。そこからまたしばらく飲んでいってくれました(笑)。それから、地元のご年配の方で、うちのビールを飲んだら、『これまでのビールとは違う新しい味だ』と言って常連になった方もいますよ」

さらに今年からは、新しい試みも。奥多摩から車で20分ほどの山間の街、小河内の畑でホップの栽培を始めたのです。過疎化が進む小河内では、町おこしのために「Ogouchi Banban Company(OBC)」というプロジェクトを結成し活動中。「VERTERE」とOBCのコラボレーション企画として、5月にホップを植栽し、現在育てている最中です。この日お店に来ていたOBCの酒井綾人さんも、ホップ栽培をリードする一人です。

酒井さん:「ホップの株分けをしてから植えるのですが、やったことがないので想像以上に大変でした。でも芽がでてきた時は嬉しかったです。秋の収穫が楽しみですね」

ビールへの思いが評判を呼び、奥多摩の街に根付き始めている「VERTERE」。クラフトビールが飲めるお店は都内にたくさんあるけれど、ここを訪ねれば、きっと奥多摩の魅力を詰め込んだビールに出合えるはずです。この夏、とっておきの一杯を訪ねる小旅行に出かけてみませんか。

Beer Cafe VERTERE

東京都西多摩郡奥多摩町氷川212

TEL 0428-85-8590

営業時間 (月-水曜)14:00-20:00、(金曜)14:00-21:00、(土曜)12:00-21:00、(日曜)12:00-20:00

定休日 木曜
http://verterebrew.com/

 

Ogouchi Banban Company

http://ogouchibanban.jp

 

ライター

静岡県生まれ。好きなものは、映画、登山、温泉、アーユルヴェーダ。地図が読めないため、町歩きはもっぱら勘がたより。旅行系の冊子やWEBをメインに執筆しています。

この記事が気に入ったらhalettoにいいね!
記事やイベントの最新情報を受けとろう

カテゴリ―新着記事