【scene 03 ― 東京真夏のミステリー】街には野鳥がいっぱい 日本野鳥の会と周った「目黒川」

チチチッ、ギーギーギー、チュンチュン -。

普段の通勤の道でも家までの帰り道でも、実は、都会の生活音に混じってたくさんの鳥の声を聞くことができます。

大久保さん:「あ、メジロの声が聞こえる」
大久保さん:「カワウがマンションの上を飛んでたね」
堀本さん:「あっちにツバメがいたよ」

「日本野鳥の会」の堀本理華さんと、大久保明香さんは東京の街中にいながら野鳥の声をキャッチし、バードウォッチングを楽しむ視点と耳を持つ自然の愛好者でした。

公益財団法人「日本野鳥の会」は、野鳥やその生息地を守る活動のほか、バードウォッチングなどのイベントを主催している自然保護団体です。堀本さんと大久保さんに、東京でのバードウォッチングの楽しみ方と野鳥の見つけ方を教えてもらいます。

東急目黒線の不動前駅から歩いて5分。交通量の多い首都高速中央環状線を背に小道を進むと8階建てのオフィスビルが右手に見えてきます。この建物の3階に「日本野鳥の会」の事務所と、バードウォッチングや、鳥や自然にちなんだ商品を販売するバードショップがあります。スピーカーから流れてくる涼やかな鳥の鳴き声を聞きながら、職員の方が作業に集中しています。スタッフさんもツバメのTシャツを着ていたり小鳥のピアスなどを身につけていたり、何人かに挨拶しただけで、ああ、鳥を愛しているんだなぁ、と分かります。

「絶対に太陽をレンズ越しに見ない」「二つ見えている輪が一つに見えるように幅を調節する」など、双眼鏡の使い方や、バードウォッチングの注意点の説明を受けた後、堀本さんと大久保さんと一緒に外に出ました。

バードウォッチングのポイント(注意点)
・葉の茂った季節は鳥の声に耳を澄ます
・声が聞こえたら、その方向を見て動くものを探す(双眼鏡は視野が狭いので、まずは目で探す)
・図鑑は、よく見られる種類に絞って掲載されている薄型がおすすめ
・種類が分からなくても、何をしているかなど行動でも楽しめる
・探鳥会(バードウォッチングの会)などに参加して
詳しい人と一緒に歩いてみると、その場で教えてもらえるのでお勧め。

目黒川の亀の甲橋からバードウォッチングスタートです。

大久保さん:「野鳥を見つけるには、まず鳥の声を聞くことです。夏は木の葉も生い茂っているので、目に頼ろうとすると難しいです。耳をすませてみてください」

アドバイスに従い耳を頼りに川沿いの緑道を歩いていると、5分もしないうちにさっそく、「チュン」という聞き慣れた鳥の声が聞こえました。鳴き声の方を探すと、木の枝に止まっていたのは「スズメ」でした。

スズメ

スズメの鳴き声はこちら

※野鳥は素早いので、野鳥の絵でお楽しみください。(日本野鳥の会「おさんぽ鳥図鑑」より イラスト:Haruki )

さらにその枝向こうの空高く、2羽の黒い影が横切ります。

堀本さん:「今飛んで行ったのは、『カワウ』ですね」

続いて3羽の「カワラバト」がアスファルトの上に落ちた木の実をついばんでいます。人馴れしているのか、2、3メートルくらいまで近寄っても逃げる様子を見せません。「これはよく街中でも見かけるハトですね」と言いながら、堀本さんと大久保さんを振り返ってみれば、二人とも双眼鏡でじっくりハトを観察中。

堀本さん:「見慣れている鳥でもね、双眼鏡を使ってみるといろんな特徴が見えてくるんですよ」

確かに双眼鏡で見てみると、鮮やかなピンク色の足や首まわりの羽の光り方、羽が黒っぽい子もいれば、グレーの子もいたりして、ちゃんとそれぞれに「個性」があることがわかります。一羽の雄鳩が雌鳩に求愛しようとアピールしている様子を、少し離れた位置から双眼鏡で観察。雌に軽くあしらわれて全く相手にされず、諦めたようにしょんぼりと離れていく雄の姿が可愛らしくて思わず笑ってしまいました。

カワラバト

カワラバトの鳴き声はこちら

大久保さん:「スズメのほっぺには黒い斑点模様があるんですが、巣立ったばかりの幼鳥だと、これが薄い。体の大きさは大人の鳥と同じでも、模様や色の特徴から子どもか大人か、オスかメスかがわかるんです」

幼鳥との違いについて聞いていると、川向こうで「ギーギーギー」と掠れた大きな鳴き声が聞こえました。

大久保さん:「今の、聞こえました?」

そう言って目を輝かせた大久保さんは、双眼鏡を使って即座にその姿を捉えます。川の向こう岸の木に止まっていたのがキツツキの仲間の「コゲラ」です。こんな街中でキツツキに出会えるなんて、と感動してしまいました。

コゲラ

コゲラの鳴き声はこちら

鳥の鳴き声には大きくわけて「地鳴き」と「さえずり」の二種類があり、通常時の「地鳴き」に対して、「さえずり」は繁殖期のオスがメスにアピールするための鳴き方なんだそう。春によく聞くウグイスの「ホーホケキョ」はオスのさえずりで、普段は「ジャッ、ジャッ、ジャッ」と地味に鳴くそうです。「ウグイスは春にしか飛来しない」という私の勘違いが正された瞬間でした。

道を折り返そうと太鼓橋を渡る途中、護岸の穴からひょっこり顔を出した白黒の小さな鳥を発見しました。「ハクセキレイ」です。尾が長く、ぴょこぴょこと上下に動かしながら移動する様子はとてもキュート。パタタッと飛び立つ様子を見ていると、数回羽ばたいては休み、また数回羽ばたいては休み、同じリズムで羽を動かし飛んでいきます。鳥は色形、鳴き声だけでなく飛び方にも特徴があるということを知りました。

ハクセキレイ

ハクセキレイの鳴き声はこちら

その後も目黒川沿いで、クチバシが太い「ハシブトガラス」や、黒いネクタイを締めたような模様が胸にある「シジュウカラ」、その名の通り、ヒーヨヒーヨと鳴く「ヒヨドリ」など、8種類の野鳥と出会えました。

ハシブトガラス

ハシブトガラスの鳴き声はこちら

シジュウカラ

シジュウカラの鳴き声はこちら

ヒヨドリ

ヒヨドリの鳴き声はこちら

都内で見られる鳥はカラスとスズメくらいだろうと思っていましたが、この日、約1時間の散策で驚くことに、11種類もの野鳥と出会うことができました。

最高気温は29度。湿度も高く、30分も歩いているとじっとりと汗ばんできますが、鳥たちの魅力に夢中になり全く気になりません。こんなにたくさんの野鳥と会えるなんて。

私たちの周りには鳥の姿と鳴き声があったはずなのに、それに気づかなかったのは、イヤホンをして音楽を聴きながら歩いたり、携帯電話の画面を見ながら歩いたり、外の声を自らシャットアウトしてしまっていたせいでしょう。

川を外れて目黒線の線路路沿いの坂を上がると、住宅地の上空を滑るように飛ぶ2羽の「ツバメ」を見ました。普段から野鳥を観察していると、飛び方や羽の形を見れば何の鳥かわかるようになってくると堀本さんは言います。

ツバメ

ツバメの鳴き声はこちら

他にも「チィチィ」と可愛らしく鳴く「メジロ」、大きな声で「キーキーキー」と鳴く「ワカケホンセイインコ」の声を確認しました。残念ながらこの2羽は目視することはできませんでしたが、街中でも野鳥を観察することができるということを知りました。

メジロ

メジロの鳴き声はこちら

大久保さん:「野鳥に興味を持つようになると、その行動エリアや生息地に詳しくなるので、自然と木や野の花、昆虫にも詳しくなってくるんですよ」

そう話す大久保さんのそばで急にしゃがみ込んだ堀本さん。その目線の先にはマンションの壁にくっついたカタツムリがいました。

カタツムリ

野鳥は朝方や雨上がりに活動的になるそうなので、いつもより少し早起きして散歩がてら歩いてみれば、都会の野鳥たちに出会えるかもしれません。

その日の夕方、携帯はカバンにしまって一人でキョロキョロと空や木の枝を見ながら帰りました。木の上で街の様子を観察するカラス、電線にとまりおしゃべりを楽しんでいる数羽のスズメ、家路へと急ぐかのように上空を飛んで行った鳥の群れ。そんな鳥の姿を探しながらの帰り道は、いつもの景色をほんの少し、楽しく賑やかなものにしてくれました。

ハクセキレイ(写真:掛下尚一郎)

コゲラ(写真:掛下尚一郎)

シジュウカラ(写真:掛下尚一郎)

スズメ(写真:掛下尚一郎)

ツバメ(写真:掛下尚一郎)

日本野鳥の会直営店「バードショップ」

ここではバードウォッチングの必須アイテムとなる野鳥図鑑や、観察ノート、双眼鏡を始め、様々なグッズが揃います。

干潟やぬかるみでも行動しやすいよう開発したオリジナルの長靴や、装着したままでも図鑑のページがめくりやすいアウトドアグローブなどの観察アイテムのほか、手ぬぐいやブローチなど、「鳥」をモチーフにした可愛いアイテムも充実しています。

 

日本野鳥の会直営店「バードショップ」

東京都品川区西五反田3丁目9番23号 丸和ビル
TEL:03-5436-2624
https://www.wbsj.org/shopping/shop/bird-plaza/
営業時間:11:00-17:00(6/20~7/29は19時まで営業)
定休日:日曜・祝日・年末年始

 

おさんぽ鳥図鑑

日本野鳥の会ではバードウォッチング初心者向けの、身近で見られる野鳥24種類を紹介した「おさんぽ鳥図鑑」無料配布中です。詳しくはこちらよりご確認ください。

編集・ライター

茨城県生まれ。旅行、スイーツ、下町大好き。きっちり計画立てるより、無計画でのサバイバル感に惹かれます。日焼けしやすく戻りにくい。最近始めたランニングによるくつ下焼けがほんのり自慢。

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この特集について

東京真夏のミステリー

なんで、こんな駅名なんだろう、ここは綺麗だけどさっぱりしすぎな場所だなぁ、なんて、ふと感じる瞬間があります。大した疑問でもありませんが、まさに謎。 古い街には歴史がある、京都や金沢だけではありません。そんなあたりまえのことは、自分が普段見ているこの街にも、あるのです。子どもたちが遊ぶ公園も、無機質なコンクリートの街にも。 謎には歴史=storyが潜んでいます。日常に潜むstoryを探して、街へ出かけました。グラフィティ、駅の名前、野鳥、アンモナイト… ちょっとした謎を探検する、夏がはじまります。

友だちのはなし

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